なぜか親友の妹がリアルASMRしてくれる話

甘照

第1話 完全にえっちなやつじゃない!!

※ASMR形式。本編はヒロインである千夏ちなつのひとり語り+ト書きの構成。「」台詞、()SE、//方向と距離指定。


―――――


 用もなく幼馴染みで親友の荻野おぎのあかねの家へ訪れ、本人もいない部屋で勝手に寛いでいると、普段はほとんど話しかけてこない茜の妹、千夏ちなつが話しかけて来た。


(扉の開閉音)


//左斜め後方で中くらいの距離から


「ねぇ、お姉ちゃんといっつも何やってんの?」


 椅子に座っていたあなたは千夏の方へと振り向く。


//正面で中くらいの距離から


「へ?じゃなくて。

 最近私がいない時間にうちへ来て、お姉ちゃんの部屋でふたりコソコソなんかしてるでしょ」


「なーんか怪しいと思って、この前遊びに外出て行ったフリしてこっそり聞き耳立ててみたら……」


「お姉ちゃんが、今まで聞いたこともないようなセクシーな声出してんの。

 ……あれ、なに?」


 千夏はジト目で、訝しがるように聞いてくる。


「恥ずかしがってないで、なにやってたのか教えなさいよ!!

 も、ももも、もしかして、え、えっちなこと……じゃ、ない……よね?」


「え、えーえすえむあーる?

 な、なにそれ。聞いたことないんだけど……」


「音とか映像で脳がぞわぞわ~ってして気持ちいい……?

 よくわかんないけど、えっちなことじゃないなら、なんで私に隠れてコソコソする必要があるのよ。

 やましいことじゃないなら堂々とすればいいじゃない」


「……台詞とか耳ふーとかよく分かんないけど、まあ何でもいいわ。

 とにかく、お姉ちゃんがあんたにやっていたそのASMRってやつ、私にもやらせなさいよ」


「なんでって、そんなのあんたのことが好きだからに決まって……じゃ、なくてっ!

 本当にやましいことじゃないのか、チェックするためよ!!」


「ホントのホントにやるわよ!

 それとも、お姉ちゃんはよくて……私は駄目なの?……私にASMRされるのは……嫌?」


 千夏は瞳を潤ませながら、不安そうな小声でそう聞いてくる。

 あなたは全力で否定した。


「そ、そう……?ふーん。私にASMRして欲しいんだ。そっか……んふふ。

 そうと決まれば早速やるわよ!」


 あなたは千夏にシナリオを書いた用紙を手渡した。


(シナリオを手渡す紙の音)


「なによこれ……シナリオ……?」


 あなたは椅子に座ったまま部屋の中央まで移動する。


(椅子を動かす音)


「椅子に座ったまま部屋の中心に動いて……ぷっ。なんかあんた、その状態だとちょっと間抜けね。

 ……で、次はどうすればいいの?」


「えっと……とにかくこのシナリオの、「  」かぎかっこが付いてる所を読めばいいのよね……?」


(紙を捲る音)


「ん゛っぅん。……えー…と、まずは耳元に唇を寄せる……なるほど」


 千夏があなたの右耳に唇を寄せる。


//右側の近くから


「……体の力を抜いて、頭の中を空っぽにしなさい。

 そしたら、私の声だけに集中するの。……そう、上手ね♡」


 案外ノリノリな声音で、甘い声を出してくれる千夏。


「……そしたら、次は首元に指を這わせて……」


 千夏はあなたの首元に指を触れさせかけたが、寸前で引っ込め、顔を真っ赤にして飛び離れた。


//正面の中くらいの距離から


「って、なによこれ!!完全にえっちなやつじゃない!!お姉ちゃんホントにこんなの読んだわけ!?」


「……ふ~ん。お姉ちゃんの……気持ち良かったんだ」


「……ふ~~~ん。私のも……まあまあ良かったんだ」


「ま、あんたがどうしてもって言うなら……またやってあげないことも……ないけど?」


「……なによその顔。私じゃ不満なわけ……?」


「……そう……なんだ。んふふ。ま、そこまで言われたらまたやってあげる。

 今日は初めてで微妙だったかもだけど、今度やる時までにASMRについてちゃんと学んでくるわ」


「お姉ちゃんよりすごいのしてあんたを骨抜きにしてあげるから、覚悟してなさい」


 千夏はそれだけ残して、足取り軽く部屋から出て行った。


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