第8話
【一織視点】
練習が終わった後、私は風呂に入る前に、自分の部屋に着替えを取りに戻りました。一緒に入るため、蓮花さんは自分の着替えを先に取って私の部屋の前に立っていました。
……はぁ、嫌だなぁ。絶対どさくさに紛れてセクハラしてくるだろうな。
蓮花「一織ちゃん、もう行けそう?」
一織「あ、はい。もう行けます」
とりあえず行きましょう。さすがに中学生が一緒にいるんですし、仮にセクハラなんかするとしても自重するはずです。というか普段からしてください。
私たちは階段を降りて地下にある風呂へと向かいました。食堂とか舞台とかの時点でなんとなく思っていたんですけど、やっぱりこの建物変ですよね。改造したにしても、造りそのものが不思議ですし、山奥に建てるようなものでもなさそうだし。
私が知らないだけで、こういった建物を好む人って意外と多いんですかね。なんて言うか、ミステリアスな感じ?そんな印象を受ける建物ですね。
風呂の前に着いたのですが、ここでひとつ大きな問題が発生しました。なんと電子キーなのです。決められた番号を入力しないと入れない仕組みになっていました。
このことの何が問題なのかと言うと、私も蓮花さんも番号を知らないのです。これでは風呂に入れません。高塚先生、なんで教えてくれなかったんですか。
蓮花「一織ちゃん、どうする?」
一織「どうしようもなさそうですね。諦めましょうか」
秋「あれ?どうかしました?」
そこに来たのは部員の女の子3人組でした。
蓮花「あ、ちょうどいいところに来たね。実は、ここが開かなくて困ってたんだよ。開けてもらっていい?」
秋「そういうことでしたら、ちょっと待っててくださいね」
秋ちゃんは手馴れたように鍵を開けました。時間にしてだいたい10秒とかそれぐらいです。
秋「はい、開きましたよ」
芹菜「はやっ!」
秋「これ前から変わってないみたいだし、こんなもんだよ」
ちょっと呆然としちゃいました。とりあえずこれで風呂に入れるようになったので、さっさと着替えて、早いうちに入っちゃいましょう。
……と思っていたんですよ。いや私は迷うこともなく入りに行きましたけど。
秋「……」
一織「秋ちゃん?どうかした?」
秋「……えーっと、私、また後で入りますね」
一織「え?あ、うん」
そう言ってしまうと、着替えもそのままにどこかへ行ってしまいました。
当然ですが、さっきまで私たちと一緒にいた人がどこかに姿を消してしまったので、そのことは少しばかり困惑を呼びました。
蓮花「あれ?秋ちゃん、どうしたの?」
一織「なんか、また後でって言ってました。なんででしょうね」
蓮花「まいっか。本人が後でって言ったならそうさせるのがいいだろうし」
一織「ですね」
私たちはしっかり全身洗ってから風呂に入りました。ちなみに、蓮花さんは入るまでの準備が長くて、他の3人が風呂に入ってから体感としてはかなり長い時間経ってから風呂に入りました。実際の時間とか分からないですけどね。
蓮花「はーーー、気持ちいいーーー」
一織「みなさん、今日はお疲れ様です」
まな「お疲れ様です」
芹菜「お疲れ様でーす」
あまり銭湯とか温泉とか行かないので、同年代の女の子たちと同じ風呂に入るのもなんだか新鮮な感じがします。いいですね、この感じ。
すると、蓮花さんに対しての質問コーナーが始まりました。
まな「あ、そうだ。せっかくなんで、今聞いてみたいことがあるんですけどいいですか?」
蓮花「私に?いいよ」
まな「演技のことなんですけど、私あんまり上手くなれなくて。どうしたらいいのか分からないんですよ。根室さんって、どうやって演技力つけていきました?」
蓮花「どうって言われてもねぇ、私も気づいたら上手くなってたぐらいの感覚だから」
まな「そうですか…」
蓮花「強いて何か言うとしたら、あまり無理は良くないってことかな?あまり焦りすぎてもメンタルがボロボロになるだけだから」
まな「ありがとうございます!」
芹菜「じゃあ私も!」
なんだかんだ蓮花さんって頼りになるんでしょうね。私も、この間の恐怪島での一件のせいであんまり信用していませんでしたが、私が信用していなかった理由もよく考えればそのぐらいですからね。さすがに中学生相手には自重してくれる人で安心しましたよ。
…………………いや違う。よく見たら目線があってない。蓮花さんが見ているのは…………
胸元!やっぱりこの人は信用しちゃだめでした。さすがに私でもここまで酷いもんだとは想像していませんでしたよ。本当に。
……ちっ、第二次性徴。少しぐらい私に分けてもらえないでしょうか。
私が嫉妬しているのはバレていないと信じて、私たちは風呂を上がりました。結局、私たちが入っている間に秋ちゃんは戻ってきませんでしたが、一体どこで何をしているのでしょうか?
とりあえず早いうちに着替えを済ませて私は自分の部屋に戻りました。脱いだ服を置いて、これからどうしようというところで、ドアをノックされました。
何事かと思ってドアを開けてみると、そこには紙切れ1枚落ちていました。
紙切れ「後で僕の部屋に来てください
近衛 文也」
なんでわざわざドアをノックしたのにこんな紙切れを置いて自分の部屋に?とは思いましたが、あまりそこは気にしないで、すぐに文也くんの部屋に行きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます