第15話

【一織視点】


響さんにお願いしたおかげか、全員が食堂へ集まっている。これなら、犯人は間違いなく逃げられないでしょう。


一織「皆さん、お待たせしました」


蓮花「……今から、何をするの?」


一織「事件の真相を、皆さんにお伝えしようと思います」


まな「事件の…」


芹菜「真相…?」


一織「とはいえ、いきなりこんなことを言っては、犯人はいくらでもしらを切ることができます。だから、先にこういうことはしたくないのですが……」


響「犯人が分かっているから、その必要はないって?」


一織「あら、さすがですね。その通りですよ」


でも、響さんは絶対に気がついていない。この事件の犯人の正体に。


一織「さて、それではいきましょう。この合宿を利用して、3人もの部員を殺した犯人。それは__」


響「………」


蓮花「………」


芹菜「………」


まな「………」


輝也「………」


私は、文也くんの部屋から持ち出した青薔薇の造花を置きながら言いました。


一織「君だよ、















『ローゼ・ナイト』!」


輝也「っ!?」


まな「そんな…輝也が…!?」


一織「君は実に頭が良かったけどね、もうこの劇の主役は君じゃないんだ!」


輝也「ちょっと、何言ってんの!?」


響「犯人が、輝也くん…?」


一織「否定してもいいよ。ただ、逃げ道は潰していくけどね」


この事件の犯人、それが「ローゼ・ナイト」だとして、どうしてそう言い切れるのかって?理由はいくつかあります。もっとも、今から証明していくんですがね。


一織「まず、最初に発見された、春彦くんの話から。響さんが見つけたとき、その死体は女性物の下着を着用していたと。そうですよね?」


響「うん。これは秋さんも見たから、間違いないよ」


秋「は、はい…」


一織「なら私は見ていないけど、なんとなくイメージできるんです。昨日、下着を探したときに、どんなやつか、教えてもらったので」


芹菜「イメージ?」


一織「そう。昨日教えてもらった通りなら、きっと下着の色は水色のはずだから」


秋「!?」


輝也「バカバカしい。そんなわけないじゃん。白だよ」


一織「へぇ〜…………ふふっ、あははははははっ!」


輝也「な、何がおかしいんだよ!」


一織「おかしいも何も、どうして私が言った色が違うなんて分かるの?」


輝也「そ、それは、昨日探すときに教えてもらったからで。ねぇ、そうよね?」


秋「………」


輝也「なんか……言ってよ!!」


そう言って胸ぐらを掴もうとしたところを、響さんが押さえ込みました。


響「っ!」


輝也「離して!」


響「ダメだ。今離したら、秋さんが危ない」


一織「響さん……」


響「それで、他の根拠は?」


一織「他…。そうですね、文也くんの部屋に、こんな紙が置いてあったんですよ。彼の死体に隠れてましたけど」


そう言って、私は自分のポケットから紙を1枚取り出しました。


一織「これは、恐らく偽装工作の1種でしょう。わざわざ手書きで文字を書いていなしですし、きっと、最初からこのつもりだったんでしょうね」


その紙にはこう書いてありました。「全員殺したのは俺だ。石見 悠真だ。俺たちは死んで当然のクソだ。だから、殺した。俺も舞台で死ぬ」


一織「どうしてこれが、文也くんの部屋にあったのでしょうか?答えはこうです。罪を悠真くんになすりつけるため」


蓮花「なすりつける?」


一織「1連の事件の犯人を、悠真くんに見せかけようとしたのです。それで、犯人は彼の殺し方を自殺を連想できるような、首吊りにしたんでしょう」


輝也「でも、全部推論じゃん!」


一織「まだ話は終わってないよ。しかし、これはできないんです」


芹菜「できない?なんでですか?」


一織「あの首吊り用の縄、あれは犯人によって照明バトンにつけてあったんです。そして、照明バトンこそが、自殺が不可能だという根拠そのものなんですよ」


ちなみに、照明バトンというのは、照明器具を吊り下げておくための装置のことです。舞台上の照明をここにつけることで、演出として様々な照明器具を使うのです。


一織「そして、これは舞台袖にあったレバーを動かすことで上下に動かすんです。そのため、自分の首を吊って、イスを蹴って、という状況さえ作れれば、一見自殺したように見えます」


響「でも、それじゃあ不自然なことが1つ。死んだ悠真くんの足とイスを実際に置いたときの間の距離、これが長すぎるんだ」


蓮花「長すぎる?どういうこと?」


響「つまり、イスを蹴って自殺することができないんです。なぜなら、悠真くんが首を吊った状態では、イスに足が届かないので」


一織「そして、犯人はこれらの犯行に関して、悠真くんがやったという偽装が失敗する可能性を考えていた。そこで、もう1人、架空の犯人を用意しておいたんです」


秋「架空の、犯人」


一織「もう分かっているかもだけど、それは君だよ、秋ちゃん」


まな「そんな!どうして部長が!?」


一織「そもそも、照明バトンの使い方は1年生は分からない。この時点で、ある程度誰が犯人かは絞れる。それに加えて、下着泥棒が実際に秋ちゃんだという可能性もできる。それに、犯人には私たちも、もしかしたら蓮花さんだって予想外の存在なはずだよ


そうなってくると、残った2年生の中から選ばないといけない。当然、女子から選ぶことも、作り出す状況から考えると重要になる。このことを踏まえると、怪しいのは他の誰でもない、秋ちゃんのはずだ。そう考えて、秋ちゃんに罪をなすりつけようとした」


輝也「そんなこと、嘘よ!だって、先に先生から聞かされてたもん、誰が来てくれるかって!」


秋「どういうこと?あれは、かなり早いうちに伝えられてたけど、2年生しか知らないはずなのに…」


輝也「あっ!?」


一織「正体を表したね。『ローゼ・ナイト』……………いや」


















日向 乙葉!!!!!!

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