3話


  僕は、この異世界で、英雄として生きるらしい。

 英雄古角保次郎。

 それが、この異世界での僕か。

 ふむ、悪くない。

 悪くないぞ。

 この異世界で、生きてやろうじゃないか。

 英雄として。

 

 「暁代、まだ生まれたばかりなんだ」

 「英雄として生きるかどうかなんて」

 「今から押し付けなくてもいいじゃないか」


 どうにも、こういう人なんだろうな。

 我が子を英雄にしたくないのか。

 僕には、理解できそうにない。

 この異世界でのお母さんの方は、まぁ分かる。

 我が子を英雄として育てる事が、何が間違いだろうか。

 

 「英雄なんてのはね」

 「15歳20歳になってから英雄になるか決める」

 「なんてものじゃないのよ」

 「英雄なんてのは」

 「生まれてくる前から英雄で」

 「英雄としてしか生きれない」

 「親も周囲も生まれてきてすぐに」

 「英雄として教育する」

 「そういうものなのよ」


 うん。このお母さんの言ってる事は正しい。

 きっと、僕は、英雄なんだ。

 そう、決まってるんだ。

 育ってやろうじゃないか。

 受けてやろうじゃないか。

 英雄としての教育を。


 「いや、こういうのは本人の意思ってものが」

 

 お父さんの言う事は、どうにも分からない。

 本人の意思なくして、英雄にはなれない。

 しかして、その意思とは。

 本人に英雄になるかと尋ねるものではない。

 喋れるようになった時。

 会話が出来るようになった時。

 その時に、英雄としての教育をしようか。

 そんな悠長な事を言っていては、遅いんだ。


 本人の意思なら、ここにある。

 僕は英雄として生きる。

 そう、お父さんに伝えたいが、僕はまだ喋れない。

 

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