第17話 ドラゴンの王国へ行きます①

「ユズ‼ 心配したのよ! ミフネとの結婚が嫌なら嫌だと言ってくれたらよかったのに!」

 家に戻ると、まずナツメがユズを抱き締めた。

「急に消えたという話だったが、どこに行っていたんだ? ヒカリさんといっしょに消えた、ということだったが、ヒカリさん――あなたはいったい……?」

 ソテツがヒカリ――キアラに強い視線を送った。


 キアラはにっこり微笑むと、白銀の長い髪を逆立て、そして全身から白い光を放ち――村一帯に眩しい光が同心円状に広がった。

 強い白い光に、ユズやユズの家族たちが目を閉じて――次に目を開いたとき、そこには白銀の身体で、蒼い角蒼い瞳を持った、壮麗なドラゴンの姿があった。


「……ドラゴン……!」

 ソテツが小さく叫んだ。

 ナツメは口に手をやり、声を出すことも出来なかった。カイドウたちは「かっけー!」と子どもらしくはしゃいでいた。

 ユズは久しぶりに――九年ぶりに見た、ドラゴンの姿に惚れ惚れとしていた。大きくなったなあ。……ほんとうにあのときのドラゴンの子だ、と思うと、胸がじんわりとあたたかくなり、なぜだか目に涙が滲んだ。……とてもきれい。

「キアラ……」

 ユズは成獣となった大きな白銀のドラゴンの脚をそっと触った。

「キアラ?」

 ソテツが不思議そうに言う。そこへ、白銀のドラゴンの声が降って来た。


「僕はホワイトドラゴンの王太子、次代のホワイトドラゴンの王たるキアラ・B・WTだ。ヒカリとは仮の名である。ユズを妃に迎えるために、この村に来たのだ。――ユズ」

 キアラはユズを手に乗せ翼を羽ばたかせ空中に飛び上がると、さらに続けて言った。

「ユズは僕の妃としてドラゴンの王国へ連れて行く。異論は認めない。ユズがドラゴンの王国へ行く準備を早急にするよう求める!」


 白銀のドラゴンの声は村中に響き渡り、全員がその意志を聞いた。人型のヒカリが白銀のドラゴンであることも、一瞬にして伝わった。そして、その神々しい姿を目の当たりにして、村人たちは全員ひれ伏した。


 ドラゴンは通常、頭上を飛んで行くものであり、人間と触れ合うような存在ではなかった。神と同じ、畏怖する存在であったのだ。また、人型をとれるドラゴンがいることも、あまり知られた事実ではなかった。アルニタス大陸の王都の人間の一部だけが知っているに過ぎなかった。だから、王都から遠く離れた《渡って来た人》の村人たちが知る由もなかった。


「……ヒカリがドラゴンの王太子……⁉」

 ミフネは平伏しながら、手を握りしめた。目には涙が滲んだ。――敵わない。相手がドラゴンでは、しかも王太子では、太刀打ち出来ない―― 

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