第6話 結婚話ときれいな女の子③

 ユズだけが知っている、木で入口を隠された秘密の洞窟。

 ひんやりとした洞窟に入る。


「結婚か……」

 このままこの村にいたら、避けては通れない問題だった。

「出て行こうかな」

 ユズがそう呟いたとき、「どこに行くの?」という声がした。

 ユズはびっくりして、声がした洞窟の奥の方を見た。

「誰?」

「こんにちは、ユズ」

 ――きれいな女の子だ、とユズは思った。


 白銀の髪は長く腰まで垂れていて、暗い洞窟の中でほんのりと光を放っているようだった。華奢で線の細い身体つきをしていて、ユズより少し背が低く、年齢もユズより年下に見えた。大きな蒼い瞳は優しくユズを見つめていた。

「どうしてあたしのこと、知っているの?」

 ユズの質問に答えず、その子はにっこりと笑った。

「僕はヒカリ。ユズに会いに来たんだ」

「ヒカリ?」


 ユズは九年前の子ドラゴンを思い出した。

 でも、この子は人間の女の子だ。ドラゴンじゃない。

「ユズ。僕をユズの家に連れて行ってくれる?」

 ヒカリと名乗った子は、首を少し傾けて言う。

 白銀の髪がさらさらと流れて、とてもきれいだった。

 まるで、あのときのドラゴンの身体のような髪の色。

「ね?」

 ヒカリはユズの目をずっと覗き込んだ。

 その蒼い目はやはりあのときのドラゴンのものと同じだった。

 この子はドラゴンじゃない。でも。


「ユズ。僕を《渡って来た人》として、村に連れて行ってくれる?」

 ヒカリは手をユズに伸ばした。

 ユズはふらふらとその手をとって――強く握った。さらさらとしていて気持ちがいい、とユズは思った。

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