第12話

【響視点】


私たちは大急ぎで1人ずつ起こしていった。そして、食堂に集まってもらうことにした。みんなすぐに応答してくれたため、呼び出せる限りはとても早く呼び出すことができた。しかし、全員は呼び出せなかった。


響「一織ちゃん、そっちはどうだった?」


一織「やばいです。悠真くんと文也くんが全然起きないんです」


響「え?本当に?」


一織「どうしましょうか。なんだか、嫌な予感が…」


響「とりあえず、鍵が空いてるかの確認からしていこう」


一織「ですね」


というわけで、彼らの部屋のドアノブを回してみた。すると、文也くんの部屋の鍵が開いていた。


響「あ、開いた…」


一織「……行きますよ、響さん」


私たちは部屋の中に入った。入ると、その光景はすぐに目に入った。誰も起こり得るなんて信じないような光景が。


ベッドの下には、ガラス片が散乱していた。そのうちの1つを近くで手に取って確認してみると、水滴であろうものがついていた。そして、また別のものを見てみると、血がはっきりと付着していた。とっくに乾ききっていたことを考えると、かなり前についたものだろう。


それだけではない。春彦くんのときのように、ベッドの上には青薔薇の造花が大量に置かれていた。まるで、死者に花を手向けるかのように。あるいは、あの怪物の存在を示唆するかのように。


そして、部屋にあったベッドの上、そこに彼はいた。


響「文也くん!しっかりして!」


一織「………やっぱり」


響「あぁ…駄目だ」


文也くんも死んでしまっていた。呼吸もしていないし、身体はとっくに冷えきっている。生きているとは全く思えない。


一織「響さん。このことを、どうやって伝えたらいいでしょうか」


響「そのことは考えないようにしよう。私たちが何かしても、結局知られることにはなるんだから」


一織「そうですよね」


とは言ったものの、もしかすると何かしらのアクションは起こすべきだったかもしれない。どうして躊躇してしまったのだろうかとは思うが、その時の私にとってはそれが最適解だったのだ。


食堂に向かった。集まっていたのは蓮花さん、芹菜さん、まなさん、輝也くん、そして秋さんだった。


響「あ、秋さん!?もう大丈夫なの!?」


秋「は、はい…。なんとか…」


かなり無茶をしているように見えた。それに加えて、なんだか食堂の空気が重苦しい。まさかとは思ったが、こういう場合に限って、予感というのは的中するのだ。


蓮花「…ねぇ、春彦くんが殺されたって聞いたんだけど、本当?」


一織「!?」


響「………はい。そうです」


蓮花「やっぱり本当だったのね」


響「誰から聞きました?」


秋「私です。倒れたことを心配されちゃって、つい……」


響「そのことは責め立ててないから、気にしないでいいよ」


蓮花「だとしたら、あと2人足りないけど、まさか…」


一織「………文也くんは、彼の部屋で死んでいました。それに、悠真くんは…………」


輝也「どこか、まだ見てない場所で死んでるって?」


まな「ちょ、なに言ってんの!?」


輝也「実際、ここにいないじゃんか。どうなの、探偵さん」


一織「そんなに気になる?だったらいいんだけど……」


そう言った一織ちゃんは、何か隠し事でもしているかのような話し方だった。


一織「響さん、舞台に行きますよ」


私と一織ちゃんは少し走って舞台のほうに向かった。それに続いて、残りの人たちも舞台へと向かった。


一織「よし、着きましたね」


響「いくよ。ふんっ!」


ただドアを開けるだけなら間違いなく余分な力を込めた。しかし、そこまでしても開かない。試しにタックルをしてみても開かない。鍵だ。鍵がかけられている。


蓮花「ねぇ、どうかしたの?」


響「蓮花さん、ここの鍵って持ってますか?」


蓮花「鍵?あるけど」


響「貸してください!」


蓮花「えっ?うん、いいよ」


鍵を開けた。ドアを開けた。そして、惨劇のページはまた新たに捲られることになった。


輝也「まさか、あれは…!」


響「悠真くん!」


無駄なことだと分かっていた。しかし、足はただまっすぐに彼の方に向かっていた。


踏み台だろうか、本来劇で使われるはずのイスが倒されていた。彼もまた、周囲に青薔薇の造花が置かれていた。そして、そこには首を吊って死んでいた悠真くんの姿があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る