10話 劇の開演
僕の誕生日になった。
今日、全てを決める。
僕たちは奴のいるマンションの一室へと向かっていった。
あらかじめ用意しておいた鍵を使って部屋へと入った。
部屋の廊下を足音を立てないように進んでいく。
やつはこの時間は確実に寝ている。
明日も仕事はあるので遅くまでは起きていない。
寝室に行くにはリビングを通らなくてはいけない。
そうして僕たちはリビングのドアを開けた。
そこには、ソファをこちらに向けて堂々と座っている、甘蔵がそこにいた。
そしてその前にある机の上には拳銃が置いてあった。
なんで?
なんで奴がここにいる?
やつは寝室に……
そう思考しておるときにふと斜め後ろにいる玲奈を見た。
彼女は憎しみの気持ちをやつに向けている。
僕が庇うように彼女の前にいなければすぐにでも飛び出していただろう。
そうして再び奴に視線を向けると彼は笑っていた。
笑顔なんて綺麗なものではない。
黒く濁っている。
そんな奴に少し怖気付いていると
「やあ、初めまして」
そう話しかけてきた。
「…お前と会話することなんてない」
そう言い切るとやつはその笑みを深めて。
「ひどいなあ、君たちがここに来れるように色々手配しておいたんだよ。君たちはおかしいと思わなかったのか?俺の予定なんて普通漏れることなんてない。ここに住んでいることも。わざわざ情報を提供していたことがわからないの?」
なるほど。
不自然なほどに順調に情報が集まった理由はそれか。
奴にとって僕たちは奴の手の平で踊らされる人形だったというわけか。
すると奴は玲華の顔を見て笑いながら言った。
「そうだよ、その顔!手が届きそうになった終点が実は仕組まれたものだったなんて。最悪の他でもないよね!あの日からずっと俺が計画していたものが成功し、君たちの計画は失敗した。穴だらけのただの人形劇がね!」
そう言って奴はゲラゲラと笑っている。
今だ!
そう思って僕は隠し持っているナイフを使って奴に走っていった。
パァーン
1発の銃声が鳴り響く。
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