第16話 夢の場所とドラゴンの争い②

「だから、ね。ユズは僕のものなんだ」

「ちょっ、やん、どこ触っているの⁉」

「ユズ、大好きだよ」

「待って待って! あたしあたし……あ、だめだって! あたし――こういうの、初めてだし、よく分からない」

「うん、知ってるよ」

 キアラはユズの耳たぶを舐めながら言う。


「え?」

「だって、僕、ユズに近づく男は排除していたから」

「ええ?」

「ユズは僕のもの。僕以外の男がユズに近づくなんて、赦されないよね?」

「……あのう、どういうこと?」

「ユズの思念をずっと追っていたということだよ」

 キアラはにっこりと笑う。何でもないことのように。

 思念を追っていたって?


「じゃあ、ずっと、あたしのこと見ていたってこと?」

「そういうことになるかな? ユズは気づいていなかったけど、ユズのこと、好きな男が多くて、僕はすごく苦労したんだよ。――ユズは僕のものなのにね」

「……あたしのこと、好きな男の子なんて、いないよ」

「うん、僕がユズを守っていたからね。――ミフネだけはうまく行かなかったけど」

 キアラの髪がふわっと宙に浮かび、ぱちぱちと雷の光を放ち、蒼い瞳も怪しく光った。

「キ、キアラ……!」

「ユズと結婚するとか妙なことを言い出して、僕がどれだけ気をもんだか!」

 洞窟内にキアラの髪から放たれた雷光が広がった。


「あ、あの……ね?」

 キアラはユズを見て、雷光をおさめると、美しく笑い、ユズを抱き締めた。

「ユズが、結婚したくないって言ってくれて、僕はほんとうに嬉しかったんだよ」

「う、うん」

「ユズは僕と結婚するんだから!」

「えーと、それは」

「それは?」

「まだ、よく分からない……突然過ぎて」

「でも、ユズは僕のことが好きだよね?」

 キアラはユズにキスをすると、「それに、遠いところに連れて行ってあげられるのは僕だけだよ。ユズのこと、守ってあげるし、一生大事にするよ」と言った。


「――遠いところには行きたい。人間では超えられない結界を超えて。ずっと夢に見ていた、ドラゴンの王国にも行きたい」

「全部連れて行ってあげるよ」

 キアラはそう言うと、ユズのいろいろなところにキスをした。

「きゃ! キアラ、そこはだめだってば!」

「ユズは僕のものだから、しるしつけておかないとね」

「ええ⁉ あっ」

「ふふふ。――じゃあ、そろそろ村に帰ろうか」

「……たぶん、大騒ぎになっているよ」

「それはなんとかする」

 キアラはあの美しい顔でにっこりと笑ったのだ。

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