第3話
【一織視点】
響さんがビンタした痛みで蓮花さんは倒れ込んでしまいました全体的に悪いのは蓮花さんで間違いないが、それにしてもやりすぎだとは思います。
一織「ひ、響さん…?」
響「…………カッとなってつい」
一織「いや、責めるつもりはないですけど…」
とは言うものの、力を込めすぎてしまっているのは目に見えて分かるのです。だって悶えてるんだもん、蓮花さん。
一織「あの、蓮花さん、大丈夫ですか?」
蓮花「…いい」
一織「…………」
嫌な予感…。
蓮花「意外にいい!この痛み!」
ほらね!
響「え?」
蓮花「思っていたよりもずっといいわね、これ。骨まで響いてくるものがある」
響「えぇ……」
ほら、ビンタした本人がドン引きしてるよ。この変態め。
秋「あの」
一織「はい、なんでしょう?」
このタイミングで女の子から話しかけられました。タイミングとしては最悪ですね。
秋「もしかして、演劇部の合宿のお手伝いをしてくれる方というのは」
蓮花「そう。私たちよ」
さっきまでビンタに興奮してたくせにもう平然とした態度になってる。なんなんですかこの人。
秋「私、下野 秋(しもの あき)と言います。一応、部長を務めさせてもらっています。よろしくお願いします」
秋ちゃんは綺麗な黒髪ロングに縁が細めの眼鏡をしていました。それと、身長は私と同じぐらいです。私が157なので、大体そのぐらいでしょうかね。
一織「私は、今回高塚先生の代わりに来た月影 一織だよ。よろしくね」
響「私は、同じく高塚先生の代わりの日野 響。よろしくね」
蓮花「私は根室 蓮花。ここの卒業生なの。困ったことがあれば、遠慮なく相談してね」
お互いに簡潔に自己紹介をした、といったところでしょうか。それにしても、秋ちゃん、なんだか良い子そうで安心です。私の中学生のころはここまで落ち着きがなかったと認識していますし。
蓮花「ところで、他の部員の子たちは?」
秋「みんななら、帰りの会を終わらせてから部室に荷物を取りに行くので、もうちょっと時間がかかりそうです」
蓮花「秋ちゃんはこんなに早く来たのに?」
秋「私の担任の先生は話がとにかく短いので」
響「他に同じクラスの部員はいないの?」
秋「いるんですけどね。最近、学校にも来ていなくて」
不登校か。何かしら理由はあるのでしょうか?
秋「日向 乙葉(ひゅうが おとは)っていう名前なんですけど、昨日も来るか電話で確認してみたら、来ないって言われちゃって…」
蓮花「それは大変そうだね」
そこへ、女子生徒2人がやってきました。2人とも背は低めですまあ、中学生ならまだ成長の余地もあるでしょう。
芹菜「すみませーん!」
まな「ちょっと遅くなっちゃいましたー」
秋「全然いいよ。私もさっき来たばかりだから」
まな「ところで、その人たちは?」
秋「そのことは、みんなが来てからね。それより、2人から自己紹介を」
芹菜「じゃあ芹菜から。美作 芹菜(みまさか せりな)、1年生でーす。よろしくお願いしまーす」
先に自己紹介を始めたのは芹菜ちゃん。ツインテールが特徴的な子です。
まな「続きまして、同じく1年生の和泉 まな(いずみ まな)でーす。よろしく!」
で、もう1人の子がまなちゃん。こっちは普通の一つ結びです。が、泣きぼくろが分かりやすいのでそこが目立つ特徴になりますね。
そして、次に来たのは男子生徒たち。
芹菜「げ、先輩たちだ」
げ、って言いましたね。分かりました。芹菜ちゃんはその男子生徒たちが嫌いなんでしょうね。
春彦「うーっす」
芹菜「はぁ………お疲れ様です」
春彦「声が小さいぞ」
芹菜「お疲れ様です!」
春彦「それでいい。おい、和泉」
まな「…………」
春彦「い・ず・み!」
まな「…………」
春彦「お前なぁ!」
文也「あー、もういいだろ。いつものことじゃん」
悠真「それと、さっきから見られてる。ほら、あっちのほう」
言われてみれば、色んな生徒がその様子を見ていました。それも、部外者の私たちではなく、演劇部員で揉め事を起こしているその様子を。
春彦「……悪かった」
秋「もう気は済んだ?じゃあ、この人に名前だけでいいから自己紹介して」
春彦「若狭 春彦(わかさ はるひこ)。2年生」
悠真「石見 悠真(いわみ ゆうま)。同じく2年生です」
文也「俺は近衛 文也(このえ ふみや)。2年生です。よろしくお願いします」
響「私は日野 響。こちらこそよろしく」
一織「私は月影 一織。よろしくね」
蓮花「根室 蓮花。この演劇の卒業生よ。困ったら頼ってね」
男子生徒たちも話してみると案外なんとも思わないもんですね。春彦君だけは抵抗感が残っちゃいますけど。
響「これで参加者は全員?もう少し多く聞いていたんだけど」
まな「それは、そのー……」
春彦「姉弟揃って不登校」
秋「若狭くん!?」
春彦「隠すことでもねぇじゃん」
響「……ちょっとだけでいいから、詳しく説明してくれる?」
春彦「6月初め辺りで急に弟が来なくなった。で、しばらくして姉のほうも来なくなった」
響「どうして?」
春彦「どうして?知らないっすよそんなの」
響さんは何を疑っているのでしょうか。今の私には何も分かりません。
文也「あ、あれ」
その時でした。彼は突然現れて、衝撃を与えていました。私はそんなになんともなかったですが。
まな「ちょっと、輝也!何してたの」
輝也「なんでもいいだろ。たかが何週間かだし」
悠真「その『たかが数週間』すら惜しいの。わかる?わかるなら、無断で学校を休まない。無駄に心配をかけさせない。いい?」
輝也「わかりましたよ、もう……ところで、誰ですか、あなたたち」
響「私たちは、今回合宿の手伝いをしに来たの。私は日野 響。君の名前は?」
輝也「日向 輝也(ひゅうが てるや)」
響「よろしくね」
輝也「その人たちは?」
一織「月影 一織だよ。よろしくね」
蓮花「根室 蓮花。よろしく」
自己紹介も済みましたし、そろそろ本題へと向かおう、なんて思ったのですが、そう都合良く動き出すことはないですよね。
芹菜「輝也くん、乙葉先輩は?」
輝也「姉ちゃん?体調不良」
春彦「ホントかよ。お前が長いこと学校ズル休みしてた癖に」
輝也「仕方ないじゃんか。夏風邪と葬式とが続いたんだからさ」
秋「そういえば、先生がそんなこと言ってたかも」
輝也「分かった?僕はズル休みなんかしてないから。不真面目なお前と一緒にしないで」
春彦「なんだと!?」
仲良くしようよ〜!!!!!
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