第4話 プレッツェルの想い

僕の名前は瑠璃祭るりまつりネオン。

幼馴染の千里せんりナリアに恋心を抱いている。

だが相手は僕のことを幼馴染以上には思っていないらしく、

よくわからない関係になっている。

そんな日々が続いていた。

ところが、友達の大柚おおゆずヒルガオに、

水族館でのWデートに誘われてしまった。

その結果、僕とナリアが二人っきりになるハメになった。


「ネオンと二人っきりなんて、何年ぶり?」

ナリアが聞いてきた。

「ほんといつぶりだろうね〜。本当に覚えてないわ」

そんな雑談をしながら進んでいく。

ちなみに、大柚たちとは別順路で歩いているため、会うことはない。


二人で水族館の中を歩いていると、

電灯の青い光が魚を見ているナリアの横顔にあたって、

ナリアが少し大人っぽく見えた。

ついこの前まで砂場で遊んでるようなやつだったのにな。

勝手に父親みたいなことを考えてる。


今日、僕はとある秘策を用意してきた。


「あ、あのさ...。ほら、誕生日渡して無かったよね?

 だから...、その...、プレッツェルって分かる?あのパンみたいなやつ。

 焼いてきたんだよね。だから、ほんとに遅れてゴメンなんだけど...、

 お誕生日おめでとう!これ良かったら食べて!」

僕は紙袋を差し出した。

「えっ!ありがとう...。

 ゴメンね、私こそ何も持ってきてなくて...。」

すごくドキドキする。

「いや、僕にはナリアがいれば十分だよ」

僕が言うと、ナリアが恥ずかしそうに言う。

「もーっ!そーゆーセリフ言うの禁止!」

「えーっ!」

二人で笑いあった。


「ねぇ?あのさ?」

……。沈黙が数秒間流れる。

ナリアの顔が赤い。

「ネオンってほんっと鈍感ね!」

えっ?怒ってる?

「僕、何かした?」

「なんでもないっ!」

すごく不安なのだが?何もしてないよな?

「だから何も無いっ!行こ!」

...何なんだ?


今頃大柚たちは何をしてんだろう...。

もしかしたら、どっちかが告ってたりして。

そうなると僕、かなりマズイぞ。

どうする?ここで告るべきなのか?

プレゼントを渡して雰囲気はいい感じだがなかなか勇気が出ない。

すると、

「もうすぐ出口だよ!」

え?もうそんなに時間経ったの?

「ほんとだ。大柚達、先に来てるかな?」

適当にしか返せない。

神様少しでいいから時間を遅らせてください!

でもそんなことは叶うはずもなく、

「着いた〜」

ナリアは楽観的に言う。

結局何も言えなかった...。


大柚になんて言い訳しよう...。問い詰められるだろうなぁ。

そんな後悔を胸に僕は出口に向かった。






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