第2話 視線の流れについて

これは調べたほうが手っ取り早いのですが、人間がウェブサイトや書籍など、情報の多いものを見るときの人の視線の動きはある程度決まっているといいます。「デザイン 視線誘導」などで調べればわかり易く解説しているサイトがあるので気になった人はそちらも調べてみてください。


画面いっぱいの情報を見たとき、人はどういった順番で見るのでしょうか。

全体に均一に情報が並んでいる場合、左上から右下へ見ていく、といった傾向があります。Windowsの窓のマークのように全体を4分割したとき、右上と左下の情報はちょっと見るくらいだといいます。つまり、デザインの話にはなってしまいますが、重要な情報は左上と右下に配置されていることが多いです。

ではランダムに情報が並んでいる場合は?この場合、人は全体を「Z」の字を書くような順で見ていくようです。左上→右上→左下→右下といった具合にです。

カクヨムのPC版のサイトを開くと、一番左上にサイトロゴが、その下に書籍化作品などが並び、中央下にかけて注目作品、そして右下にランキングと、緩やかな逆S字に沿って作品情報が並んでいます。右上にはお知らせ、左下にはサーチ欄と、重要度の低い情報が並んでいます。このことから、カクヨムのサイトは「斜め」の法則と「Z字」の法則の合わせ技のようにデザインされているとわかります。どうでしょう、確かにサイトをさっと眺めて引っかかるような部分はないように思えます。よくできてますね。

その他にも「大きいものから見る」「同じ形や色をたどる」「見た情報の近くのものを見る」といった性質もあります。


さて少し脱線しましたが今回の目標は、「これらの視線の法則性に則った順番で情景描写をすれば、イメージしやすくなる」説の検証です。

次の例文を用意しました。主人公がある部屋に入ったシーンです。


「その部屋の中央には小さな石油ストーブが置かれていた。向かって右の壁沿いには本棚に入り切らなかったであろう本が壁の前に積まれている。天井には小洒落た照明がぶら下がり、広い部屋全体を照らしている。ストーブの手前には白いテーブルがある。左の壁には仕事用の机と椅子が壁を向いていて、その上に鹿の頭の剥製が掛けられている。奥の壁一面に本棚がある。」


どうでしょうか。かなりわかりにくい描写だったと思います。おそらく、今私の想像している部屋の様子と皆さんが上の文を読んで想像した部屋の様子は違うでしょう。

私の文章力は一旦棚に上げて、この文には以下のような問題点があると考えられます。

・どの要素が重要かわからない

・部屋の大きさがわからない

・視線が動き回って忙しい

今回は視線の回なので、その他細かい指摘は省きます。上の例文をわかりやすくするには、

・重要なものを目立たせて

・部屋のサイズ感を最初に把握させて

・そのうえで視線の流れを意識する

ということが必要になります。これらを意識して例文を書き直します。


「部屋は学校の教室くらいの大きさで、それに比べてものが少なく、また天井の小洒落た照明にぼんやり照らされて薄暗い。寂しい部屋だ。鹿の頭の剥製が飾られた左側の壁に向かって仕事用の机と椅子が据えられ、向かって机の奥、向こう側の壁は一面本棚で、ふと右の壁を見ると、本棚に入り切らなかったであろう本が壁沿いにいくつも積み重ねられている。部屋の中央には部屋に比べ小さすぎるストーブがあり、その前には白いテーブルがあり、白い天板が照明を反射している。」


大分脚色しましたが、これだと視線の流れもある程度まとまり、かつ「白いテーブル」が重要であるとわかるのではないでしょうか。


今回の試みをまとめます。

・人間の視線の流れを学んで自然な視線移動をする情景描写をしよう

・優先順位を意識して視線誘導を心がけよう


拙い文章にはなりましたが、今回はここまでにします。次回はおそらく「平面作品で使われる構図を参考にして描写の順番をレベルアップ」的な内容になると思います。

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