第40話「心臓」

早く終われって

いつも命を傷つけた

それなのに

平然と心臓は動いて

この僕を分かってるのかって

やけになるほど

えぐっても


やっぱり僕は痛くて手が止まる

この自制心が何かって

問い詰めるけど

ほんとに生きてて楽しいかって

そう何度も問うけど


命は常に前向きで

どうしようもないほど

息が出るんだ


不条理と最悪の中で

暗闇と鬱闇の中で


断崖絶壁に立つ覚悟ほどの

狂おしい自分なのに


どうして最後の最後で

立ち止まってしまうんだ


一体何が僕をこの世界に縛り付けてるのかと

そう何度も心をえぐっても


やっぱり生きたいという

その意味わからない

心臓だけが音を立て


僕なんて無関係に

命を刻むから


一生死ねないで

無様に笑われて

傷だけがつのっていく


ほんとに何がしたいんだよ

こんなのってないだろ


俺を分かってるなら

早くこんな命

消しちゃえよって


そう、うなるけど


お前ってやつは本当に

生きたいんだなってほど

鼓動を刻むんだな


わかったよ

乗せられてやるから


せいぜい俺に未来を見せてくれ


なんてな


最悪な俺の心臓よ


ともに生きてともに死のう


どうせ最後はお前だって止まるんだろ


なら俺はそれまで

そばにいてやる


な、心臓さん。

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