悪役運命に囚われた悪役令嬢

蝶鹿央

第1話 悪役運命に囚われ

『これで文句ないだろう』

発言したのはうちの次長です。すごく真面目な人なんですけど、時々頭が回っていないように見えることもあります。でも、私がサポートしている限り、大丈夫でしょう、私がサポートしている限り。


そこに座っている、顔が真っ青になって動かなくなったのはうちの課長です!新入社員へのいじめ、パワハラ、セクハラはただの一部に過ぎません。社内情報を他社に漏洩したり、文書偽造や横領も行っています。これが社会にバレたら、本人だけでなく、この会社も危ういでしょう。


あぁ、震えてる~このスッキリした感じ、気持ちいい!よくやったな、小林。


小林部長と次長が、お互いに頷いた。

『わかりました。今回の会議の資料は委員会にも提出してください。今回の会議はここまでです。次長、皆さん、お疲れ様でした。』


はい、これからみんなの退室を待って、課長の情けない顔をちゃんと楽しみましょう。


「大丈夫ですか、課長。」

すべては予想通り、もう君の終わりだね、課長さん~ハァハァハァハァ

「私はいつも課長の味方です。」

『もう終わりですよ、今更…』

「いや、まだある!私の提案を聞いてくれませんか?」

手を握り、深夜映画のチケットを渡す。これで課長はもう逃げられない。

「じゃあ、失礼します。」


これまで、すべてのことは順調に進んでいたが、残るのは今回の主役。

「あぁ、小林部長。」

『今回の事件で、みんなの声をまとめてくれたのは君ですね。お疲れ様でした。しかし、資料に関して、わからないところがいくつかあるので、説…』

「小林部長、映画に興味がありますか?」


..............


周りの目を気にせず、自分のペースで映画を楽しむことができるのは小林さんの趣味。だけど、役者として舞台に立つのは、まだ初めてですね。

『水無瀬、一体何を…』

後ろに立っている小林部長の姿を見て、若干焦っただろう。

「課長、給料がもらえなくても働くのですか?」

『はぁ?何を言って…』

「お金があれば、仕事をしなくてもいいんじゃないですか?」

『なんのつもりだ?』

「死に向かって生きるという言葉、聞いたことがありますか?」

『どうでもいいことを言うな。』

「課長、すぐに調達できる会社のお金は3億円くらいあるでしょう。この海外の口座に半分振り込んで、このチケットで海外に逃げてください。バスボートも準備してあります。気が利くだろう?」

課長はチケットを見て、何も言えなくなった。

「そう、引き渡しなどがない。お金があれば何でもできる所。そんな大金を持っているあなたは、大丈夫でしょう。」

反論も何も無く、ただ沈黙を保つ課長。ちゃんと状況をわかるのは、思ったより賢いのでちょっと驚いたわ。

「飛行機が出発まで12時間。6時間後にまだお金を受け取れていなかったら、待っているのは新生活ではなく…」

『もういい、やめましょう花田課長、状況をさらに悪化させるな。』

ピンチになると助けにくるヒロインのように、主役の小林さんが登場してきました。

「早くしないと、小林部長が資料を提出したら、待っているのは警察ですよ。」

一瞬の惑いの後、決心した課長さんは、チケットとバスボートを受け取り、走っていった。


主役の小林部長も追いつこうとしているが、させないよ。

「一度も主役になりたくないですか、小林先輩!」

「小林先輩」という呼び方に惹かれた小林、主役という言葉にとても気になるようです。

「パワハラ、セクハラ、会社に報告しても、何も変わらないでしょう。」

まだ聞こえていないように

「いじめられても、本人が先生に言わなければ、何も起きていないように無視されるでしょう。」

小林部長が固まっている。何故、自分の過去が、どこに自分の中に封じていたはずなのに。


『今回の事件を取り上げたのは社員達のためだから、社員達も会社の一部…。』

「会社の一部ではなくて、歯車だけなんだ。動かないやつは変えて、大きくなるほど遅い。」

『会社も激しい競争の中で生き残る現状を…。』

「商売なら商売の様子にすべき、社員の労働力と時間をお金で買え、感情が商売を主導するなんで甘い!」


話が通じないように、小林部長が出口に向かって行く。この手をここで出すのは早すぎるが、小林はこんな言葉たげで騙されるアホじゃないみたい。

「みんなの証言に何かが欠けているでしょう。」

小林はまだ固まっている。これでついに小林も惹かれた。今までの芝居、この瞬間のためだった。かなりの苦労をさせたな、小林。

「成り立った証言からカットするなら発見されやすい。だから私は最初から君の部分を入れないようにさせた。」

私はわかる。優しいだけで部長になれる人なんておかしい。先の詭弁の中、反応してくれたのは「主役」「先輩」だけ。小林はいつも優しい部長の役を完璧に演じる。もしこれで生まれつきの俳優なら、さすがですね。

「本部の調査が来たら君に濡れ衣を着せようとしたかったですか、私が甘かったです。」


『商売なら商売のやり方にすべきだ。』

「1億円、私が次長にならせてください。」

「5000万円、私がこれで会社を辞めます。」

そう、人生にはいろんな選択肢が見えるかもしれないけど、実際にちゃんと考えれば、自分が選択肢として選ばれる方が圧倒的に多いと思えないのか?

『もう、二度と君の顔を見たくない。』

短い劇場でした。こんな人のことをモノ扱いする会社をできる限り最後まで絞りたかったけど、端役は主役にならないことはとっても残念。


「じゃあ、これで終わりです。次長を除き、部長のことを含めた証言資料は私のデスクの赤いファイルにあります。濡れ衣を次長に着せてください。」

まだ沈黙を保つ。主役なのにセリフが少なすぎない?

「もしよければ、車で私をホテルまで送ってくれませんか?」

住所、名前、サイン、印鑑、最近は顔も、将来は性別まで、全部変える。このまま、信用という言葉が社会から消えるのかな…。

小林さんがいつも使っている車は部長の位置に相応しくないオシャレなやつ。昔から乗ってみたかった。


.................


ホテルのベッドは二人用なのに、一人で使うのはちょっと贅沢。このワインも贅沢。一人で飲むには勿体無いほど。でも、飲むには今が最高のタイミング。


高校のころ、乙女らしくない私にハマった乙女ゲームがある、ゲームの主人公がオシャレな服を着て、オシャレな学校を通じ、オシャレな友達に囲まれ、オシャレな生活を送り続け。


当時、そのゲームをやりたいがために、友達をいろんな所に誘って、運動などいろんなことをさせて、帰るまで友達のゲーム機でゲームをやり続けた。結果は友達が一人も残らず、一人ぼっちの高校生活を送ることになったなんて、馬鹿馬鹿しいことをしたわ。


ゲームケースと中の"ゲームカード"を母に送った。その"ゲームカード"を使って、母はもう商品のような生活をしなくてもいい、妹もゲームキャラのようにキラキラな生活を送る。もしよければ、楽しい生活を送っている中、いきなり消えたお姉ちゃんのことを、許してほしい。


そう言うけど、当時、どんな選択肢をしてもゲーム内の皇女の優しさでみんなをバッドエンドにさせることがわかったあの時、めちゃくちゃ怒ったわ。悪役を退治しても無駄なんて、あり得ない!


あぁ、もうこんな時間、たらたらして一日を終わってもいいのは、お金持ちしか体験できない生活なのかな?まぁ、そろそろ海の向こうにいる友達に電話をしなきゃ。


お金持があれば何もできるとこで、お金があれば何もする友達になんかした友達を迎えに行くをできるのは、さすがにお金があれば何もできるとこだわ。


そんな人と同日に逝くのはなんか嫌ですか、人生はそんなしたくないならしなくていいものじゃないわね。


ワインをベッドに溢れ、なるで私の血に、心臓が苦しいく、まるで無数の手が私の心臓を地面に引っ張られるように。段々、目が見えなくなり、動かなくなり。


.....................


うん?ここは?


暗い部屋の中、数え切れない蝋燭がいる、地面に六芒星と丸を刻む、目の前にこのすべてを写している鏡がおる。


鏡に写している方、まだは生きている喜びで、まだは運命から逃さない悔しさで、涙が流した。


「あぁ、悪役令嬢、何と相応しい。」

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