第7話 ヒカリの能力とユズのうち①

 ユズがヒカリを伴って村に行くと、村人はざわめいた。

《渡って来た人》には、様々な人種の人がいたが、ヒカリのような容姿の人間は一人もいなかった。そして、黒い髪黒い目の人間の割合が高かったので、白銀の髪に白い肌、蒼い瞳のヒカリはとても目立ったのだ。

 何よりヒカリはとても美しかった。


「村長さま、《渡って来た人》を連れて来ました。――ヒカリと言います」

 ユズはひとまず村長の元にヒカリを連れて行った。《渡って来た人》を見つけた場合、まず村長に伝える慣例であったのだ。

「ほう。《渡って来た人》か。……久しぶりだな」

 村長はヒカリをじっと見つめた。

「お主、どこの国から来た?」

「……北の方です」

「なるほど。……して、お主の能力は?」

「能力?」

「世界を渡ったときに附与される能力のことだよ」


 このような世界で人間が生き延びて来られたのは、この附与された能力のおかげだった。したがって、《渡って来た人》が村に来ることは歓迎されたし、同時にどのような能力であるかは重要なポイントだった。


「なるほど」

 ヒカリは顎に手を当てて少し考えるポーズをしたあと、手のひらを上にして両手を前に出すと、にこっと笑った。

 すると、手のひらの少し上に水の球が出来て、ぐるぐると回った。

 そして、いくつもいくつも水の球を出し、部屋中を水球が廻った。


「もっと出しますか?」

 ヒカリはそう言うと、「いや、充分だ」と村長は言って、「水の力とはなんという僥倖だ!」と豪快に笑った。

「雨も降らすことが出来ますよ?」

 何でもないことにようにヒカリは言う。

「なんと!」

 ユズの母のように天候が分かる能力を持つものはいたが、雨を降らすことが出来るものはいなかった。だから、村長は「これはよい人が来てくれた。すぐに住む場所も用意しよう。まずは我が家に滞在してくれ」と機嫌よく言った。


 するとヒカリは涼しい顔で言った。

「いえ、僕はユズの家に行きます」

「え?」

 横で聞いていたユズは小さく声を上げた。

 ――あ、でも確かに、出会ったとき「ユズの家に連れて行ってくれる?」と言っていたわ。

 ヒカリはユズの顔を見てにっこり笑うと、「よろしくね、ユズ!」と言った。

「うむ。じゃあ、連れて来たよしみで、ユズ、お前が面倒をみてやれ」

「はい」

《渡って来た人》は丁重に扱われる。そしてこの場合、村長の決定は絶対だった。

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