第13話

【響視点】


響「はぁ、やっぱりか」


秋「やっぱりって、それじゃあ…」


響「まるで死んでいるみたいじゃないかって?その通りだよ」


芹菜「………」


まな「………」


蓮花「………」


響「蓮花さん、お願いがあります」


蓮花「な、何?」


響「演劇部の子たちを見ておいてください。それも、死体がある場所からなるべく離れたところで」


蓮花「オッケー。じゃあ、2人はどうするの?」


響「私と一織ちゃんで捜査します」


蓮花「じゃあ…犯人の検討は…」


響「ついてはいないです。しかし、ここにいる可能性は高いと見ていいでしょうね」


蓮花「そう……じゃあ、後は任せたよ」


こうして、舞台には私と一織ちゃんだけが残っていることになった。


一織「あんなこと言っておきながら、あなたは本当に犯人が誰か分かっていないんですか?」


響「今のところは分かっていないんだ。だから、今から調べようと思ってる」


一織「そういうことなら、お手伝いしますよ。響さんは、そうするって予想してたみたいですけどね」


響「まぁね」


一織「それなら、私から1つ提案があります」


響「提案?」


一織「響さんって、蓮花さんの連絡先、持ってますよね?」


響「え、持ってるけど、なんで知ってるの?」


一織「だって、そのことは蓮花さんが教えてくれてますし」


いつの間に…。


一織「そういうことですし、響さんにはお願いがあります。蓮花さんに、私たちが捜査した内容を共有してください」


響「蓮花さんに?どうして?」


一織「悠真くんが殺されたとする場合、犯人を自動で絞れる可能性があるからです」


響「そういうことなら」


一織「それじゃあ、お願いしますね」


こうして、一織ちゃんが主導権を持った状態で捜査を始めた。これからどうなるのだろうか。それに、彼女は犯人の目星がもう付いているのだろうか。


響「それで、どうしてここで犯人が絞れるの?」


一織「それはですね、この装置は特定の人にしか扱えない可能性が高いからです」


響「どういうこと?そもそも、装置って?」


一織「試しに、このイスを彼の足元に置いてみましょうか」


そう言うと、悠真くんの足元にイスを動かした。そこには、不自然な空間ができた。


響「もしかして、これは首吊り自殺に見せかけるための偽装だってこと?」


一織「そうです。響さんも、このことは分かっていたはずです」


響「薄々そんな気はしてたけどね」


一織「しかし、どうやってこうしたのか、ですが…」


響「なにか思いつくものは?」


一織「…………いえ、何も。ごめんなさい」


響「いや、謝ることじゃないよ。それより、調べられるだけ調べていこう」


一織「はい」


一織ちゃんの反応、あれはきっと嘘が混ざっている。恐らく、確実に言い切ることができないというだけで、何か考えをまとめているはずだ。


私たちは舞台に登った。舞台の上に怪しいものは特になかった。青薔薇の造花についても、ただ飾られているに過ぎなかった。


しかし、下手側(客席から見て左側)の舞台袖に、いかにもな怪しいものがあった。まさに「装置」という表現がしっくりくる。


…………もし、これが何かしらの「装置」なら?


一織「これ、何でしょう…」


響「これさ、このシールの向きでいけば、時計回りに回すんだよね?」


一織「多分、そうだと思います」


響「そうだよな…。よし、ちょっと待ってて」


一織「え!?どこに行くつもりですか?」


響「音響とか照明は2階でいじるんでしょ?なら、舞台の様子が見えるはず。だから、そこで確かめるんだ」


一織「確かめるって、これの正体をですか?」


響「その通りだよ」


一織「分かりました。じゃあ、準備が出来たら教えてください」


私は、舞台袖の階段を登って2階へ行った。まさか、こんなところに階段が、とは思ったが、よく考えて部員はやっていた。おかしなことではなかった。


1分か2分か。それぐらいで着いた。そして、メッセージアプリの機能を使って、一織ちゃんに合図を送った。


響「準備はいい?」


一織「バッチリです!」


響「お願い」


このメッセージを見て、一織ちゃんは行動に移った。私が予想した通りの展開になった。


私はすぐに舞台袖の方へ向かった。


一織「どうでした?って、聞くまでもないですね」


響「そうだね。後は、これを蓮花さんに聞くだけだ」


そして、私は蓮花さんにこうメッセージを送った。


響「部員の子たちに、『○○バ○○』の使い方を知ってるか聞いてみてください」


そして、私たちは、ドアが内側からでもかけることができると確認しつつ、そのまま風呂場へ向かった。舞台のトリックは見えてきた。

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