第8話 100年ぶりの再会?

俺が殴られて鍛えてる最中、お偉いさんっぽい男が2人やって来るとその内の1人は、フレンドでもあるクラン、アルティメットのクランマスターをしていたシュートだった。


まさかこんな形で再会するとはね。

しかし……。


「シュート」

「何だ?」

「老けたなぁ」

「うるせぇ!」


ん?

ちょっと待て。


「なんで老けてんの? 俺は昨日この世界で目が覚めたんだが?」

「あぁ、それは後でじっくり話してやるよ」

「おい、さっさと降ろしてやれ!」

「アキオだっけ? ちょっと待ってくれ、シュート」

「ん?」

「思いっきり俺の腹を殴ってみろ」


俺がそう言ってニヤっと笑うとシュートは、意図に気付いたのかニヤっと笑う。


「分かった……本気で殴って良いんだな?」

「ああ、そいつらじゃ、いくら殴っても訓練にならないからさ」


するとアキオが呆れた顔で言う。


「ったく、相変わらずだな。お前ら、将軍閣下の強さとキジ丸の強さをしっかり見てろよ」

「いや、俺は殴られるだけだぞ?」

「良いから良いから」


シュートが俺の前に来ると俺の背後を空けるように言い、腰を落として斜に構える。


「ふぅ~……行くぞ?」

「おう」


その瞬間、シュートの右拳が俺の腹に打ち込まれ、衝撃波が発生すると手に繋がってる鎖と足に繋がれてる鎖が千切れて弾丸のように吹っ飛ばされ、コンクリートのような硬い壁に叩き付けられると小さなクレーターが生まれた。


俺は床に着地し、手枷と足枷を収納してから横の空中に取り出すと床にドサッと落ちる枷。


手首を摩りながら歩いてシュートの所へ戻ると、見ていた者達は全員目を見開き口を開けて固まったままだ。


「良いかお前? 殴るならあれくらいやらないと」


そう言ってニコっと笑う。

まあ、シュートの全力でも一発じゃ、殆どダメージは無いんだけどね。

ちなみにナイフを折ったのは、刺さる直前に硬質化して溜気で弾いたからだ。

強化すれば刺さらないだろうけど、それだと痛みがあるからな。

あっ、殴られてる時は何もしてないぞ?

ゲームでも分身に殴ってもらって鍛えてたから、あれくらいじゃどうって事ない。


「俺の全力でもその程度か」

「多少効いたぞ?」

「流石最強だな」

「で? シュートがそんなに老けてる理由は?」

「ここじゃなんだ、どっか別の場所で話そうか」

「それなら俺の部屋で話そう」


と、アキオが言うので了承し、付いて行く事に。


「部長、良いんですか?」

「ああ、こいつは俺達と同じだ」

「っ!? 英雄!?」

「英雄?」


俺が首を傾げるとそれも話すと言って部屋へ向かう。

何かいろいろありそうだな。

しかし、知り合いに出会えて本当に良かった。



エレベータに3人で乗り込み、数秒で12階に到着し、廊下を進みながらシュートにアキオの事を聞く。

アルティメットのメンバーは何人か知ってるが、アキオの事は知らないのだ。


「精霊魔王を倒した時にもアキオは居たぞ?」


精霊魔王とはゲームに出て来た規格外の魔物である。


あの時に居たっけ?

思い出せない。


「あぁ、あの時は確か髪の色が金髪だったから分からないんじゃないか? ほら、黒い剣を使ってた……」

「っ!? ああ! あいつか!! ……変わり過ぎだろ」

「こっちに来ていろいろあったんだよ」

「そう言えば、シュートの髪の色もちょっと明るくなってる?」


頷くシュート。

髪の色が変わる程のショックがあったのか?


なんて話してると部屋に到着し、中に入ると設置されてるソファに座り、シュートとアキオが対面に並んで座ると俺が先に聞く。


「で? この世界はなに? 俺達はどうなってんの?」

「あぁ、その答えは率直に言って分からん、だ」


シュートが微妙な表情でそう言うと続けてアキオが言う。


「分かってる事は、俺達プレイヤーは、この世界に転移したって事だな。しかもゲームキャラのままで、ちなみに地球にある俺達の身体がどうなってるのかは分かんないぞ? 確かめようが無いからな」

「しかもここは、ゲームではなく現実世界、それはキジ丸も分かってるだろ?」

「ああ、目が覚めた時に自然と理解出来た、というよりしてた? と言った方が近いか」


俺の言葉に頷く2人。


「それでだ、俺が老けてるのは、俺がこの世界に来たのが今から……『約100年』程前だからだ」

「100年前!?」

「ちなみに俺もシュートと同じ場所で目を覚ましたぞ」

「ん? でもアキオはそんなに老けてないよな?」


するとアキオは、ドヤ顔で胸を張って答える。


「俺はゲームの時、不老の薬を飲んでたからな」

「なるほど、それで……」


つまり、俺もこの世界じゃ歳を取らないって事か。

それが分かっただけでも有難い。


で、シュートが100年も生きてるのは、この世界に来てから数年過ごした頃、不老の薬を飲んだお陰で老化が止まり、現在に至るとの事。


なぜすぐ薬を飲まなかったのか聞くと、薬はゲームの時から持ってたがゲームの時は、もうちょっと良い感じに歳を取ってから老化を止めようとしてたが、現実になって歳を取らないのがちょっと怖かったらしい。

しかし、このまま歳を取って死んでいくのは嫌だと思い、薬を飲んだと。


「ゲームのアイテムがそのまま機能するのか」

「ああ、だからキジ丸に作ってもらった武器のお陰で俺達は、今こうして生きてられるんだ。お前の武器が無けりゃ魔物に殺されてたぞ」

「この世界の魔物はかなり強いと聞いたけど、本当に強いのか?」

「ゲームの時とは違ってかなりヤバい」


そこでアキオが。


「何人かプレイヤーも死んでるからな」

「っ!? プレイヤーがこの世界で死んだらどうなる?」


いや、現実だから死んだら終わりだろうと思うけど……。


「死は死だ。それはプレイヤーだろうと関係無い」


やっぱり……1日一回死んでも生き返るユニークスキルがあるけど、ちゃんと生き返るのかな?

現実になった今じゃ試す事も出来ないしねぇ。

感覚的には発動する事は理解出来てるが。

まあ、いずれ死ぬ時が来たら分かるか。


そこでシュートが凄い事をぶっこむ。


「プレイヤーだろうと老けていずれは死ぬが、子供を作る事も出来るぞ? 実際知り合いのプレイヤーに子供が居るしな」

「俺も居るぞ」


なんと、フレンドがパパになってた件。

そうか、現実になったなら子供も作れるよな。

……あっ。


「NPCは? NPCはどうなってる?」


するとシュートが答える。


「NPCもこの世界に来てるぞ」

「マジで!?」

「ああ」


つまり、弟子のイチも、クランの皆もこの世界に……あっ、既に老衰で死んでる可能性もあるのか。

皆はどうしてるのか気になるな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る