第3話 軍隊?

忍者スキルの隠密で気配を消し、高台からロボットとスキラスの戦闘を眺めながら思う。

ゲームから異世界に行く時は、だいたいゲーム世界が現実になる話が多かったが、この世界は明らかにGFWとはまったく別の世界観だ。


魔物ではなく機械が混ざったスキラスという生物。

そして一番は、あのロボットである。

かなり技術が発達した世界っぽいし、俺の力が通用しない技術があるかもしれない。


ゲームならまだしもここは現実、慎重に行動した方が良さそうだ。

でも……あのロボットに乗ってみたいなぁ。

それと戦ってみたいと思うのは、キジ丸としての性分か?


なんて考えてるとロボットとスキラスの戦闘が終了。

ロボットは周囲を見回し、2体のロボットは背面に付いたブースターで上空へ上がり、そのまま空の彼方へ消えて行った。


スキラスの死体はそのまま放置するのか。

焼くなり細かく破壊するなりすれば良いのに、肉の部分が食えるかもしれないから一応貰っておこうと思い、影渡りで下へ移るとライフルでボロボロにされた狼型のスキラスの死骸を収納。


あのライフルの弾……当たったら流石に耐えられないかな?

うむ、それも試してみたい。


と、ロボットは東の方角へ飛んで行ったし、俺もそっちに向かってみるか。

もしかしたら街があるかもしれないしね。


影に潜り高台へ移動するとロボットが飛んで行った方角を、視力強化して確認する。

土と岩の大地が続き、遥か彼方に森と山を確認。


そこでふと視界の左端に何か動くモノを発見し、そちらに目をやるとロボットが飛んで行った方角に向かって何かが飛んでいた。


「あれは……ロボット?」


小さ過ぎてよく分からんが、物凄い速さで飛んでる。

やっぱりあっちの方角に何かあるんだ。


俺はキジ丸の姿に戻り、首をコキっと鳴らし、身体を解して進む方向を見つめ、地面を思いっきり蹴って跳び出すと高台の一部が爆発して砕けてしまう。

その後、弾丸のような速さでデコボコした大地を駆け抜けて行く俺。



暫く平坦な大地を走ると前方に、渓谷が見えてきた。

向こう岸までは約100メートル。

俺はそのまま走って行き、崖ギリギリで思いっきり跳ぶ瞬間、重力属性の印を体内に書き発動させ、体重をほぼ無くすと弾丸のように飛んで行く。


「ヒャッホゥ!!」


ゲームの時もやった事あるけど、現実でやった方がやっぱり楽しいな!

風が気持ち良い~。


数秒後、対岸に到着する直前に印を解除し、地面に着地すると小さなクレーターが生まれた。

そう言えば、閻魔鉱の装備を着けたままだったよ。


と、思いながらもそのまま走り続ける。

いつの間にかこの世界に来た時は、金もあって好きなゲームが出来る生活が無くなったと思ったけど、キジ丸としてこの世界に来れた事は最高かも?

時間を気にしなくて良いし、態々ログアウトしなくても良い。


俺は今、キジ丸として現実に生きてるんだ!

テンション上がってくるな!!


なんてワクワクして走ってると。


「ん?」


一瞬気配を感じて足に魔力を纏わせ、ピタッとその場で止まる。

忍者の特性で魔力を纏わせると、壁や天井に張り付けるのを利用して止まる方法だ。

普通に止まると暫く地面を滑って止まる事になるからね。


空間感知と魔力感知で、複数のロボットがあっちこっちから俺と同じ方向に進んでるのを発見。


300メートル程離れてるが、飛んでる奴と地上を走ってる奴が居るな。

数は全部で10体、いや、ロボットだから10機か?


「……もしかして軍隊?」


飛んでる奴はバラバラだが、地上を走ってるのは隊列を組んで移動してる。

ロボットの軍隊か……良いね。



この先に何かあると確信した俺は走り始める事数分後、右側から物凄い速さで魔力が俺に向かって飛んで来るのを魔力感知で察知し、咄嗟に影に潜って回避。

すると俺が居た場所を、魔力の弾丸が通過していく。


すぐさま空間感知と魔力感知で飛んで来た方角を確かめると、地上を移動していたロボットが1機、高台からスナイパーライフルで撃った事を確認。


そこで気付く。

テンション上がって隠密を解除していた事を。

俺の魔力を感知して撃って来た?


「っ!?」


上空を飛んでいた奴も前方からUターンしてこっちに向かってる。

なるほど、高性能スキャナーが搭載されてる系かな?

忍者としてテンション上がって隠密を解除してしまうとは、まだまだだな俺も。

ゲームならこんな事……1回あったか。

一旦落ち着こう。

現実になった事でテンション上がってたからね。


……よし、慣れた。

ここからはいつものように冷静に落ち着いて行動しよう。


なのでさっそく隠密を発動。

影の中から1キロ離れた影に転移し、ロボット達が俺の居た場所へ向かってるのを確認すると無視して走り始める。


走りながら思う。

あれが軍とは限らない。

もしかしたらロボットに乗った盗賊かも?

そうだとしたら凄い世界だな。



なんて思いながら走り続ける事数時間後、日が沈んできたので今日は岩山の陰で野宿だ。


さて、日課の訓練をしたいところだが、ゲームの時と違って訓練モードが無いのでどうするか?

とりあえず型と制御系の訓練をしながら戦闘訓練をどうするか考える。


いつもは訓練モードで分身と死ぬまで戦うんだけど……分身?

そうか、分身同士で戦えば良いんだ。


他の訓練を終わらせると俺は分身を2体出し、1体と感覚共有をしてもう1体に分身を始末するように念じて指示を出す。

するとなんという事でしょう。

ゲームの時と同じように、死ぬまで戦闘訓練が出来るではありあせんか。


まあ、技の訓練は出来るけど肉体の訓練は、また別にやらないとな。

ちなみに俺が使った分身は普通の分身で、戦った分身は強化法で強くした分身である。

強化法とは俺のユニークスキル【五法一術】の1つだ。


訓練が終わったらインベントリに入れてあったおにぎりを食べ、いつものように地面に潜って寝る事に。


翌日、目を覚ますと影に潜って高台に移ると影から出て、日光を浴びる。


「今日も天気が良い」


さっそく周囲を確認しながらサンドイッチを食べ、このサンドイッチを作ったイチの事を思い出す。


イチは、俺が課金して作ったNPCの弟子だ。

現実になったこの世界にイチは居るのか?

他にも関わったNPC、ゲン爺やクランの者達。

流石にNPCが実体化する事は無いかな?


……いや、キジ丸として俺がここに居るなら無いとは言い切れないかも?

とにかく今は、他のプレイヤーが居ないか街に行って確かめないと。


ちなみに念話を試したが繋がらない。

クランシステムはゲームシステムだから、現実になった今じゃ使えないだろう。

しかし、スキルの念話もあるんだけどそれでも繋がらなかった。


この世界はなんなんだ?



飯を食い終わった俺は、ロボットが飛んで行った方角を目指して走り出し、約2時間程して山に到着。

木々が生えていない高い岩山だ。


足に魔力を纏わせ滑り落ちないようにし、ひたすら走って山を登る。

壁のような場所も走って登る事1時間程して頂上に到達。


雪が積もってかなり冷たい空気が流れてるが、環境適応スキルのお陰で余裕だな。

頂上に立って山の反対側を見ると数キロ先に、スカイツリーより高い白い壁が、左右に地平線まで続いているのが見える。


壁の上からは、高いビルのような建物や変わった形の高い建物。

そんな都市の中に、幅約数百メートルはある太い塔のような建物があり、上は雲が無いので見えるが、宇宙まで出てそうな程高い建物が確認出来た。


「街だ」


かなり近未来的な街だな。

しかも滅茶苦茶広い。


さて、他のプレイヤーは居るかな?

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