第4話 結婚話ときれいな女の子①

「ユズ、お前、いくつになった」

「十七です」

 村長の家に行くと、ユズはまず年齢を聞かれた。


「……そうか。では、ユズ。お前、ミフネと結婚しなさい」

「え⁉ で、でも」

「ミフネでは不満か? ミフネは十九、ユズは十七。ちょうどよいではないか」

「だけど、あたしは」

「あたしは?」

「まだ、結婚したくありません」


 ミフネのことは好きだ。

 だけど、結婚相手となると、なんか違う気がする。

「この村では、十六になると成人とみなされるし、結婚も早くする慣例となっている――子どもが生まれないと、村の存続が難しいからな。分かっているだろう?」

 白髪の長老はあごひげを撫でながら言った。

 そんなことは、分かっている。

 去年十六になったときから、結婚相手のことは話題に上っていた。


「でも、まだ結婚したくないんです」

「そのような我が儘は通用しない。村のためだ」

「だけど、ミフネの気持ちだってあるでしょう」

「――ミフネはユズと結婚したいそうだよ」

「え?」

「先にミフネに確認したのだ。――何しろ、ユズ、お前は少々変わり者だから」

「……ミフネ、いやいや承諾したんじゃないですか?」

「そうでもないぞ」

「でも」

 ユズは両手をぎゅっと握り締めた。

「ユズ。お前の結婚相手は探すのが難しい。ミフネがいいと言っているのだから、ミフネと結婚するように」

 ユズは握る手の力を強くした。


『お前のような気持ち悪い娘、ミフネの他に誰が結婚するというのだ』


 音声にならない村長の声が聞こえて、ユズは返事もしないで急に立ち上がると、その場から逃げるようにして立ち去った。

「ユズ! 待ちなさい!」

 引き留める村長の言葉が聞こえたけれど、ユズは無視した。

『せっかく結婚相手を決めてやったのに、何が不満なんだ。理解出来ん』


 音声にならない言葉がユズに突き刺さった。でも、ユズは無視して、村長の家から走って出て行った。

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