34話 英雄王

    

  僕は、我慢できなかった。

 あったばかりの双口に、僕の事を知ったように言われるのは納得がいかなかった。


 「黙ってなさい双口」


 双口が悪いわけじゃない。

 誰が悪いとするなら、オロチが悪い。

 あと、あいつが悪い。


 「あらら。やっこさんそんな感じなの」


 よくある事だ。

 誰もが、誰と誰でも、こんな事は日常茶飯事で、誰もが通る道だ。


 それが、武器男子と生物の異世界転生者はより強まるのかもしれない。

 僕達は、死んで異世界転生してる。


 武器男子は、マイマスターが死ねば記憶も消えるといっても、僕達生物の異世界転生とはまた少し変わるのかもしれない。

 

  「ステータスオープンと言う必要はないよ」 


 青年が口を開く。


 「会話してくれるのは嬉しいよ」


 「それは言う必要ないな」


  ステータスオープンと言う必要がない事はわかってる。

 ステータスが見たいと思えばステータス画面は見れる。

 でも、言いたいじゃないか。

 かっこいいじゃないか。

 僕はこれからもステータスオープンと言います。

 糞メイド達までも僕の事を笑ってた時、僕はとても怒りを隠せませんでした。

 まだ忘れていません。


 「英雄の中の英雄」


 ん。

 青年が、不快な称号を口にする。

 英雄の中の英雄か。

 真にそうだ。

 あいつは英雄の中の英雄だ。

 少女1人守れないのにな。

 

 「英雄王」


 青年が、不快な言葉を続けて連ねる。

 あいつに自覚がなくても、あいつは王でいいだろう。

 あいつこそが英雄王だ。

 あいつのせいで少女が死んでも。


 「英雄筆頭」


 ああ、そうだろう。

 あいつが英雄の中で1番強い。

 1番強いのに。

 その強さで義務を果たさない。

 生物には、義務がある。

 僕は僕の義務を果たす。

 あいつは義務を果たさない。


 あいつあいつあいつあいつ。

 あいつって誰だよ。

 気持ち悪い。

 気持ち悪いんだよ。

 まだ会ったこともないあいつの事を僕は憎んで。

 あいつへの憎しみがこの人生の半分をしめているんじゃないか。

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