第7話 上層部の二人。

第15地区警察署の地上12階にある執務室で青い髪に警察の制服を着た男が1人、PC画面を開いて報告書を確認していた。


「はぁ~、子悪党が多いなぁ」


男の名は『アキオ』見た目は、20代前半である。

すると扉がノックされた。


「入れ」

「失礼します。部長、報告書をお持ちしました」


そう言って執務机まで歩いて行き、1枚の紙をアキオに手渡す。

そこでアキオの目は鋭くなり、受け取るとすぐ読み始める。

報告書は基本、PCで確認するのだがこうして紙の報告書が極稀にあり、その場合の殆どが重要な報告書だったりする。

なのでアキオは、何も言わずすぐ読み始めたのだ。


アキオが目を通した報告書には、このような事が書かれていた。


『【報告書】創世歴672年3月9日

 【内容】密入国者が居るとの通報を受け、現場である貴金属買い取り店へ向かい到着すると店内に、黒髪黒目の若い男、店員、チンピラの3名が居た。』


「珍しいな。密入国なんてまだ居たのか」


報告書の続きを読み始める。


『黒髪の男がIDを所持していないとの事で連行し、地下の独房へ入れた後、取り調べのため地下訓練場へ移動させ、現在取り調べの最中です。何か吐けば追って報告します』


「拷問か、手加減しろよ? 前みたいに死なせてみろ、俺が殺すと伝えておけ」

「はっ!」


ビシッと胸の前に手を持って行き背筋を伸ばして敬礼する部下。

アキオは、まだ報告書が続いてたので目を通すと。


『密入国者の特徴:氏名【キジ丸】偽名の可能性あり、年齢不明、整った顔、身長は約170センチちょっと、体格は鍛えてるようでバランスが取れている』


そこでアキオは固まった。


「部長? どうしました?」


部下の問いにアキオは、顔を青くしながら目を向け口を開く。


「この密入国者、いや、キジ丸は刀を持っていたか?」

「いえ? そのような事は聞いてませんが、それが何か?」

「キジ丸……本物? いや……っ!? 誰が取り調べをしてる!?」

「えっ?」

「誰だ!? さっさと答えろ!!」

「あ、確か『タイス』さんです」

「よりにもよってあいつかよ!? こうしちゃいられん、すぐ止めないと、あいつにも連絡しないとな。今直ぐ訓練場へ向かう、お前は医療班を地下訓練場へ向かわせろ」


そう言って足早に部屋を出て行くアキオ。

部下は何が何だか分からない状況でも、言われた事をするためにその場で連絡をする。



廊下を足早に歩くアキオが左手首に付けてあるリングに触れると、頭の中に声が響く。


『ようアキオ、どうした?』

『キジ丸らしき人物が今日、密入国者として連行され、現在地下訓練場で取り調べを受けてる』

『キジ丸が!? それは本当か!? 偽物じゃないだろうな?』

『俺も今向かってるところだ。あんたも来てくれ、密入国の取り調べがどういうもんかあんたも知ってるだろ? もし本物のキジ丸なら……』

『全員殺されるな。分かった、俺もすぐ向かう』

『ああ』


そう言って念話を終了。

この手首にあるリングは、念話、魔導ネット、音声メモ、カメラとスマホのような機能があるデバイスだ。

通話は声を出さずに念話で出来る事が、地球とは違うところである。


アキオがエレベーターに乗って下りると3階で一旦止まり、先程念話で話した相手が乗り込んで来た。


赤く長い髪を後ろで縛り、無精ヒゲを生やしたおっさんだがイケメン、服は警察とは違い軍服を着ている。


「よう、早かったな」

「そりゃキジ丸だとしたら、取り調べをしてる奴らが危ないからな」

「しかも、犯罪者には容赦ないタイスが担当してるらしい」

「あいつか」

「親父は真面目で良い奴なんだが、息子はちょっと頭のネジが壊れてる」

「俺達みたいな奴に強い憧れを持ってるからなぁ」

「プレイヤーだからって全員が強い訳じゃねぇんだが」

「まあな……」


そこで地下に到着し、扉が開くと足早に廊下を進み鉄の扉を開くと声が聞こえて来た。


『そんなもんか!? 子供のパンチかよ!? 殴るより刃物使った方が良いんじゃね? この雑魚が!!』


アキオ達がそっちに目を向けると、1人の男が吊るされた状態で殴ってる相手に罵声を浴びせてるという、何とも不思議な光景を目の当たりにする。

しかし、吊るされてる男を見て2人は、同時に呟く。


「「キジ丸」」


本物であると認識し、まだ悲惨な状態になっていない事にホッとした2人は、歩いて近づいて行く途中、タイスが他の警官にナイフを借り、吊るされたキジ丸に向かって突き刺す。


「あのバカ!?」

「チッ」


2人が走り出そうとした瞬間、ガキンッ!! とナイフが折れて刃が床に落ち、2人は固まってしまう。

なぜナイフで刺されて逆にナイフが折れるのか?

鉄板を仕込んでいても折れるなんて事は無い。


『そんな安物のナイフが刺さると思ったのか? ほらほらどうしたぁ!? もっとガンガン来いよ!! じゃないと訓練にならねぇだろ!!』


叫ぶキジ丸を見て2人は、顔を見合わせて苦笑いを浮かべ、アキオが口を開く。


「何も変わってないな」

「ああ、この状況を訓練にしてる時点でキジ丸なのは間違いない……ハハ、最強プレイヤーは健在か」

「だな」


呆れたように言いながら2人は歩いて近づき、アキオが声を掛ける。


「お前ら、取り調べは進んでないようだな?」

「部長……将軍閣下!?」


全員がビシッと敬礼し、タイスは疲れた様子で振り返り、2人を見ると敬礼しながら言う。


「部長、閣下、お疲れ様です。このような場所になぜ?」


するとアキオがタイスの前に行き、後ろに吊るされてるキジ丸をチラっと見てタイスに告げる。


「キジ丸が現れたと報告を受けてな」

「キジ丸……この男の事ですか?」

「ああ……久しぶりだな、キジ丸」


アキオがそう言うとキジ丸は、吊るされたまま首を傾げた。


「タイス、お前が相手にしてたのはな……最強の男だ」

「っ!? 最強……」


その言葉にキジ丸は気付き、アキオに向かって聞く。


「もしかして、プレイヤーか?」

「俺の事を覚えてないのか?」

「すまん」

「クランアルティメットのアキオだ」

「アルティメット!?」


そこで将軍閣下が前に出て来て言う。


「ようキジ丸、久しぶりだな」


しかしキジ丸はまたも首を傾げる。


「俺だよ、シュートだ」

「……シュート!?」


将軍閣下とは、クランアルティメットのクランマスターをしていたシュートだった。

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