最低限

@azuki1215

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僕の最低限の生活にはタバコとお酒と金がちょっとあればよかった。朝タバコ吸って、寝て、夜になって、バイトに行って、帰ってお酒飲んで、お風呂入って寝る。たったそれだけのことをして毎日を過ごしていた。同じような日がずっと続くから今日が何日かもわからない。部屋の掃除もこの前して部屋は綺麗で、お金がないから遊べない。何もすることがないほんとに暇な日を過ごしていた。本当に本当に暇な日が続く。そして今日もバイトに行く。お金がないから毎日夜のシフトだ。夜はお金が稼げる。お客さんもそんなに来なくて、多く来る日でも6人ぐらいだ。「いらっしゃいませー」やる気のない声でいつも通り言う。朝の3時ぐらいになったら僕の番は終わりだ。バイトも終わった。バイトが終わると廃棄される弁当がもらえる。あとはお酒を飲んでお風呂に入って寝るだけだ。また暇な時間が来るな。そうだ別の道を通って帰ってみるか。そんなことを思いながら帰っていると公園を見つけた。こんなところに公園なんてあったのか。初めて見る公園だった。パンダ公園か。可愛い名前だな。その公園には遊具が少なく、ブランコと滑り台が一つあとはベンチしかなかった。久しぶりにブランコに乗ってみるか。そう思いながらブランコに近づいた。するとそこには、身長は155ぐらいの女の人が倒れていた。おもわず大丈夫ですかと声をかけた。女の人はごめんなさい、お腹が空いてしまってと言った。僕は持っていた弁当を女の人にあげた。女の人はその弁当をとても美味しそうに食べた。その女の人はお礼を言った後にどこかに行ってしまった。今日はいつもより記憶に残っているな。あの女の人ご飯をとても美味しそうに食べていた。あんな風にご飯を食べる人は初めて見た。家に帰るとまずお風呂に入った。さっきの女の人のことを思い出すと不思議と心臓が激しく動いたと感じた。お風呂から上がってタオルを腰に巻いて、下着も着ずにお酒を飲んだ。お風呂上がりのお酒は本当に美味しい。あの女の人がお酒を飲んだらどんな反応をするだろうか。さて、今日のご飯はどうしようかな。1日ぐらい食べなくても大丈夫か。その日はずっとあの女の人で頭がいっぱいだった。次の日起きるともう昼過ぎだった。朝起きてすぐタバコを吸うのが僕の日課だ。タバコを吸おうと思ったらタバコがなかった。ここから一番近いコンビニは僕が働いているところだ。一番近いと言っても1キロ弱ぐらい歩かなきゃいけない。本当に田舎は勘弁して欲しい。でもバイトのおかげで体力はまあまあついたし余裕で行けるようになった。タバコを買おうとしたらお腹が鳴った。そういえば昨日から何も食べてなかったな。パンを一つとタバコを買って店を出た。その時、あの女の人が頭の中に出て来た。そうだ、あの公園で食べよう。昨日と全く同じ道を通って公園に行った。そこには昨日の女の人がいた。あのっ。つい声をかけてしまった。女の人は僕を覚えていたらしく、「あ、昨日の」と言った。「覚えててくれたんですね。」「はい、命の恩人ですから」命の恩人なんて言われたのは初めてだ。「いつもここにいるんですか?」つい聞いてしまった。明日も会いたいそう言う気持ちが少しあったからだと思う。「はい。明日もいますよ。」よかった。明日も会える。「そうなんですね。あと敬語やめませんか?」何となく敬語だと距離がある気がしたから敬語は嫌だった。「わかりましじゃなくて。わかった。」敬語をやめるだけでなぜか嬉しくてほんの少し本当に少しだけ距離が近づいた気がした。「そう言えば。昨日はあんな遅くに何でここにいたの?」「えーと。お恥ずかしいんですけど。私家がなくてここのあたりで生活してるんです。」「本当によかったらだけど僕の家に来る?」毎日会える。そんなことを思いなら言った。「いいんですか?お願いしてもいいですか」やった。毎日会える。「全然いいよ。でもタバコ臭いかも」初めてタバコ何て吸ってなければと思った。「家に入れてもらう身でそんなわがまま言えませんし、そもそも大丈夫ですよ」優しい人だと思った。人生で初めてだ。こんなに嬉しく楽しいのは。その後は2人で家まで歩きながら他愛のない話をした。その話は本当に楽しかった。僕は昔から人と関わるのがそんなに好きではなかった。なのにこんなにも人と話すのが楽しいとは。家についてからもいろんな楽しい話をしてお風呂に入って、パンを2人で半分にして食べた。その日はいつもより味もついてないパンが美味しく感じた。そのパンを食べている時の顔が本当に可愛らしく抱きしめたいほどだった。パンを食べた後は眠たかったのか寝てしまった。俺はバイトがあるからひと眠りしてバイトに行った。バイトから帰っても起きていなかった。相当疲れていたんだろう。俺も今日は疲れた。その日はタバコも吸わずお酒も飲まず寝た。こんな日を何回も繰り返していた。ある日起きた時は昼過ぎだった。タバコを吸おうと思ったが起きたらあの女の人が家にいなかった。机の上に置き手紙があった。「迷惑をかけてすいません。さようなら」

僕は1番最初に思いついたあの人がいそうな場所の公園に行ってみた。するとあの人はブランコに乗っていた。「あの!」つい大きい声で声をかけてしまった。その人は「あっ」とびっくりした声と混乱した声が混ざったような声で言った。「何で急にいなくなるんですか!」「ごめんなさい。でも迷惑でしょずっとあそこにいるの」「そんなことない。貴方がいてくれたからここ最近ずっと楽しかった。貴方と話すことが好きだった。」思っていることをすべて口に出した。あまり感情を口に出すタイプじゃなかったのにその時だけは勝手に口から本音が出ていた。びっくりした顔をしながら「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」と謝ってきた。その後2人で少し話して気まずい中手を繋いでゆっくり帰った。「あの」君は顔を赤くしながら言った。「私は貴方を好きになってしまいました。」僕はびっくりした。でも答えはもちろん「僕も好きです。付き合ってください」答えはもちろん決まっていた。僕は貴方と出会ってから人生が楽しくなった。本当に変わった。美味しそうにご飯を食べる貴方が好き。笑いながら話しかけてくる貴方が好き。いつも必ず恥ずかしそうに好き。と言ってくれる貴方が大好き。

そしてその日から僕の最低限の生活には、

君がいれば良くなった。

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