3話 1日目 辿り着いたのは理想郷
覗き見はよくない。
でもその場所があまりにも美しいのだから、目が離せない。
薔薇がたくさん咲いている場所。でも薔薇園ってわけじゃなくて、先に少しお洒落な洋風の大きな建物がある。その建物と私の間には20人くらい座れそうな、白いテーブルクロスが敷かれた長い綺麗な机があった。
華麗な花と花瓶、宝石のようなケーキや焼き菓子がその綺麗な机一面に広がっていて、それはまるで理想郷のようだった。
この理想郷のような場所でお茶会をしている7人の者がいた。
7人いる中で、私の目に留まったのは、透き通った金色のくるんとハネた髪をもつ人形のような少女。
洋服も帽子も華美で、白い肌に大きな琥珀色の目。すべてが美しかった。
その少女は紅茶を口にした後、隣の腰くらいまである青髪の妖艶な女性に話しかけ始めた。この女性も、隣の少女に負けないくらいの美しさを放っていた。
「ねぇねぇ、アメリアちゃん。この紅茶美味しいね!どこの国の紅茶だろう?
少なくとも、 ”不思議の国” じゃないよね…?」
__”不思議の国”?そんな国この世界に存在するのだろうか。昔からある童話や作り話のようなもので、「不思議の国のアリス」はよく耳にするが、この現実にあるとは思えない。
なぜなら架空の世界に過ぎないからだ。自分が生まれるよりもっと前にルイス・キャロルが作った架空の世界。たったそれだけのこと。
「うーん。確かに、うちの国ではなさそうだけどー?この味だったら… ”現実の国” じゃないかな?うん、絶対にそう!」
妖艶な見た目とは反した明るい口調で話し始めた。俗に言う”ギャル”に似た喋り方。
そして、この女性は「アメリア」というらしい。
それにまた出てきた、恐らくこの世界には存在しない国。不思議の国の次は ”現実の国” 。
一方、人形のように美しい少女は、「みろく」という可愛らしい響きの少女らしい。
すると突然、みろくの隣に座っていた黒のチェック柄がはいった赤いジャケットとシルクハットを身につけている、洋風な顔つきな14歳くらいの少年が口を挟んだ。
「いや、不思議の国だよ。この紅茶は朝に ”君たちが話し合って” 選んだ紅茶だろう?もう忘れたのかい?それに、17年前にも何回か飲んでる。あとアメリア、お前 現実の国の紅茶のレパートリーが圧倒的に多いからって適当に選んだだろう?
ふん、これだから馬鹿は困る。」
「あはは…。バレましたかぁ。でも、さすが ”女王様”! 」
これは1言ったら10言ってくるタイプに人か…。3人の中では「みろく」の次か同じくらいに若いのに、よく言うなぁ。
それに「女王様」とはなんだろう?どう見ても顔が整った少年に見える。声も可愛らしいような、透き通ったような少年らしい声をしている。
だが確かに、「女王様」の風格も感じなくはないが、どちらかといえば「我儘な姫」の方が妥当ではないだろうか。
ここでみろくが口を挟んだ。
「確かに、朝食のときに飲んだかも! "シャーロットさん" が淹れてくれたよね?」
また新たな名前がひとつ出てきた。恐らく「シャーロットさん」とは「女王様」と同一人物なのだろう。名前は違えど話しかける人は同じなのだから。
「あぁ、そうだ。17年前のお茶会で飲んだときも、おいしい、おいしいって言うものだから、久しぶりに反応が気になった。そしたらこの紅茶と、持って行く予定だった紅茶のどちらを選ぼうか考える、とかいうからアイツが来て、それでこれに決めたんだ。」
なるほど、少し状況を掴んだ。「みろく」と女王様と呼ばれる「シャーロットさん」は同じテーブルで朝食を食べていて、そこでシャーロットさんが17年前にだした紅茶をもう一度だしてみた結果、それがみろくに好評でアメリアと話し合った結果、この紅茶が今、ここにある、という流れか。
ここで少し疑問に思った。「17年前」と言っているから、この人達は少なくとも17歳以上ということになる。アメリアは納得できるが、みろくやシャーロットに関しては年齢と見た目が合わなすぎる。多く見積もっても、みろくで16歳、といったところだろうか。
そして、何より記憶力が異常すぎる。17年前だした紅茶なんて一々覚えていないだろう。しかも反応まで。それに対して何も言わない周りも周りだが…。
さらに『女王』という言葉にも引っかかった。これは一体どういうことなのだろうか。
ただとにかく、普通の人ではないことだけが伝わってきた。
つづく
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