第11話 ヒカリ――まさか、あなた①
洞窟から出て少し歩いたところで、ヒカリが「ねえ、ユズ。あっちの方に、小さいけどきれいな湖があるんだよ。知ってる?」と言った。
「ううん、知らない」
そもそも洞窟は村から少し離れたところにあるので、そのさらに向こうまで、ユズは行ったことがなかった。
「行こうよ!」
ヒカリはユズの手をひっぱって歩き出した。
ヒカリはどうしてそんなに詳しいんだろう?
《はじまりの草原》に出現したあと、この辺りをさまよったのかな?
ユズがそう思うと、ヒカリはユズを振り返り、何でも分かっているかのように笑った。
ヒカリ?
ヒカリがユズの手を握る力が強くなった。ユズも強く握り返した。
「もうすぐだよ!」
ヒカリは陽気にそう言って、少し駆け足になった。
湖は小さいけれど、爽やかな緑の木々や美しい花々に囲まれ、澄んだ水を湛えていた。その水は透き通っていて、小さな魚が泳いでいるのが見えた。
「きれい……」
「でしょう?」
「なんだか、秘密の場所みたい」
「僕の、秘密の場所なんだ」
ヒカリはユズを見て微笑んだ。
「秘密の場所、あたしに教えてくれたの?」
「そう!」
「……ありがとう」
「ユズ、大好きだよ!」
ユズはヒカリの笑顔を眩しく思った。
家族とミフネくらいしか、親しく話す相手がいなかったユズは胸がいっぱいになって、涙が出そうになった。
「ねえ、ユズ。水浴びしようよ」
ヒカリは服を脱ぎながら、水場へ向かった。
「え? ねえ、服脱ぐの?」
「だって濡れちゃうよ。ユズもほら、脱いで」
「え? でも」
ヒカリは自分で服を脱ぎながら、ユズの服も脱がせた。
ヒカリ、華奢だと思っていたけど、華奢なんじゃなくて、筋肉質みたい。え⁉ ――あれ? ヒカリ、胸がない? 十四歳って、あんなにぺったんこだっけ? ……筋肉はついているけど。
「ユズ、早く脱いで。湖に入ろうよ。気持ちいいよ!」
ユズは、ヒカリに服を脱がされて、ほとんど下着姿になっていた。ヒカリもユズと同じように下着姿で、そして勢いよく下着も脱いだ。
「あ! あああああああ‼」
「え?」
ヒカリは不思議そうにユズを見た。
「ちょっと、もしかして……! ヒカリ、あなた――」
ヒカリは生まれたままの姿で、慌てふためくユズに近づいた。
「きゃああああ! ちょ、来ちゃ駄目! ヒカリ、あ、あなた、男の子じゃない‼」
ユズは顔を覆って座り込んで、叫んだ。
「――うん、そうだけど?」
ヒカリは何でもないように言い、ユズの隣に来てすぐそばに座った。
「女の子じゃなかったの⁉」
ユズが真っ赤になって言うと、ヒカリは「僕、女の子だなんて、ひと言も言わなかったけど?」とユズの頭を撫でた
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