第19話 ドラゴンの王国へ行きます③

 夜、ユズは部屋でキアラと二人になった。


「あたし、ちゃんと愛されていたんだ……」

 ユズがつぶやくと、キアラは「そうだよー。もし、ユズの両親がクズだったら、とっくの昔に攫って行っていたよ。でも、ユズのお父さんもお母さんも、ユズのこと、大切にしているのが分かったから、そのままにしておいたんだよ」と言って、にっこりした。

 え? それって、どういうこと?

 ユズの思いを見透かしたように、キアラは「ユズのこと、いじめる奴は、基本的に赦せないだろ?」と言って、ユズを抱き締めそのまま床に押し倒した。


「ちょ、ちょっと」

 キアラに服を脱がされそうになり、ユズはキアラを押し返した。

「えー、どうして?」

「どうしてって、だって。……もう少し、待って」

「仕方がないなあ。ユズ、早く僕のこと、もっと好きになって。――キスはいいよね?」

 ユズはキアラのキスを受けながら、先ほどの両親の涙を思って満たされた思いがした。

 ずっと、お父さんともお母さんとも、それからきょうだいたちとも、なんとなく隔たりがあるような気がしていた。だけど、ちゃんと、愛されていたんだ――


「ところで、キアラ。今日は客間で眠るの?」

「えー、どうして? ユズといっしょに決まっているじゃない。これまでもいっしょに眠ってきたし」

「でも、キアラ、男の子だったもん」

「だけど、僕、ユズと結婚するし、いいじゃない」

「……だって、いろいろ触るんだもん」

「それはね、ユズのこと、好きだからだよ。――僕、我慢するからさ。いっしょに眠って?」

「でも」

「ユズのお父さんもお母さんも、僕たちはいっしょの部屋だと思ってるよ。ユズは僕の花嫁だし。今日は僕、我慢出来るよ――たぶんね」

 たぶん?


 結局ユズはそのまま、キアラといっしょに布団に入った。

「ちょっ! どこ触ってるの⁉」

「いいじゃん、少しだけ。――ね?」

「ああん、、だめ」

「だいじょうぶだよ。……ほら、心臓の音、聞かせてもらったときも、ちょっと触ったじゃない?」

「あのときは、女の子だと思っていたから……! あ、だめだめ!」

「――じゃあ、キスだけで我慢するよ」

「ん。……あたし、今日はいろいろありすぎて、もうついていけない……!」

「ユズ――ずっと大好きだよ。早く僕のこと、もっと好きになって」


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