第9話 あの時何があったのか……。
NPCもこの世界に来ていると言うので俺は、他のフレンドや知り合いがどこに居るのか聞くと。
「それはたぶん、北に居る」
「北? なぜ?」
「キジ丸はゲームで最後、どこに居た?」
「ゼルメアがある大陸の南方に居たけど?」
「SSクラスの魔物が出たってやつだな?」
頷く俺。
クランのサブマスを任せてるサヤからの情報で、南方にSSクラスの魔物が地上に出たと知り、気になったので出向いたのだ。
そして仕留めた後、拠点に帰る途中に観光がてら走って移動してる時、山の中腹に良い景色が見渡せる草地に寝ころんでいたらいつの間にか寝てしまい、気付いたらこの世界に来ていた。
「俺達もその情報で南方に来ていたんだ」
「それでシュート達もこの辺りに居たのか?」
「ああ、あの時、この世界に来た時の事は今でもハッキリ覚えてる」
そう言えば、俺は寝てたけどシュート達は起きてたのか。
つまり、この世界に来た時、何があったのか知ってる?
「何があった?」
「俺達が魔物の捜索をしてたら世界が『捻じれた』んだ」
「捻じれた?」
そこでアキオが話しに入ってくる。
「世界というか視界が捻じれた感じだな。最初はフルダイブ機の故障かと思ったが、ログアウトしようとしたら視界の中心に世界が渦を巻いて吸い込まれ、一瞬で世界が真っ暗になったところで意識が途切れた。で、気付いたら森の地面に横たわってたんだ」
VR空間が捻じれて真っ暗になった……初めて聞く現象だな。
意識が途切れたのは、ゲーム世界から現実のこの世界に移動した事が原因だと思うけど、フルダイブ機に繋がってたプレイヤーの意識だけがこの世界に送られた?
現実にそんな話は聞いた事ないが、小説や漫画ならゲーム世界に転移するってのは読んだ事ある。
有名な話ならゲームの中に閉じ込められるって事だけど、ここは現実。
うむ……まったく分からん。
プレイヤーに何が起きたのか?
ん?
意識というか魂をこの世界に送ったならこの身体は? ……誰の身体だ?
「なあ、この身体って……」
「それは皆が考えたがまったく分からん」
とはシュートの言葉。
まあ、考えても答えが出る訳じゃないもんなぁ。
これをやった奴が居るならそいつに聞けば分かる事だけど『誰か』がやったとは思えない規模の現象。
「それで俺達は……」
そこからはシュート達が、この世界に来た時からの話しをざっくり聞いた。
森で目が覚めたシュートを入れたアルティメットのメンバー4人は、気付けば魔物の捜索をしてた場所とはまったく別の場所に居た事に混乱したが、俺と同じようにすぐここが現実だと理解し、ゲームで使っていたアバターの現実としての記憶、能力、全てがそのままだと理解した事で、動き出したそうだ。
数年サバイバルをしている間に1度この世界の魔物と遭遇したらしく、GFWでは見た事のない魔物でいつもどおり戦闘に入ったが明らかに強さがゲームの時とは桁違いだとすぐ気付き、皆ボロボロになりながらも全力でなんとか倒したとの事。
その時、俺が作ったSランク武器のお陰で倒せたという。
「この街に辿り着いたのが今から約100年程前で、出迎えてくれたのがこの国の女王だったんだ」
「女王?」
「俺達と同じ元プレイヤーでもある」
「シュートが大会に出てて有名だったからトラブルも無く、すんなり受け入れてくれたよ」
「この街ってプレイヤーが作った街なのか?」
するとアキオが教えてくれた。
この街は、GFWにもあった街で、女王いわく気付けば街と共にこの世界に来ていたそうだ。
「女王がこの世界に来たのは今から『約300年』程前とも言ってた」
「300年!?」
プレイヤーによってバラバラの時間に送られてるのか。
俺は最近で300年も前に来てるプレイヤーも居るとは、シュート達も100年……この違いは何だ?
偶々か?
って、これは考えても答えは出ないな。
「ゲームの時は中世風のファンタジーな街だったらしいが、現実になって生きて行かなきゃならないとなれば、便利にした方が暮しやすいって事で地球での技術を基に魔法と組み合わせてここまで発展させたらしい」
アキオの言葉を聞いて納得。
実際に暮らすなら便利な方が良いもんね。
そこで俺は、先程言っていた『英雄』について聞いてみる事に、するとシュートが苦笑いを浮かべながら答える。
「あぁ、あれは、強いプレイヤーが過去にも魔物やスキラスを倒した事でそう呼ばれてんだ」
「俺達もその内に入ってるけどな」
「で、その実力を買われて軍のお偉いさんになったと?」
「いや、俺はただ魔物と戦いたかったから軍に入っただけだ」
「それで功績を残して今じゃ軍のトップだ」
「お前だって警察の幹部じゃねぇか」
「俺はただの部長だよ」
「刑事部全体の部長だろうが」
ほう、つまり統括部長って感じかな?
出世してるねぇ。
魔物と戦うために軍に入ったとは、流石シュート……ん?
「一般人は街の外に出られないのか?」
「無理だな。軍か女王に認められた者しか街の外には出られない、一般人なんて出たら魔物どころかスキラスに殺されるぞ」
……そうか、俺を拷問? しようとしてた奴らは警察の人間。
一般人よりは鍛えてるはずなのにあの強さだ。
って事は一般人になるともっと弱いはず。
「この世界の人間って弱すぎじゃね? さっきの奴らもそうだけどさ」
「鍛えてるんだが俺達のようにはいかねぇんだ」
「なぜ?」
そこでアキオが答える。
「魔力を使えないんだ」
「はっ?」
いやいや、街中の人達もちゃんと魔力を持ってたぞ?
「魔力制御の方法を教えたが誰も出来ない、ましてや感じる事も出来ないんだよ」
とシュートが言う。
俺は魔力を体中に流し、ゲーム時よりも感じる事を確認する。
これが出来ない?
……あれ?
「この街に居る人って元NPCだよな?」
なら魔力を使えるはずだが?
「いや、NPCだったのは一部だけだ」
「街と一緒にこの世界に来たんだろ?」
「それは、プレイヤーと深く関わっていたNPCだけな」
「……つまり、殆どの人がこの世界の人って事か?」
頷く2人。
するとシュートが。
「ちなみに、元NPCも魔力は使えないぞ」
うむ……なぜプレイヤーだけが使える?
その違いは……プレイヤーとNPC……肉体が違う?
それとも魂?
これはいろいろ調べないと、クランメンバーにも関わる。
……あっ。
もしかして魔力じゃない?
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