第4話 街に到着。
街に向かうため俺は、山の頂上から断崖絶壁を飛び降り、重力に任せて山を下りる。
数秒で地面が近づいて来たので体内に印を書き、魔糸を右手から放ち岩壁に張り付け、地面ギリギリで止まった。
魔糸を解除して地面に着地すると周囲を確認するが、生物は居ないようだ。
この世界はスキラスだけで魔物は居ないのかな?
まだ山の中腹なので走り出し、土と岩だらけで起伏が激しい大地をひたすら進む事約1時間後。
ようやく壁に到着。
スカイツリーより高い白い壁。
近くで見ると壁には、配管が等間隔で地中に向かって伸びてる。
左右を確認して入り口を探すが見当たらない。
もしかして、グルっと回らないといけないとか?
それは勘弁してくれ。
どこまで続いてるのか分からない壁沿いを行くのは、ちょっと面倒なので影渡りで中に入る事に。
自分の影に潜り、おそらく街の中だろうと思われる影に転移。
影の中から周囲を確認するとどこかの路地裏のようで、周りには誰も居ない事を確認して影から出る。
路地裏は、幅2メートル程で滅茶苦茶高い建物に挟まれてる。
空間感知と魔力感知で周囲の地形を確認し、人が居る場所へ向かう。
路地裏を歩きながら見回すと、地面はコンクリートのような硬い素材で建物もコンクリートのような素材で出来てる。
マンホールもあり、建物の壁には配管がいっぱいある状態だ。
路地裏を歩いて行き、空間感知で把握した地形のとおり進み、少し広い道が見えて来た所で建物の陰に隠れながら行き交う人々を観察。
…………このまま出なくて良かった。
誰も武器を携帯してない。
刀と脇差しはインベントリに収納しておくか。
服装は、地球とほぼ一緒って感じだな。
スーツの人も居れば、ラフな格好をしてる人も居る。
今はちょっと寒い時期なのか?
パーカーを着てる人が何人か居た。
俺の格好は、黒いズボンに黒いブーツ、そして白シャツの上にフード付きの黒い外套を纏ってる。
外套は目立ちそうなのでインベントリに収納。
準備が出来たので通りにスッとさりげなく出て、通りを左へ向かって歩いて行く。
この通りに店は無く、高いビルに入るための裏口のようなドアが幾つかあるだけで人通りも少ない。
裏通りみたいな感じかな?
道幅は約10メートル程で、建物の陰になってる。
「ん?」
前方100メートル程に、横に通ってる道が見えるんだが、車が走ってるのが見えたぞ?
まあ、こんだけ発展してるなら車ぐらいあるだろうけど、凄い違和感。
車が走る道路を挟んで俺が歩いてる通りは、ずっと先まで続いてる。
建物は高いが道が広いので圧迫感はそんなに無いな。
道路に到着すると二車線道路で車がビュンビュン通ってるが、そこで違和感に気付く。
地球のようなエンジン音が無いのだ。
電動自動車のようなウィーンという微かな音だけで、それも地球よりも静かである。
試しに空間感知と魔力感知で探ると、車から魔力を感知した。
やっぱり、魔導エンジン!!
ゲームの時に作ろうと思って出来なかった魔導エンジンが、この世界では作られているのか。
暫く立ち止まって車を眺めた後、店が多い場所へ向かおうと周囲を確認すると建物の高い位置に、ホログラムっぽい看板が幾つか発見。
しかも日本語で書かてるぞ?
プレイヤーが広めたのか?
それとも、地球のパラレルワールド?
まあそれは後で良いか。
それにしても……。
「近未来だ」
こういうの見るとテンション上がるなぁ。
と、ワクワクしながら周囲を見回していると、声を掛けられる。
「おい」
「ん?」
振り向くとそこには、金髪の若い男が立っていた。
「なに?」
男は周囲を軽く見た後、近づいて俺の肩に右腕を回し、顔を近づけて言う。
「ちょっと金貸してくんねぇか?」
言葉も日本語なのか。
パラレルワールドの可能性が高くなってきたな。
なんて思ってると男が、グイっと腕に力を入れて更に俺を引き寄せ。
「聞いてる? さっさと金出せよ」
「この街の金ってどんなの? 俺はこんな金しか持ってないけど」
と言ってポケットから出すフリをしてインベントリから、金貨1枚取り出す。
「お前、外国から来たのか? まあ良い、それを換金すれば良い金になるだろ。ほら寄越せ」
そう言って俺の手から取ろうとするので収納し、奴の左腕の手首を掴んで捻って背中に回る。
「いっ!?」
「なあ、この街にはさっき来たところなんだ。案内してくれるか?」
「イデデデデ!? 離せこらぁ!! イデデデ!! 折れる!!」
「腕の1本や2本ぐらいで大げさだな。案内してくれるなら腕の1本で許してやるぞ?」
「結局折るつもりかよ!? いっ!? 悪かった! 謝るから止めてくれ!!」
「自分から絡んどいてそれは無いだろ……よし」
俺が腕を離してやると男は、左腕を右手で摩りながら後退し、左腕を振って解すと1歩踏み込んで殴りかかって来た。
良いね。
何も言わず殴りかかって来るとは、素人ではなさそうだ。
しかし、動きはお粗末過ぎる。
奴の右拳が迫って来たので左手でパシッ! と受け止め強めに握るとメキメキと僅かな音が響く。
「っ!?」
目を見開いて驚く男。
「このまま潰すか?」
更に強めると。
「分かった! すまん。もう手は出さないから止めてくれ」
「そう言ってまた殴りかかってくるつもりか?」
「いや、お前は俺より強い事がハッキリ分かっただけだ」
「それで諦めるのはつまらんけどまあ、今は案内が先だし良いか」
そう言って手を離してやると男は、手を摩りながら聞いてくる。
「お前、いや、あんた何者だ? この辺りで俺より強い奴なんてそうそう居ないぜ?」
お前が弱すぎるんだろ?
「俺はキジ丸、とりあえず店が多い場所に案内してくれ、それと金貨を換金する場所もな。そしたら駄賃をやるよ」
「ああ分かった。俺は『リック』だ」
「リックか、じゃあ案内頼む」
「どこに行きたいんだ?」
「とりあえず店が多い場所? 人が多い場所でも良い」
「この辺りでそういった場所なら14地区の『3番通り』だな」
数字で区切られてるのか。
ますます近未来っぽい!
人が多い所なら、プレイヤーも見つかるだろうし、さっさと向かうか。
「よし、そこに案内してくれ」
「ああ、こっちだ」
そう言ってリックと歩道を歩いて向かう事に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます