第3話 やばい、寝坊してしまった
ゆっくりと瞼が開き、意識が戻っていく。とても、長い夢を見ていた気がする。
現在時刻は午前10時。よし、二度寝しよ…じゃなくて! 午前10時!? 寝坊してしまった! これまで皆勤賞だったのに…! じゃなくて! ええい今は余計なこと考える前に準備して学校へ行かないと!
昨日の勉強会の後、僕は帰ってすぐにお風呂に入り、眠りについた。教えるのを疲れたというのもあるが、一軍の人間と話すのも疲れた。なんと言うか、会話のスピードが速いのだ。言葉のキャッチボールというものがあるが、彼女との会話は、自分が時速90kmで投げた球を時速170kmで返されるようなものだ。これを勉強しながら三時間以上やり続けたら、コミュ障の僕は死んでしまう。
しかし相当疲れが溜まっていたのだろう。まさか寝坊するとは思わなかった。
朝ごはんは何も食べないでいいだろう。とりあえず歯を磨き顔を洗い、制服に着替え準備は完了。今から急いでもどうせ遅刻だ。今日は別の道からゆっくり登校してみるとしようかな…。
とか優雅に言ってる場合じゃねえんだけどなあ…。
起きて準備して家を出たのが10時15分。我ながら最速のタイムで登校開始。寝坊した分の時間足すと大幅ロスだけど…。
ええいどーでもいい、とりあえずいつもの路線に乗って学校の最寄駅を目指す。話はそれからだ…!
………
よし、最寄駅にはついた。学校に直行するのは流石に論外。後々行くことになるけど、今日は他のことを楽しもう。
寄り道できる地点は、二つ。一つ目は総合ショッピングモールで、二つ目は大型ゲームセンター。そういえば僕の好きなコンテンツがアーケードゲーム? とやらとコラボしているらしいからゲームセンターに行こう。
さて、駅から歩いて徒歩数分、中々に大きいビルが見えてきた。全国展開ゲームセンター、
「平日の朝だってのに結構人いるもんだな…。うん? 配信台…? やった事ないゲームだけど、面白そうだしやってみるか」
配信台、どうやら
「待ちたまえ学生くん!!」
「ひゃいっ!?」
待て、と言われたが、かなりの声量でビックリして百円を筐体の隅に落としてしまった。
「あぁ! 学生くん、君はこのゲームの最高の楽しみ方を理解していないのにこのゲームを始めるのかい!?」
「は、初めてのゲームに最高の楽しみ方もクソもないですよ!?」
「む、初めてなのか。これは失敬」
「あ、いえ…。なんかこちらこそすいません…。て言うか、お姉さんうちの学校の人ですか?」
「あぁ、なんだ後輩か。自己紹介をしておこうか。私は川崎 遥だ。ゲーム同好会の部長でもある」
「ゲーム同好会…? そんなのありましたっけ?」
「私が昨日設立した同好会だ。どうやら校則で部活動として認められるのは、部員が六人以上の同好会のことを指すらしい。それで、私は今部員を調達しようとここに来たわけだ」
「いや、今日平日ですしうちの生徒がゲーセンにいる訳…」
「一人見つけたが?」
「なんでッ!?」
「どうやら元々保健室登校? というのをやっていたそうなんだが次第に飽きてきてゲーセンに行ってから登校しているらしい。今は部室に行ってもらっているよ」
「なるほど…。いや、そもそもなぜ先輩がゲーセンにいるんですか?」
「授業がつまらないからだよ。あんな常識をさも自分の知識のように語る授業なんて至極つまらない。まだよくわからない論文を読んでいた方がマシさ」
「でも授業でないと単位取れないですよ…?」
「本当に無理だなーって判断したら自主退学して気ままに農業でもするさ。幸い知識はあるからね」
「なんというか…、自由ですね」
「人生なんてそんなものさ」
なんか、不思議な人だ。コミュ力はありそうだけど、うちのクラスの一軍のようなタイプではない。陽っぽいけど、心の奥底に闇というか、何かを含んでそうな人間。
川崎さんはポッケに手を入れゴソゴソした後に、僕に何か手渡してきた。
「学生くん、これを君にあげよう」
「ありがとうございます…。カード?」
「ゲームのデータを保存するカードだ。これ一枚で、ゲーセンにあるアーケード筐体のうち半数以上のデータを保存できる。しかも、初回プレイ無料のゲームが多い」
「そ、そんなものいただいていいんですか?」
「
「そ、そうですか…。では、ありがたく頂戴いたします」
「そう言ってくれると助かる。そういえば、学生くん。君の名はなんだい?」
「あ、えっと…、丸山 涼です…」
「まるやま、りょう。涼の漢字はなんだい?」
「涼しい、ですね」
「なるほど。中々にいい名前じゃないか。君は爽やかな人間だから、この名前にぴったりだと思うな」
「あ、ありがとうございます…。初めて名前で褒められました」
「そうか。私のことは是非、遥と呼んでくれたまえ。それと、この紙を君にプレゼントしよう」
「あ、ありがとうございます、は、はr、遥先輩…。これは…、メモ用紙ですか?」
「ああ。職員室から我々の部室への行き先が記されたメモ用紙だ。今日の放課後早速遊びにきてくれたまえ」
「えぇっ!? 僕、同好会は入らないですよ!?」
「別に、強制ではないから安心してほしい。と言うか、そのように拒絶されると私が傷付く…」
「あぁ、ごめんなさい! えっとー、行きます! 行くので機嫌直してください!」
「本当かい!? ありがたいねえ! じゃあ、私は一足先に学校へ行くとするよ、また放課後にな、りょう」
「は、はい! 遥せんぱい!」
なんというか、嵐のような人だった。でも、温かみのありそうな人でよかった。
とりあえず、せんぱいから貰ったこのカードで一回プレイしてみよう。
結局、配信台で初心者の下手プレイかましたことは言わなくてもわかるだろう。
作者のひとこと
新キャラ、出せました。良き良きなのです。でも個人的には何かつまらない展開になってしまったかなーとか思いつつでございます。
話が変わるのですが、涼くんと遥せんぱいは、モデルというか、「こんな感じのキャラがいいな〜」ってお手本にしたキャラがいます。まずは涼くんから。
涼くんは、【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】の、ベル・クラネルをモデルにしています。なんかオタオタしている系のキャラを描きたかったので、こんな感じになりました。でも、どちらかと言うと、ベルくんより、ベルくんの中の人、松岡
さて、続いては今話初登場の遥せんぱいですが、わかっている人もいるのではないでしょうか? 最近流行りの、そう。【ウマ娘 プリティーダービー】の、アグネスタキオンをモチーフにしています。マッドサイエンティストではなく、ゲームを心より愛している普通の人間です。最初、遥のイメージとしては、同級生の物静かな女の子にしようとしていたのですが、私が執筆中に聞いているウマ娘のプレイリストから、競走馬としての最推し、テイエムオペラオーの歌が流れた時に思いつきました。
「タキオンとオペラオーのハーフみたいなキャラで描きてえ…」と。
結局、オペラオー要素は0に等しくなってはいますが、後々ナルシストっぽい言動を口にするかもしれません。運命は神のみぞ知るっていうね。
さて、全然ひとことではなくなってしまいましたが、ここまで呼んでいただいた方に本当に感謝です。ありがとうございます。それでは、また次回で。
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