2.え⁉ ちょっと、もしかして――‼
第9話 みんなには内緒にしておいて?①
ヒカリがユズの家に住むようになって、何日か経った。
ヒカリはどこに行くにも、ユズの後をついてきた。
「ユズー! 次は何をするの?」
「じゃあね、今日はあっちに果実を取りに行こう」
いつもミフネといっしょに行くことが多かった、果実摘みをヒカリと行くようになった。
「ヒカリさん、ちょっとここに水を撒いてくれる?」
村を歩いていると、そんなふうに声をかけられることも多かった。
「いいよ!」
ヒカリは気軽に応じて、畑全体へ水撒きをする。これほど強い水の力を持ったものは、村にはいなかったので、みなとても喜んでいた。
『ヒカリさんが来てくれて、とてもたすかった』
『水の能力、いいわねえ』
『それにしてもなんで、ユズのところにいるのかしら?』
そうね、あたしもそう思うわ。
「ユズ?」
ヒカリが心配そうにユズを覗き込んだので、慌てて笑顔になった。
「ん、なんでもない! 果実を摘みに行こう!」
「うん!」
ヒカリは籠を持っていない方の手で、ユズの手を握った。とても自然に。
ユズはなぜか、手をつないでいることが恥ずかしいような気持ちになった。
……おかしいよね? ……女の子同士なのに。
しかも、弟のカイドウと同じ年齢の子に対して。
『恥ずかしくないよ』
「え?」声が聞こえたような気がして、ユズは思わず反応してしまう。
「どうかした?」
「ううん、さ、行こう!」
村から出て、《峻厳の山脈》の方へ行き、果物を収穫した。
籠いっぱいになったので、少し休憩することにした。
「ねえ、あの洞窟に行かない? 涼しくて気持ちがいいし」
ヒカリが言い、洞窟でお昼ごはんを食べることにした。
洞窟に入り、二人は並んで座った。
不思議。
八歳のころ、ドラゴンの子といっしょに過ごしたときは広い洞窟だと思っていたけれど、こうしてヒカリと二人だと、そんなに広く感じない。
ユズは、ヒカリの身体の一部――肩とか太ももとか――が触れ合い、なんだか緊張してしまった。
変なの。毎日いっしょに眠っているのに。
「どうしたの?」
ヒカリが大きな目でユズを見て、言った。白銀の髪が、肩からさらさらと流れた。
うわあ、きれい!
こんなにきれいな子、他に見たことがない。女の子同士なのに、どきどきしちゃう。
「なんでもない」
ユズはヒカリから視線を逸らして言った。
恥ずかしい。
あたし、今、顔、赤いかも。
『ユズの方がずっときれいだよ』
「そんなことない。ヒカリはほんとうにきれい。誰よりも」
うっかり声に出して応えてしまい、ユズははっとしてヒカリを見た。
失敗した!
さっきのヒカリの声は、心の声だった。
「ヒカリ……あのね?」
なんと言ったらいいのか、ユズは分からなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます