第5話 魔物とは。

目的地へ向かう道中、リックにいろいろ聞いてみるとこの国は『カリムス王国』と言い、現在俺が居る街がカリムス王国らしい。

つまり、この街がカリムス王国で他の街は、外国になるとの事。


この街は大きな円形になっており、時計の12時から時計回りに1から20の地区に区切られてるそうだ。


「街全体というか国全体がこんな感じなのか?」

「いや、行った事は無いが18番地区から20番地区は、かなりの田舎だ」


1つの大きな街の中に、いろんな形の地区があるって事か。


「ってか、この国の名前も知らずに入ったのかよ?」

「まあな……あの壁の外は? 国外になるのか?」


俺は振り返り、白く高い壁を見て聞くとリックも立ち止まり、壁を見ながら答える。


「ああ、壁の外は人外魔境だ。俺達は壁のお陰で『魔物』に怯える事なく生活が出来てる」

「ん?」


魔物?

スキラスとは呼ばないのかな?


「あの魔物って誰かが作った生物じゃないのか?」

「ん? それはスキラスの事だろ?」

「ん?」

「なんだ?」


お互い首を傾げる。

話しがかみ合ってない?


「魔物とスキラスは別モノ?」

「はっ? あんたまさか、魔物を知らないなんて言わないよな?」


GFWに居た魔物なら知ってるけど、この世界ではスキラス以外知らないぞ?

この世界にもちゃんと魔物が居るんだな。


「見た事無いね」

「そりゃ当然だろ。俺達が魔物を見る時は街が滅ぶ時だ。普段から魔物を見るのは軍人さんだけだぜ?」


一般人は魔物を見ない?

そりゃ壁に囲まれて生活してるなら見る機会なんて無いだろうけど、何か認識に齟齬がある?


そこでふと遠くの上空に、ロボットが飛んでいるのが見えた。


「あれは? あのロボットが軍?」

「ん? ああ、あれは我らがカリムス王国が誇るゼギア部隊だな。あれに乗れるのは、選ばれた者だけで最強の部隊だ」

「ゼギアってのは、あのロボットの事か?」

「そうだがゼギアを知らないってあんた、本当にどこから来たんだよ? どんな田舎者でも知ってる事だぞ? 他国でも有名だから知らないなんてあんた……」


何か感づかれた?


「相当田舎者なんだな。なのにその強さ、どこか山にでも籠ってたのか?」


なんて言いながら笑うリック。

深い森や山に籠って訓練した事はあるけど、勿論ゲーム内の話しだ。


「まあな。それで、スキラスは見た事あるけどあれが魔物かと思ってたよ」

「スキラスも一般人からしたら危険だが、魔物はもっと危険だ」

「魔物が?」

「向かいながら教えてやるよ」


そう言って歩き始めるリックに付いて行きながら、魔物について教えてもらった。

リックが言うには、魔物が出ると国が滅ぶ程の脅威があるそうだ。

ゼギア部隊でも魔物は倒せるか分からないらしく、120年程前に魔物が現れた時は、100機以上のゼギアがやられながらもなんとか倒したとの事。


これは学校で習うらしいが教科書に載っていた魔物は、全長326メートル、幅247メートルあり、甲羅のような頭部に大量の赤い目、足が6本あって腕が4本ある魔物。


話しを聞いただけじゃ上手くイメージ出来ないが、相当デカい事は分かった。

基本魔物は大きく、それぞれ個体によって特性があるという。

倒した魔物は、再生能力が高かったそうだが多くの犠牲を出して何とか倒したと。

他にも半径数キロを爆発させる魔物などいろいろだ。


「中には小さい魔物も居るらしいが、小さい奴はもっとヤバいらしいって話しだ」

「どうヤバいんだ?」

「デカい魔物とは強さが桁違いらしい」

「ほう……」

「何笑ってんだよ?」


自然と笑みが零れてたか。


「いや……魔物と会うにはどうすれば良いかな?」

「はっ? 話し聞いてたか?」

「強いんだろ? 戦ってみたいじゃん? ……どうした?」


立ち止まってポカーンと口を開けながら見て来るリック。


「あんた……バカだろ?」

「失礼な奴だな。ほらさっさと案内してくれ」

「あ、ああ……魔物の所には案内出来ないぞ?」

「3番通りにだよ」


歩き出して魔物がどこに居るのか気になったので聞くと、壁の外ならどこにでも居るとの事。

そこでスキラスは何なのか聞くと。


「あれは、カリムス王国から北に1200キロ行った所にある『古代都市』から生み出されたモノらしいぞ」

「古代都市、テンションが上がる響きだな。で? 誰が生み出してんの?」

「誰がとかじゃなく自動で生み出されてる。って教わった」


ほうほう、自動であんな生物が生み出されるとはねぇ。

余計気になるなぁ。



なんて話をしながら暫く歩いてると、人通りが多い通りに到着。

あっちこっちにホログラムの看板や、実物の看板が付いた店が並び、若者やスーツを着た人達が行き交う大通り。

歩行者専用の大通りのようで車は一切走ってない。

看板の文字は基本日本語だが、見た事がない文字も偶に使われてる。


「リック、プレイヤーって知ってる?」

「何のプレイヤーの事だ? サッカーか? 野球か? それともゲームプレイヤーか?」


ゲームプレイヤーだが、おそらくこの世界にあるゲームの事を言ってるんだろうな。


「GFWって知ってるか?」

「いや? なんだそれ? 何かのゲームか?」

「知らないなら良い。それより、金貨を換金する店はこの辺りにある?」

「それならこっちだ」


そう言って歩き出すリックに付いて行くとすぐ、貴金属買い取りの看板が付いた建物に到着。

リックが先導して店に入り、俺も入ると地球にあった買い取り店のような雰囲気の店で、ガラスケースのカウンターがあり、壁の棚には宝石やアクセサリーが飾られている。


カウンター内には、茶髪で30代半ばの男がスーツを着て立っており、リックが近づいて話し掛けた。


「金貨の買い取りを頼みてぇんだが」

「では現物を拝見させて頂きます」


リックが俺を見るので、ポケットから取り出すフリをして10枚の金貨をカウンターに取り出す。


店員が小さなレンズで金貨を確認し、重さを量ったりした後、大学ノートくらいある液晶パッドをカウンターに置く。


「買い取り額はこれくらいになります」


画面には『326000E』と書かれていた。

どれくらいの価値があるのか分からないのでリックに聞くと、これぐらいが妥当との事。

ちなみに『E』は『エネ』という。

とりあえずそれで買い取りをお願いすると。


「ではIDを拝見させて頂きます」

「…………ID?」

「IDだよ。入国する時に見せたやつと同じ物で良いぞ」


うむ、これは非常にマズい。

そうだよなぁ。

こんなに発展してるならIDとか皆持ってるよねぇ。

しかーし!

俺は影渡りで入ったのでそんな物は、当然持っていない。

IDがどんな物かも分からないので誤魔化す事も出来ないし……ここはあれでいくか。


俺はポケットから出すフリをしてインベントリから、ギルドカードを取り出して見せた。


どうだ?

Sランクのギルドカードだぞ?


「すみません、このカードは何でしょう?」


ですよねぇ~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る