第16話「次は笑って帰ってきます」

不自然なまでに

空は青く

この宇宙ほどの中から

どれほど清いかと

海に聞いたが


それは平行に並ぶ

地平の轍で

もう僕には割り切れなかった


世界の映す声が

時に残酷なほど

差別を生み


宇宙ほどの中からやはり

ここだけが生きているなど

それほど狭いものかと

どこか審議を醸すが


それさえ月にしか行けない僕らでは

知る由もなく

ただこの見ている世界だけがすべてに変わりなく


ならばあの宇宙は何を見ていて

人はまたなぜ宇宙より小さいかと


きっと大きな流れのごく一部であり

その中でここまで本気になっているのは人だけではないだろうか


私はすべてを断ち切ってきた

それでも自身だけは死ねずじまいだった


そうしてやはり誰もが命を遵守し

何かを守っている


それでもその一切を切り捨てて

宇宙の藻屑となった僕は


この荒野に未来を見てしまった


さほど不思議な事ではないかもしれない

人は宇宙も知れずまた、隣の事情すら知らない


それなのにここまで千年規模で永らえた

それは僕が気づきもしない

人の何かかがここまで続いたからだ


愛か

愛といったか


それでも僕はそれを知らない

単語だけを覚えている


でも初めは歓迎されうぶ声を上げたか

ああ思い出せない


そうかあの日から

人は生きてくるものをめでたいと

誰であっても歓迎したか


そうだった

こんな私でも歓迎された


これが人の強さか

みんな信じてたんだ


未来を

生きてくれることを望んでいたんだ

初めからそうだったか


なんだか今日は空が淡いな

ああ、なんだこれはなんだ


少しぬくい雫が

ああ、愛の残り火か


すまない母さん父さん


僕を歓迎してくれたのに

未来を示してくれたのに


こんなにも今は悲惨だよ

こんなにも体温が冷たいよ


すまない

本当にすまない


ありがとう今まで

本当にありがとう


人はやっぱりすごいんだな


ああ、すごい

すごかったな


まだ叶うならあの日に戻って

言葉を交わせればよかった


冷たいな

ああ、


ああ冷たいよ


ごめんなさい

ごめんなさい


また生まれてこれるなら

またあなたの場所で


次は笑って見せます


では


さよなら。

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