第6話「嘘のような本音」

全貌を知り

事を書くに至るは

何も変わっていないからだ

私は私であり

何を知りえたところで

観測的規範が身に染みついている


つまりは動じない

つまりは正したい自分も

正すべき自分も

何処にもないのだ


この無知はいささか

疑念を呼ぶが

しかして本来の私はそれでも

孤独を引きおこすだろう


ああ、そうである

この完全なる無知無欲

これこそ我が支柱である


無個性であれば

行く行くは我が身に落ちるだろう

されど若者にどこか畏怖を啓発するが


しかしてその啓示さえ

青二才の私では捨てられるはずだ


事実歴史から得た

各々の経緯など

誰もが間違えるという事だ

私さえ、その一手に今は落ちていて


またそうしてそれを事もなげに

説いては

ただの詭弁だと

毒牙の道を言っているに過ぎない


世界とはそうして

誰もが黒い腹を抱え

行く行くは全時代的に

強弁される


だがそれもまた一介の言葉であり事象

全てのあらましは決した所で無縁であり


この出会いさえただの言葉であり

無縁に終わることは分かっている


それでも存在を示すものあらば

それは嬉しき事だろう


しかして某日

私は孤独でいることに変わりなく

ただそれでも

何か分かり合えたとそうどこか


わかってほしいと

まがいなりにも思ってしまう


これはきっと口にしてはいけない事

だけど

それでもいいなら


ただそっと付き合って欲しい

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