4.ドラゴンの王国
第22話 《峻厳の山脈》のドラゴンたち①
荘厳で絢爛なホワイトドラゴンの王宮。
何の材質で出来ているんだろう? 光を帯びた建物。どこもかしこも、ほんのりと明るく夢のようにきれいな場所だった。
「ユズ、まずは父上と母上を紹介しよう」
キアラの自室に案内され、一息ついたところでそう言われ、ユズは謁見の
……緊張する……!
「だいじょうぶ、ユズ」
キアラはユズの手をぎゅっと握った。
「……うん!」
キアラと手を繋いだまま、謁見の
玉座に、キアラと同じ白銀の髪、そして瞳はキアラとは違う赤い色をしたホワイトドラゴンの王が座っていた。白銀の髪はキアラにそっくりだけど、顔立ちは全く違う。キアラは女性と見間違えるほどの美しく整った顔だったが、ホワイトドラゴンの王は厳めしい、武骨な感じのする容貌だった。
隣に座っているのは、うす蒼の髪と瞳をした女性で、ひと目でキアラの母と分かる容貌をしていた。ああ、キアラはお母さんにそっくりだったんだなとユズは思った。
「キアラ、戻ったか」
「はい。――僕の花嫁を連れて参りました。ユズ、と言います」
「ユズです、よろしくお願いいたします」
「……うむ。私がホワイトドラゴンの王、キセラ・
キアラそっくりのルル妃が優しく微笑んだ。
「キアラをよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
キセラ王が言う。
「ドラゴンと人間とのハイブリッドは、とてつもなく強いドラゴンとして生まれると言われている――期待しているぞ」
「え?」とユズが小さく言う声を打ち消して、キアラは「はい、必ず! そして、ブラックドラゴンを打ち負かし、必ずやホワイトドラゴンを繁栄に導きます!」と言った。
え? ドラゴンと人間の子ども? って、子どもを産むの、あたしが⁉
キ、キアラ? あたし、まだいろいろ決心が……!
ユズが考えを巡らせていると、キアラがユズの手をぎゅっと握って、にっこり笑った。
ああ、やっぱりかわいい! いや、キアラは男の子なんだけど。
ユズがどきどきしていると、妃の椅子に座っているキアラの母親がこほこほと咳をした。
「ルル、だいじょうぶか?」
「ええ、だいじょうぶです」
「無理はしなくていい」
「でも、もう少し……他の妃や王子、姫の紹介もありますから」
「……そうだな。では、手短に済ませよう」
キセラ王がそう言って、手を少しあげると、側に控えていた側仕えの人間が扉を開けた。
赤い髪、赤い瞳のきつい顔をした女性――レッドドラゴン族だと思われる女性が、王子二人姫一人を伴って入って来た。それから、次に、緑の髪、緑の瞳のグリーンドラゴン族だと思われるしとやかそうな女性が、一人の姫と二人の王子を伴って入って来た。
「レッドドラゴン族出身の妃、エマリアと、その息子、カデル、カラエ。娘のエーリ。それから、グリーンドラゴン族出身の妃、アリーとその娘、アベル。息子のナセル、ナミクだ」
皆、名前を呼ばれると厳かに頭を下げた。
キセラ王は続けて言った。
「今紹介した王子も姫も、皆キアラより年上だ。しかし、王位はキアラが継ぐ。王太子はキアラである。なぜなら、キアラだけが白銀の姿――ホワイトドラゴンの王を象徴する姿で生まれたからだ」
その瞬間、何か黒い怨念みたいなものが部屋中に広がるのをユズは感じ、震えた。
何? この黒い渦みたいなものは。
こんなの、感じたことがない……!
そのとき、ルル妃が激しく咳き込み、ルル妃が退出するときにユズたちも退出したのである。
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