第11話 『名を奪われ、忘れ去られた者』
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第11話 『名を奪われ、忘れ去られた者』
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目を閉じていても闇なら、目を開いていても闇。そんな暗黒が支配する空間で俺はただ漂っていた。
あれからどれほどの時間が経過したか分からない。俺に分かることは、身動きもできずただ漂っているだけということだ。
あのクズ神たちによって、俺はこの闇しかない空間に飛ばされてしまった。これが廃棄ということなのだろうか。
どれほどの広さがあるか分からない。
無限なのかもしれないし、一メートル先に壁があるかもしれない。どちらにしても、体を自由に動かせないため、何もできない。
このままこの闇の空間で、朽ちていくのだろうか。
いや待て、そもそも俺は生きているのだろうか?
あのクズ神たちは俺を生きたままあの場所に呼んだ。帰すことができないのは、地球の神に怒られるのが嫌ていう子供のような理由だ。
では、今の俺の状態はなんなのか? 生きているなら朽ちるかもしれない。でも、その前に死があるはずだけど、この空間には死があるのだろうか?
あー、考えていたら、わけが分からなくなってきた。思考を巡らせるだけ虚しい。
あれからどれだけの時間が過ぎたのか。気が遠くなるような時間が流れたように思える。
お腹は空いたが、空腹で餓死する気配はない。
無限とも思える時間と宇宙のような無重力の中で自由に体を動かすこともできず、ただあのクズ神やクラスメイトたちのクズっぷりに毒づいて時間を潰している。
悪態をついてもついても次から次にでてくる。おそらく俺はこの闇の世界で気が狂っていくのだろう……。
しかし、あのクズ神たちめ、俺をこんなところに廃棄しやがって、とんでもねぇヤツらだ。
この空間を出たら、ぶっ飛ばしてやるからな!
【神たちを見返したいか?】
っ!?
な、なんだ? 誰かいるのか?
ハハハ、いるわけないか。
とうとう幻聴が聞こえるようになってきたんだな。
そろそろ気が狂うのだろう。
【まだ気が狂ったわけではない】
え!? それじゃあ、この声は……。
貴方は誰ですか!?
俺をここから出してください!
【我は無駄な答弁をする気はない。端的に答えろ。あいつらを見返したくはないか?】
端的……。
もちろん、見返したいに決まっている!
したい! 俺はあいつらに意趣返しをし、見返してやりたい!
【相手は仮にも神だ。お前がやりたいことは簡単じゃない。まさに茨の道だ。それでもやるか?】
もちろんだ! あいつらを見返せるなら、俺はなんだってする!
【我がお前に与えてやれるのは、新たな生だが、過酷な環境でも生き残れるかもしれないわずかな力しか与えられぬ。それでもやるか?】
新たな生……転生したら、あいつらに意趣返しできるのか?
【それができるかは、お前次第だ。そもそも見返す前に死なない保証はない】
俺次第……。
【最初はそれなりに過酷な環境に転生させることになる。それでもやるか?】
どんな過酷なことだって、死んだつもりでやれば生きていける。今までだって何度死ぬかと思ったことか。それならこれからもそうだって、変わらない。だから、俺はやる! お願いだ、転生させてくれ!
【転生したら、我のために働いてもらうことになるぞ】
あんたのために働く……。それであいつらに見返すことができるのか?
【先ほども言ったが、それはお前次第だ】
俺次第なら問題ない。何度でも言うが、あいつらを見返すためなら、どんなことも我慢できる!
【ならば我のために働くか?】
働く! どんな汚れ仕事だろうと、あんたのために、いや、あなた様のために俺は働くと誓う!
【それなら、転生させよう】
ありがとうございます! でも、俺は何をすればいいのですか?
【転生したらまずはレベルを上げろ】
レベルを上げですね。分かりました。どんなに困難でもレベルを上げます!
【レベルが百を超えたら、我の元にくるがいい】
あなた様はどこにいるのでしょうか?
【神殿だ。神殿にいけば分かるだろう】
分かりました。レベルを百以上にし、神殿にいきます。
あなた様の名前を聞いてもいいですか。
【我は『名を奪われ、忘れ去られた者』である】
『名を奪われ、忘れ去られた者』
それが目印かヒントなのですね。
【転生直後はレベルも低く苦しいが、泥水をすすってでも生きるのだぞ】
はい! どんな苦難に遭遇しても、俺は生き抜きます。無様な姿を曝そうとも、あいつらをぶっ飛ばすまでは死にません!
【よし、お前を、トーマを転生させる】
はい。よろしくお願いします。
その言葉を最後に、俺の意識が途切れた。
目覚めると知らない天井が見えた。
どうやら俺は赤ん坊に転生したようだ。
この小さく可愛い手が、赤子になった何よりの証拠だ。
しかし、赤ん坊か。レベルを上げるにしても、赤ん坊ではさすがに難しいか。
とりあえず、赤子でもできること……早く立ち上がり、自力で動き回れるようになるようにするか。
寝返りもままならない体を動かしていく。
腕を上げ下げした時、左手の甲に何か不思議な文様があるのが見えた。タトゥー? タトゥーとは違う、痣か?
そこであの赤毛のクズ神シャイリーがやっていたことを思い出した。もしかしたら、ステータスを見ることができるのではと。
「あうあうあーう(ステータスオープン)」
ホログラムが立ち上がる。
「ああう(おおお!)」
= ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ =
【個体名】 トーマ
【種 族】
【情 報】 男 0歳 健康
【称 号】 ×××の使徒
【ランク】 G
【属 性】 神
【加 護】 変換の神(未覚醒)
【レベル】 1
【スキル】 変換・レベル1
【ライフ】 3(15)
【スタミナ】 4(20)
【マ ナ】 5(25)
= ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ =
「あ、あう(で、出た)」
種族がすごいな。俺、
そんなことを考えていると、
【
説明が出るのか!?
しかし、地上種ってもしかして、ヒューマンのことか?
【地上種 : 地上に暮らす種族のこと ヒューマン、獣人、エルフ、ドワーフ、ゴブリン、オークなど多種多様な種が存在する】
な、なるほど。この説明からすると、天上種みたいな種族もいるのかな?
「………」
答えはないか。どうやら、俺のステータスに関することしか説明してくれないようだ。
だったらランクGはどういう意味なのか? 最低はFじゃないの? あいつらがそう言っていたよ?
【ランク : ランクは下からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、H、L、Gがある。Hは英雄級、Lは伝説級、Gは神級】
俺、神級!
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閑話はここまでです。
次話からは、7話の続きとなります。
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