61話 



 僕が恐れた勝てないと思ったモンスターが、今。

目の前で、僕を失望させる。


 「ふん、そうかもしれないな」

 「凡なる存在共ならな」


 しかし、このモンスターには憎しみや恨みよりも。

慈悲のような気持ちがあった。


 慈悲だ慈愛は僕の役割じゃないんだが。


 それは、英雄度1位。

菩薩拳の英雄の役割のはずだ。

 

 だが。とにかく僕にはこのモンスターに慈悲と感謝の気持ちがあるんだ。


 【このゲームに勝つかどうかより】

 【今は連打練習をしていけ】

 【そうすればお前は】


 「忠告も教育にも感謝する」


 僕は頭を下げていた。

 

 僕が、頭を下げるなど。


 だが、時に魂に残る今までの経験に、身を任せてみる事もしなければ。


 オロチは殺せない。


 「そして、お前に慈悲を与えてやる」

 「お前を殺しはしない」


  【殺せない】

  【ではないのか】


 「それも正しい」

 

 「僕は君に勝つ事はできても」

 「お前を殺したくない」

 「お前を殺せない」


 「ただ」


 「一発お前を殴らなければ気がすまない」


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