49話 モンスターというのは、いともたやすくえげつない行為を進めていくものだ。


  

  【お前さ、さっきから黙って聴いてりゃ】

 【ちょっとはよ】


 モンスターが看板にマジックで言葉を伝えてくる。

 ほほぉ。

 ホワイトボードを使えばいいものを、わざわざ看板を複数用意して言葉を伝えるとは。

 これも恐怖演出か。

 

  【言いたい事はたくさんあるけど】

  【とりあえずこれ握ってみ】


  モンスターに渡されたのは、スティックのない方向キーとXボタンとYボタン。

開始ボタン。選択ボタン。

そんなボタン数の少ないコントローラーだった。


 モンスターというのは、慈悲も容赦もない。

 モンスターというのは、いともたやすくえげつない行為を進めていくものだ。

 ああ、恐ろしいものだ。

 モンスターというのは。


 しかし、これが拷問だというのなら、受けなければいけない。

 拷問に受けないという選択肢はないのだ。


  拷問器具として渡されたボタン数の少ないコントローラーを握る。


 【Xボタンを連打しろ】


 モンスターから、拷問の指示が出された。

 はぁぁー。いや本当に、このモンスター凄いよ。

 モンスターなんかに、感心しちゃうよ。


 拷問というのは、受動的に行われる拷問とは、やはり恐怖心がそこまで高くならないのだ。

 怖い拷問というのはやはり。

 自らやらされる拷問だろう。

 分かっている。

 このモンスター恐怖心というものが分かっている。

 このゲームはプレイヤーに恐怖心を与えるゲームなら。

 なんて職務に忠実なモンスターなのだろうか。

 モンスターは全部皆殺しにしたい。

 したいが、このモンスターは奴隷にしてやろうかという気持ちも芽生えてくる。


  

 

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