第7話


  左スティックを→に2回入力で、ダッシュ動作に入る。

 前世の経験は、この異世界でも無駄にはなっていない。

 こちらの射程範囲内から、中パンチボタンを押しストレートのような動作で鼻を殴りにいく。

 弱パンチなんかじゃ足りやしねぇ。

 ストレートというのか知れないが、そんなの知りはしない。

 僕は、殴りたいように殴るんだ。


  少女の鼻を殴りに行った腕を捕まれ、投げられた。

 あぁ!?投げられたにしても、痛みが足りねぇ。

 このまま追撃するための当て身投げか。

 

  それにしては、追撃がこない。

 痛みがこない。

 なんだそりゃ。

 なんの策略だ。

  僕は硬直が終わり、自キャラが立ち上がる。

 

  何故、追撃がこなかったんだ。

 

  「足りねぇんだよ、痛みがよぉ!」


 舐めプでこちらを怒らせるための策か。

 だとしても、プレイスタイルは自由だ。

 舐めプも挑発も相手を油断させる行為もなんの問題もない。


  また接近し、L!ボタンを押してみる。

 強パンチだと僕は呼んでいる。


  中パンチより遅いパンチが、少女の鼻に向かっていく。

 やっぱ、鼻ぁ!

 こいつの鼻殴りたい!

 痛がれ!鼻を殴られてなぁ!


  また、腕を捕まれ投げられる。

 さっきと同じだ。

 痛みが足りないし、追撃もこない。


  じゃあ、なんだ。 

 何か理由が意味が目的があるはずだ。


  画面を見ると、僕のリバースゲージが上昇していない。

 当て身投げを2回食らって、HPも減ってはいるのに。


 そうか。追撃しなかったんじゃない。

 できなかったんだ。

 威力も低く追撃もできない当て身投げの変わりに、相手のリバースゲージが上昇しないんだ。 


  ↓↘→+X

 とりあえず、これだ。

 これで何らかの技が出る気がする。

 前世の僕がそう言っている。

 

  <ちょー重いぱーんち>

 自キャラが技の名前を叫び、少女の鼻に向けてパンチを打つ。

 強パンチより遅い。

 これではまた、当身投げを食らってしまうか。



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