1話 全てはここから始まる

涼しい春風が僕を包み込む。


ここは廃ビルの屋上。


僕は今日ここで人生にピリオドを打つ。


今日は僕の17歳の誕生日。この記念日に僕は命を絶つ。


さて、さっさと飛んでしまおう。死にたくなくなる前に。


そうして僕は一歩踏み出し……


「待って!」


手を引かれた。力を抜いていたせいで僕は死から遠ざかってしまった。


なんなんだ。


せっかく死ねるとこだったのに。


僕はその人に文句を言おうと向き合おうとした時、急に肩を掴まれて


「私の復讐を手伝って欲しいの。」


「…は?」


思わずそんな声が漏れてしまった。


どうやら僕の救世主じゃまものは女の子だったらしい。肩を掴んで離さない。とりあえず…


「…手を離してくれない。近いんだけど。」


僕も年頃の男である。恥ずかしいのだ。


すると彼女は顔赤らめ離れてくれた。


「…まず、質問をさせてくれ。」とりあえず僕はこの状況を理解することにした。


彼女は無言で頷いた。


「まず、名前は?」


清水玲奈しみずれいな。あなたは?」


水無鈴みずなれい


「年齢は」


「17歳、高校2年生だよ。」


同い年か。


「じゃあ、なぜ僕が自殺することを知っていた?」


「別に知らなかったよ。」


「じゃあ、なんで…」


止めることができたんだ?


「たまたまここを通りかかった時にあなたが見えて。それで追いかけたの。そしたら飛び降りようとしていたから。」


……なぜ?なんで?


「なんで止めたの?」


「さっき言ったでしょ。私の復讐を手伝って欲しいの。」


「それで?その内容は?」


僕は軽い気持ちで聞いただけだった。


だけど、そのことを話す時の彼女の目は冷たくもあり、深い憎悪の気持ちがこもっていた。

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