第38話



   はじめましての挨拶は、不意打ちや奇襲のためではなかった。

 それは、今モンスターの腕が首の後ろに回されながら、確実を確かにするほどに分かった。

 これは、そんなモンスターではない。

 こちらは先に射撃してるのに、このモンスターは初めましての挨拶をしてからが、始まりなんだ。

 事実、このモンスターはお互いの初めましての挨拶が終わってから、動きに入ったんだ。


  そんな正々堂々たるモンスターの動きをされてもなお、僕はモンスターの動きに対応できなかった。


 「むちぷらぜぇるをしっかりやってからーのーサイドへっどろーっくぅ!」


 なんて、正々堂々たるモンスターだろうか。

 モンスターはちゃんと、技名を叫んだ。


  ヘッドロックをかけられ、脱出できない。


 このゲーム、痛みよりも恐怖感の方が強くなっている。

 痛みは、それ程ではない。

 とにかく恐怖を強く刺激されている。

 

 この場合の対処方法は、ボタン連打だ。

 それは分かる。

 分かっていても、僕はボタン連打が苦手なんだ。

 そのうえ、ゲーム特性で恐怖を強く刺激されていては、ボタン連打もいつも以上に鈍る。

 僕のボタン連打能力では、このモンスターのヘッドロックを抜けられない。


 「dodoシマシタカァー!ボタンマッシングはゲームの基礎デスヨ基礎基礎ー!」


 ボタン連打でのヘッドロックの脱出が間に合わず、ブレーンバスターへの移行が始まる。


 「ソレデハいきマショー。なかよしばーてぃかる・すーぷれっくす」 

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