第12話

かといって、得策でもない。

 そうせざるを得なかったのではないだろうか。

 考える時間が欲しかったのか。

 この少女は、一点突破ではないあっちこっちに散らばった技を使う。

 この技をぶっぱしておけばいいというような強い技は持っていないだろう。

 リバースゲージを貯めさせない当て身投げとカウンター技。

 遠距離攻撃魔法。

 散らばった技を使いこなすなら、当然考える時間も長くなる。

 考えるための時間稼ぎとこちらの行動を情報取集するために、

ガードされてリバースゲージを貯めさせるとわかっても取った行動なのではないだろうか。

 

  僕がこの異世界のゲームについて分かり切っていないだけじゃない。

 彼女も、異世界転生者の僕の能力を分かっていない。

 もしかしたら、この世界の常識が通じないチートスキルでも持っているんじゃないかと。

 彼女は僕が彼女を探るよりも僕を探っている。警戒している。


 

  だとしても、次はどうする。 

 このままこちらのリバースゲージをただ貯めさせていくのだろうか。

 少女はこちらのリバースゲージを貯めさせたくないはずだ。

 さすがにまだ同じ手で来る事はない。

 

  じりじりと、接近していく。

 接近を選んだ意味がある。

 彼女は何故、2回の当て身投げの次にカウンター技を選んだ。

 ぎりぎりで顔だけを動かし避ける分リスクは高いのに、威力は当て身投げと大きくは変わらない。

 ボディへの部位ダメージをじわじわ狙おうとしたのか。

 いや、違う。

 リスクに見合わない。

 こちらの行動の違いは、1回目の中パンチへの当て身投げ。

 2回目の強パンチへの当て身投げ。

 3回目のコマンド技ちょー重いぱーんちへのリスクの高いカウンター技。

 彼女の当て身投げはコマンド技には使えないからか。

 当て身投げ特化キャラなら、同じ技でコマンド技も返せただろう。

 半端な技構成の彼女は、当て身投げはコマンド技に使えない。

 これが僕の推測だ。


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