第16話 new game

 回転を終えた少年に、画面端に向けて投げられる。

 少年は、咆哮をする。


  舐めプのプレイヤーに対する挑発じゃない。

 それが、ゲームに組み込まれたモーションなんだ。

  

  立ち上がる。

 立ち上がらなきゃ、ダウンしてたら、食らえねぇだろ追撃もよ。


 もう、new game だぜこりゃ。

 さっきまでやってきた少女とのこのゲームのシステムなんて、通用するのか。

 

  少年は、まだ咆哮を続けている。

 ダッシュで、少年の鼻と自キャラの拳がhellow worldな距離に近づく。

 

 ゲームがまったく変わっちまったんだ。

 これっきゃねぇ。

 これじゃなきゃよろめかせられるかどうかも分からない。

 お前に弱パンチ弱キックなんて、通用しない。

 前世の記憶が、そう告げている。


 →↓↘+L1


  「hellow world」


  <しゃがみこんでからの鼻への一点突破どっかーん>


 自キャラが、しゃがみこんでから鼻に一点突破にどっかーんとする。


  少年の鼻に、拳が、直撃する。

  Lボタンだ。

 体重の乗りが違うぜ。

 拳に、少年の鼻を全力で殴った感触がある。


 「気持ちいい」


 それ以外の言葉はなかった。


  流石に、hellow world なら少年もよろめ。


 よろめいているのかこれ。


 少年は咆哮を続けている。




  「hello and goodbye」


  ↓↘→+L1

 コマンドを入力し、技名を叫ぶ。


  <ちょー重いぱーんち>

 

 自キャラが、間違った技名を叫ぶ。

 この技は、hello and goodbyeなんだが。


 自キャラが、少年の鼻に目掛けて重くて遅いパンチを放つ。

 

 しっかりと、少年の鼻に拳が当たる。

 

 またしても、気持ちいい。

 

 なんでよぉ、なんでこんなに気持ちいいんだよぉ。


 おかしくなっちまいそうだよ。


 だめなのぉ。

 これりゃめなのぉぉ。

 んほぉぉ。


 気持ち良すぎて頭馬鹿になっちゃいそうなのぉ。

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