天使の舌

菫野

天使の舌

天使の舌なのかも知れぬ梔子を胡瓜と和えて食べてしまひぬ


わがなづき異星の炭素含みつつ素数が無限にあること思ふ


海のいづこかでジンベエザメはいま老いた銀河のやうに死にゆく


いつか死ぬことを知つた日わが手より神鹿は鹿せんべい奪ひき


いと小さき母の子宮を無造作に医師は置きたりわたしの前に


傷つくのは一瞬のこと夏の緋をあつめてカンナゆふぐれに立つ


いろくづを隠す指輪はいかが? とぞデイケアの老女われに云ひける


この白い部屋だけ残しみな消えてしまつたのかも 無音なるとき


暴力のやうに触れくる音楽も量子フォノンであればふとあはれなり


十万本の髪洗ふとき丸くなるそびら宇宙を背負ふごとくに

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天使の舌 菫野 @ayagonmail

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