保次郎編5話 「私が処女でも、この子は私の赤ちゃんなの」
「待ちなさい亜矢子」
「おままごとがしたいなら、私のお人形あげるわよ」
「私の子供の頃のお人形あげるっていったのに、貴女断ったわよね」
「それを、今受け取りなさい」
なんだか、そんな関係性のようだ。この2人は。
お母さんと、誘拐犯の少女が追いかけっこをする。
「違うわ奥様」
「私、おままごとがしたいんじゃないの」
「お人形はいらないの」
「じゃあ、何がしたいのよ」
2人は、追いかけっこをしながら、話す。
「この赤ちゃんは、本当に私の赤ちゃんなの」
「ずっと待ってたの」
なんだか、思ってたより深刻みが出てきた。
電波ちゃんか。頭がおかしいのか。
「赤ちゃんってのはね」
「処女じゃ産めないのよ」
「だから、処女の貴女は赤ちゃんを産んでないの」
「分かったかしら」
このお母さんも、何かおかしい。
言ってる事は正しいが、どこかおかしい。
そんな説得する必要があるだろうか。
いくらここが異世界だろうと、誘拐犯の少女は出産する年齢ではない。
「ええ、そうね」
「私は処女よ」
誘拐犯の年齢からして、処女でなければ、随分とハードでダークな異世界だ。
良かったよ、この異世界に幼い少女に性的悪戯をするロリコンはいないんだ。
いや、この異世界にもロリコンは存在するだろうけど。
「私が処女でも、この子は私の赤ちゃんなの」
「だって私は奥様より知ってるの」
「旦那様よりずっとずっと知ってるの」
電波ちゃんだなぁ。
「そうだね」
「うん、そうだ」
「僕より、君はその子の事をよく知ってるだろう」
お父さんが、回り道をしたのか、誘拐犯の前に現れる。
お父さんも、生まれてきたばかりの僕の事を、よくは知らないだろう。
「ええ、知ってるわ」
お父さんは、誘拐犯をすり抜けさせ、妻の前に立ちふさがる。
「良いじゃないか」
「これで、いいんだ」
いや、なにもよくない。
「はぁぁ」
お母さんは、何か言いたい事があるのであろう。
色々とふくめたため息をつく。
「まぁ、私も忙しいし」
「赤ちゃんの面倒見てられないし」
「亜矢子に任せておきましょうか」
「一旦はね」
え、ええ。
僕、この電波ちゃんに任せられるんですか。
どうにも、この電波ちゃん。
縁起には見えない。
本気だ。
僕を売り飛ばそうとか、そんな風には見えない。
それはありえない。
この異世界は赤ちゃんを売り飛ばして金になる世界なのか。
いやまぁ。そんな話しはどうでもいいんだ。
売り飛ばされるわけじゃないってのは、僕も分かるから。
この少女が、僕を殺したいわけでもない事も分かる。
むしろ、俺を死なせたくない。
守りたい。
そんな感覚を感じている。
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