第10話「傷もなかれと言わずれば」

全てはあの日始まった

この不実な憐憫は

ただ僕の飼う闇が育ったからだ

ああ、なぜ一人になるか


それはきっとどこかで

何かを嫌っているからだ

自分が落とし込まれたと

そう言ってるが

きっとそう

自分にも重責はあるだろう


この一口に孤独と言えよう

この感情的堆積は

ひとえに周りのせいにはできない

誰しも後ろめたい面々があり

その口実を持つに至るも

きっとまた自身の豪の深さであろう


ただ純粋に生きれば

痛みは痛みでしかなく

それ以上の何者でもない

それを大々的に示唆するのも

自身のプライドが高すぎるあまりであると

どこかそう思えた


失うことが怖くなければ

何にも感化されず

傷つかないはずだ


全てを見越して生きれば

いじめなど容易い事象だ

しかし痛むのは

自身を可愛がりすぎているからだ


そうである

そうなのだ


もう生きるために周りから直そうなどと

甘いことは言わない

私は自身を砕くことで

全ての痛みを緩和していこう


悪と対峙したあまりに

悪が牙をむくのであり

無関心であれば

全ては関係なく消え去る


だから私は今日

この今日から

全てを受け入れ

全てに抵抗しない

大きな器を持とうと決した


ああそうか

これこそ真理だ

これが背水の陣だ


絶壁になにもいとわず

飛び込む

そうである

これぞ眼前に広がる

あくなき荒野


これであったのだ

これでいいのだ


もう悟ったのだ

闇をはらむのではなく

闇を消すほどの無意識を目覚めさせればいいと


ああ、なんとなんと

私は今


高揚している

実にうれしく傷ついている


これぞ私でいい

憧憬などもない

痛みさえ感じない


無関心とはそう

関与しない

気づきもしない

解決策なのだ


ああ、世界よ

かかってくるがいい

これより先は

私さえどうだっていい


故に罵声を浴びせよ

故に怒号を浴びせよ

なに、私は何一つ感じない


故に主らに罪もなく

至って平和であろう


ああ、うれしきことかな

実に実に・・・

うれしきことのはずだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る