第2話 ラスボスとの初対面
泣きながら笑った。鏡に映る美人は
悪役令嬢、ペリーナ
「死んでも許されない。もしこの世に神様がいるなら、きっと悪趣味な奴なんだろう。」
高校の頃、好きだったこのゲーム。普通という言葉が一切関係ないヒロイン、優しい人々に囲まれ、おしゃれな毎日を過ごす。
「一度でもヒロインになりたい。」
ゲームの最後、前期に一度だけ登場する皇女が、幸せな日常をぶち壊す。どのルートでも構わず、戦争、財政破綻、内乱...まるでラスボスのように。そのころ、めちゃくちゃ怒った。ゲームをやるためにいろんな犠牲を払ったのに、せめて夢だけでも見させてよ。
だけど、ヒロインがどうなるかもう私には関係ない。脇役の悪役は、その結末までに生き残れない。
まずは現実を見て、これからのことを考えよう。
私はペリーナ。ヒロインをいじめ、王子に婚約破棄され、最後は処刑されるのが私の運命。外見は16~18歳くらい。処刑されるまで多分1~4年しかない。ヒロインと仲直りするにはもう遅い。
家族の公爵領と庶民のヒロインが住んでいる伯爵領は近く、幼馴染といっても関係があまり良くない。王都で同じ貴族学校に通う時、主役たちに特別扱いされたヒロインに嫉妬し、いじめが始まった。
今の私にできることは3つ、戦う、逃げる、許しを得る。
もしヒロインがゲームそのままの人間であれば、あいつの優しさで許されるかもしれない。でも、公爵の娘まで処刑されるのは、主役たちの仕業なんだろう。
ここから逃げて、静かな生活を送る。これは夢見すぎ。公爵の娘に逃げるところがない。お金、権力、愛情、何も無い悪役令嬢は俎板の鯉。
戦う勝ち目は少ない。王族に敵を回すのは名策とは言えない.....
行き止まりなんだ....
だが、どんな手を使っても、運命の女神に恵まれた奴らに、悪役の叫び声を聞かせてやる!
...............
暗い部屋から出ると、五層の図書館が見える。この大きさは王都図書館しかないだろう。でも、人で溢れているはずの図書館はなぜか、とっても静か。
正直、ゲームはいつもヒロイン視点で、悪役の情報が少ない。悪役令嬢として今の私には何ができるのか、さっぱりわからない。
『ペリーナ。』
カウンターに、黒く艶やかな髪を腰まで伸ばし、肌は透き通るように白く、真っ黒なドレスを着て、かなり痩せている女の子が容姿正しく立っている。その美しさは見るたびに心が重くなる。
まさか、最初からラスボスに会えるとは。
「皇女様。」
皇女は何も喋らず、私のことをじっと見ている。
変な儀式、閉鎖されている図書館、カウンターで待っている皇女は主催者でなければ協力者のはず。
「皇女様、儀式が....」
余計な話はしない、バレるから。
『感じはどう?大丈夫?』
「ご心配いただきありがとうございます。特に.....」
『どうした?ペリーナ。』
「儀式以前の記憶がかなり曖昧で、いろいろなことを思い出せません。」
『わかった、王城まで送るから、馬車で話そう。』
図書館の大門を開けると、5人の鎧を着用している騎士と二人のメイドが見える。騎士がメイドより多いのは性格が見える。
大門を開けたすぐに一人の騎士が皇女の側に寄る。重い鎧を着ている上に大柄なのに動きが速い。この騎士がいる限り、皇女を退場させることは難しいだろう。
馬車に乗ると、メイドたちがエスコートに来た。よく見るとメイドたちの腰に剣が掛けている。
ゲームの中の皇女はただの優しい人のはず。こんな人がこれまで側近を武装させるのか?
『私のことまだ覚えているよね。』
「はい、もちろん。皇女様のことを忘れるわけが...…」
一瞬だけ、皇女は嬉しそうに見える。
『時間がないから重要なことだけ教えるわ。』
『まず、第一王子との婚約がある君に、彼に婚約の意味を覚えさせて。』
『次は、盗人猫を捕まえ、立場を分からせて。』
どれもフラグじゃないか。
『まだあるけど、まずはこれだけ。後でフォローしてあげますわ。』
「しかし、皇女様……」
まるで私の不安を感じたように、皇女が私のことを抱き締めて、頭を撫で始めた。
『いいか?悲しいけど王族の婚姻はね、誰一人のことじゃない、政治の産物だ。だからできるかどうかではなく、やるんだ。』
また度々、悪役の運命に迫られた、逃げられない。きっと、ゲーム内の皇女様も、この優しい手で、ヒロインの未来を絞め殺しただろう。
「わかりました。」
だが、悪役にも悪役の生き方がある。舐めるな。
...............
このイベントは確か、ヒロインが通う貴族学校が冬休み前に開く宴会。このイベントで悪役とヒロインのトラブルが第一王子の因縁で公開され、それから悪役の立場が段々悪くなる。
「アンドルー様。」
第一王子アンドルー、さすが乙女ゲームに人気一位のキャラ、確実なイケメン。だけどこいつ、皇女の姿を見て一瞬、ビックリした様子。
『じゃあ、私はこれで、宴会で会おう。』
第一王子アンドルーは皇女と話すつもりがないとわかったことで一息ついた。
皇女様が行ったのを確認したすぐ
『ペリーナ、話がある。』
人のいない部屋に連れ込まれた。
『お前、マリアのことを虐めたんだろう!』
私もヒロインのミランダのようにキラキラして優雅な姿で生きたかった。
「どうだろう。」
『誤魔化すな!』
私もヒロインのミランダのように可愛がられたかった。
「虐めてない。」
『嘘をつくな!』
でも所詮夢の話。
「皇女と一緒に来た途中、王が第一王子より、第二王子の方が王位に相応しいという話を聞いた。」
嘘だけど、どうかバレないように。
『何が言いたい…』
「公爵と皇女のサポートがあれば、第一王子としての君も問題なく王位を手に入れられるだろう。」
これで私は...もう戻れない。ハァハァ、まるで最初から悪役をしなくていい選択肢があったかのような言い方。
『何........』
「このまま皇女に操られて私と結婚するつもり?」
皇女がこの婚約を守るのはきっと自分のためもある。第一王子がこの婚約を早く破ることができないのも皇女の理由があるだろう。予測だけど、当たったら主導権を握れる。試す価値がある。
『いやという選択肢があるのか?!』
「黙れ!そうしたくないなら話を聞け!」
私たちが選ぶことができるのか?それともこのペリーナ嬢が?今まで、選択できるのは運命の女神に恵まれたお前らだけだろう、ならばその責任も背負ってくれ。
...............
『そんなことを』
「あら、私と結婚した方が良い?」
このままこいつを操り、ミランダのことを諦めさせて、そして私と結婚し、ヒロインみたいな生活を過ごすのも夢みたいじゃない?
『やる、やります。』
短い夢だった。
「じゃあ、始めましょう。」
そう、私の幸せな未来のために。
悪役運命に囚われた悪役令嬢 蝶鹿央 @kasum
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