第3話「せめて映画のように」

理想像に浮かされる事数年

しかしてそこに募るは思いばかり

この一見して過大視される理想とは

あまり余る弊害もまた多い


なぜ問いにして

ここで大々的に述べるかは

以前の話で汲み取っているはずだ


本質は自身にあり

ならば理想はどこにある

確かに確実的なことを言えば

現実主義こそ理想形である


夢やおもちゃに時を労せば

その分笑えるが

未来は立ち行かなくなる


そこで社会的

資金と遊びの塩梅を感慨うり


その途中で挫折へ落ちるもまたしかり

それが私であり


世とは釣り合いのない者には向かない

いかにして一生分の幸せを買えるかと

陰謀論を嚙ませるが


そこに実直な答えはない

せめて曲がり曲がった欲望だけだろう


この老輩は

この年にして

全てを諦めている


だが理想を抱き

その半面で傷を増やす

これが期待的な喪失感であり

はたまた、光からの陰である


つまりは欲することに起因して

全ては回り


無論、転じればどちらかには転ぶ

理想を目掛け一心に身を投ずるもの

はたまた理想を見て、その一時、夢を見るもの


私は、後者であろう

夢は見る分には楽しい

しかし叶えるとなれば

話は違うだろう


そこに対するプロセスこそ

確かに美談であり青春譚であるが

この身で行える努力など

雀の涙ほどもない


なぜならば

届かないと高を括ってしまうからだ

だから映画のように

理想に触れて


ただ幸せを願い

その場限りでその理想と別れる

実に刹那的で

また失うものも少ない


私はそう永遠の観測者なのだ


それでもいい

それでも人は生きている

そして多くの理想を見て別れれば

それもまた美徳と見える


ああ、努力の向かない

私がせめて映画的希釈で幸を得れる

この世界にせめて感謝し


また今日、この日とともに


全てを忘れ、手付かずの理想に手をかけるのだ。

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