第3話 亡霊の伝承と過去の事件
翌朝、霧雨村は再び雨に包まれていた。夏川遼は、村の歴史学者である山本進と共に、村の外れにある廃屋に向かっていた。山本が持つ古い地図と、藤村謙二の手帳に記されていた場所が一致していたため、そこが次なる調査地点となった。
廃屋へ向かう道中、雨はしとしとと降り続け、森の中は薄暗く不気味な雰囲気に包まれていた。足元のぬかるみに気をつけながら、二人は廃屋に近づいていった。やがて、古びた廃屋が視界に入った。
廃屋は風雨にさらされ、崩れかけていた。入り口の扉は軋みを上げながら開き、内部にはかび臭い空気が漂っていた。山本が懐中電灯を取り出し、薄暗い内部を照らすと、古い家具や雑多な物が散乱しているのが見えた。
「ここが藤村さんの手帳に記されていた場所です。何か手がかりがあるはずです」
夏川は山本の言葉に頷き、慎重に内部を調査し始めた。床には古びた新聞紙や破れた布切れが散らばっていたが、その中に一つ、異質な物が目に留まった。
部屋の隅に、奇妙な装置が置かれていた。それは古びたラジオのような形をしていたが、近づいてみると、音声再生装置のようだった。夏川は慎重に装置を調べ、スイッチを入れてみた。
すると、装置から不気味な音声が流れ出した。古びた歌や囁き声が混じり合い、まるで亡霊が語りかけてくるかのようだった。夏川は装置を止め、再び調査を続けた。
「これは…藤村さんが言っていた音声トリックの一部かもしれません」
山本が装置を指さしながら言った。夏川はその可能性を考え、さらに調査を進めた。
調査を進める中で、夏川は床板の一部が不自然に浮き上がっていることに気づいた。床板を持ち上げると、その下には地下室への入り口が隠されていた。夏川と山本は慎重に地下室へ降りていった。
地下室は冷たく湿っており、薄暗い中に古い家具や道具が置かれていた。その中で、夏川は一つの古い箱を見つけた。箱の中には、さらに多くの手帳やメモが詰まっていた。
夏川はその手帳の一つを手に取り、中を覗き込んだ。手帳には、失踪事件に関する詳細な記述や、村の伝承についての考察がぎっしりと書かれていた。特に、「呪われた夜」に関する部分は、藤村謙二が真剣に取り組んでいたことを示していた。
「これは重要な手がかりになりますね」
山本が興奮気味に言った。夏川も同意し、手帳を慎重に読み進めた。その中で、一つのページが特に彼の目を引いた。
手帳の中には、数枚の古い写真が挟まれていた。それは、数十年前に撮られたもので、霧雨村の様子や村人たちの姿が写っていた。しかし、その中に一枚、不気味な写真があった。
「これは…」
その写真には、薄暗い森の中に立つ人影が写っていた。その人影は、まるで亡霊のように薄れており、その周囲には不気味な光が漂っていた。
「これが、藤村さんが言っていた亡霊の証拠か…?」
夏川はその写真を慎重に調べながら、謎がさらに深まるのを感じた。
音声再生装置、隠された地下室、そして古い写真。これらの手がかりが事件の真相にどのように繋がるのか。夏川は謎解きの糸口を掴みながらも、まだ多くの疑問が残っていた。
次回、夏川は村人たちの証言を集め、さらなる手がかりを求めて調査を進める。そこで明らかになる新たな事実とは?物語はさらに深い闇へと進んでいく。
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