第35話 台バン

 「不殺の英雄王」

 

 僕は、台バンしていた。

 古角家次期当主であるこの僕が、台バンをしていた。

 コイン落としゲームへの台バンは大罪でありゲーセン出禁行為だ。


  「お客さぁん。台バンは困るよぉ」


  「なに。その台でないって?」


 「はぁぁ。まったく。俺の今までのマイマスター達はコイン落としゲーム機を台バンなんてみっともなく大罪行為をするなんて」


 双口が黙りこくって考え込む。

 

 「やってた気がする」


 青年の発する不愉快な称号に自分を制御できていなかった。

 

 それだけでなく、双口の態度にも腹がたっていた。


 「双口、君はよくもそんなにへらへらと」


 「へらへら?あぁーそう見えるんだ」


 「俺はいつも全力だよ」

 「俺は毎回ベストを尽くしてる」


 「いつもが全力じゃないのは、いつもがベストを尽くしてないのはさ」


 「お前ら生物だろ」


 「あぁぁ?君それ以上は」


 これで怒らない生物がいるだろうか。


 会話が通じないんだ。

 思いが思考が通じないんだ。


 まるで違う生き物なのだ。

 

 いや、その思いは言葉に出そう。


 「ああ、そうか」


 「君達は生物じゃないものな」


 抑えられない。

 

 言わない方がいいと。

 思いもしない方がいいと分かっていても。

 この思いは頭から消える事はなく、言葉にも出る。


 「生物の姿だけ真似したただの物質だもんな」


 「あー。抜いたな」  


 「抜いたよ」

 

 批難されるのは僕の方だろう。

 それでも、この頭の中にある思いは消える事はない。


 「GAME」

 「GAME」


 <ゲームが承認されました>

 

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