♡N→¿T?←R♡・・・5 因縁のASMR対決
昼休み。
いつもの様に俺達は教室で昼食を食べていた・・・
「ASMR(エーエスエムアール)?それって何だよ?」
突然、鉄平が意味の分からない単語を呟いた。
「Autonomous Sensory Meridian Response 自律的感覚絶頂反応
簡単に言うと、心地良くなれる様な音や声など・・・かな」
横から雪人が解説する。
「そう!それが今、大人気なんだ」
腕を組み、うんうんと目を瞑りながら頷く鉄平。
「それがどうかしたのか?」
鉄平は回りくどい。
直接言えばいい事もこうしてひとつずつ印象に刻ませる様な物言いをして来る時があるのだ。
「これ、ちょっと聴いてみ?」
そう言うと鉄平はイヤホンの左側を渡して来た。
「・・・・・あぁ、何て言うのか確かにほわほわとした様な?」
「凄いんだぜ?このASMRって技術を駆使した音声の作品が色々と出ていただな・・・ほら、これなんかどうだ?」
鉄平が再生しているものを変えると・・・
「ちょっ!おまっ、これはダメだろっ!?」
突然、耳元で息を吹き掛ける様なシチュエーションの音声が流れて来た。
「アホっ!こんなもんここで聴かせんじゃねぇっ!」
俺は顔を真っ赤にさせて立ち上がると鉄平に怒鳴り付けた。
「こんなトコで興奮してたら後を聴かせられねぇな!」
真面目な顔をして俺を見上げて鉄平は言い放つ。
「聴きたかねぇよ!って言うかこんなもの聴いてないで授業真面目に受けろっての!」
「鉄平、回りくどいのは良くないぞ?君はこの後の話を先に伝えなければいけないはずだぞ?」
黙々と目の前の弁当を口にしながら説明する雪人。
「おぉっと、そうだった!実はな、お前何も聞いてない?」
「鉄平?雪人の言っている話ちゃんと聞いてたか?
お前はいつも話が回りくどい。主語を先に言え!」
「その様子だとまだ聞いてないみたいだな!
実は、何を隠そうあの一之瀬美亜ちゃんとお前の彼女が所属している事務所が、今回二人を音声作品に出演させると言う話が浮上したみたいなんだ!」
「それが、ASMRと関係あるのか?」
「あぁ!その音声がギリR18に被らない際どい内容のやつらしい!」
まぁ、高校生なのに18禁作品なんかに出せないよな・・・
「だが、安心してくれたまえ!実用性十分だそうだ!(メーカー発表)」
(鉄平、色々とツッコミどころが多いが、メーカーって何だよ?)
「ほら、ここ読んでみろよ?」
鉄平がある雑誌を俺に渡して来た。
そこには・・・
「あの大人気グラビアアイドル2人がタッグを組み、アナタの欲望を叶えます。
ASMR音声作品、左右からあらゆる言葉を囁きアナタの脳を甘く蕩けさせます。
発売まで楽しみにお待ち下さいませ・・・って、最近のグラビアアイドルは色々と大変なんだな?」
俺は、鉄平に言われた部分を読み上げてみた。
だが、鉄平は俺の反応が気に食わない様子である。
「お前って奴は、とんだ薄情者だぞ!?大切な彼女やクラスメイトがこんな如何わしいもので世間のあらゆる男子達を篭絡しようとしてるんだぞ!?」
「篭絡って・・・考え過ぎだって。あくまで演技だろ?それに、高校生にそこまで際どいセリフを本当に言わせるはずが・・・」
そこまで俺が口をした瞬間、俺の左右の耳元に吐息が吹き掛けられると・・・
「こうして、息を吹き掛けられてエッチな言葉を囁かれると悦ぶんだって♡」
「鷹矢はそんな事ないとは思うけれど、くれぐれもあっち(菜々子ちゃん)じゃなくて、私・・・でね?」
「うわっ!!と、突然何してんだよっ!?」
びっくりした俺は慌てて立ち上がると二人を交互に見た。
「鷹矢ぁぁぁぁぁ~っ!!ナマでそんな事されて何て、何てウラヤマけしからん奴だ!!!」
(鉄平はズレている。
俺は何も悪い事はしていないぞ?
だが、何故グラビアアイドルがこんな仕事を・・・)
確かに菜々子も莉子も声自体は昔から綺麗で雰囲気はあるかもしれない。
「グラビアアイドルも色々と大変なんだね。それで、もう収録とかしたの?」
雪人が質問する。
「うん。もう一通りは終わったよ。後はスタッフさんの作業とか宣伝とか入れて発売を待つ流れかな♪」
笑顔で雪人に説明する菜々子は何処か裏表のある美少女と言った感じに思え、少し俺は複雑な心境になってしまう。
菜々子は、美亜になるとこうして人当たりが良く、柔らかい印象を表面に出す。
「まぁ、莉子が出てるなら俺も・・・」
ボソッと俺は呟いた。
「安心して?私は鷹矢から離れたりしないから」
そっと耳元で莉子は囁く。
「・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”助けて”
ん?
”助けて・・・”
誰だ?
”お義兄ちゃん・・・”
菜々子?菜々子なのか?
”鷹矢・・・助けて、鷹矢・・・”
「菜々子?菜々子なのか!?」
”早く・・・しなきゃ・・・もう・・・”
ガバッ!!!
「菜々子ぉぉぉぉぉぉぉぉ~!!!・・・オゲッ!!お、重い・・・
って菜々子ぉぉぉぉぉぉぉぉ~!!!俺の腹の上に乗って何やってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!!!!」
「あっ、苦しかった?ごめんごめん、これ兄妹の一種のイベントだよね?
朝、お越しに来てくれる可愛い妹がお兄ちゃんのお腹の上に乗って進展する物語~♡」
「そんなオタク染みた話など俺は知らん!それに、お前の年齢でこんな事されたら俺が押し潰されてイベントどころかイベント終了のお知らせだ!」
菜々子はいつもこうして訳の分からない事を俺に仕掛けて来るのだが、この一連の行為の真相が本当に分からない。
これが何かしらのメッセージだと言うのであれば、俺はこれらの行為の真相を掴み取る必要性があるだろう。
だが・・・
「俺の下半身に座って腰をグラインドさせながらアヘ顔晒している今のお前は無性に見苦しい・・・頼むから早くどいてくれ?それに、重い!」
「ひっど~い!マゾの男子はこう言う顔が大好きって聞いたよ?
それに、なんだかんだ言いながら反応してるよね?こ・・・こ♡」
男の性、いやこれは朝だからに違いない!
「なぁ、菜々子?お前俺に一体何を隠している?」
真面目に聞いてみる事にした。
「お前があの時の男に寝取られた時からここへ帰って来て、俺の通っている学校にまで転入して来た。
菜々子は、寝取った男に捨てられたとか言っていたけど、本当は何かあったんじゃないのか?」
つい今しがた見ていた夢の事が気になってしまった。
それに、会長の言っていた事や不自然な事が多過ぎる。
「・・・・・・・隠していたら何?」
「え?・・・」
「隠し事なんて家族にだってあるじゃない!
私がここを出てからどうなったかなんて一々言わなきゃなんない事なの?」
無茶苦茶過ぎる。
人の事を捨てておいた挙句、自分から迫って来ておいてよくその様なセリフを吐けるものだ!
だが、そんな薄情なセリフを吐いている時の菜々子の表情は何処か安堵感の様な、抵抗している様には見えないものが俺には見える気がした。
「鷹矢は、初めてオ〇ニーした事をパパやママに言える?私は言えない!
そんな事を皆報告するものなの?しないよね?だったら私のヴァージンが奪われたあの日の事なんてとても言える訳ない!」
「はぁぁぁ~・・・」
俺はあきれる様に溜息を漏らした。
「ダメだよ?溜息は幸せが逃げちゃうから。漏らすならコッチ♡」
「菜々子~・・・」
「ほら、ピクピクして可愛い♡もっと突いたら漏れちゃうかな?白い・・・」
「早く・・・早く出ていけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ったく、学校にいる時の一之瀬美亜みたいな感じだったらまだいいのだが・・・」
「また菜々子ちゃんに何かされたの?」
登校中、またしても俺は深い溜息を吐いて愚痴を呟いてしまう。
莉子は苦笑いしながら俺を心配する。
「あぁ、毎日なんだよ。あのキャラ属性を俺は知らん。
菜々子はあんなキャラじゃなかったし、いつも肝心な事を聞こうとすると話をはぐらかされてしまう・・・」
「そっか・・・きっと菜々子ちゃんにも色々とあるんじゃない?
まぁ、菜々子ちゃんが鷹矢を捨てた事に間違いは無いみたいだけれど、
家族としてなら・・・とか切り替えて考えてみるのも必要なんじゃないかな?」
確かに莉子が言っている事も一理あるだろう。
だが、主に性的に絡んで来る菜々子の本性が俺は気になっていた。
生徒会室
「ふむ、やはりそう言う裏があったのか・・・
だが、確固たる証拠が見付からないと・・・
私が直接出向いた時に少し違和感を覚えたけれど、
恐らく、これは罠・・・だと言う事だね。
すまないが、引き続き周辺調査を継続して欲しい。
これは、彼の為にも必要な事だと考えている。
このまま不自然な状態を放置しておくべきではないから。
あぁ、まだ直接依頼は無いよ。ただ、私は許せない。
あれだけ仲良く、垣根を越える程愛し合っていた二人が
あの様な末路を辿っているのだと考えると決して・・・」
夜
「はい、色々と申し訳ありませんでした・・・
もう少し、彼を・・・挑発してみたいと思います・・・
えぇ、一応私に欲情は抱いてくれていると思います。
ですが・・・やっぱり・・・い、いえ、抵抗は・・・無い・・・です。
ご褒美?・・・ですか?え、えぇ、嬉しい・・・です。
早く・・・エッチなご褒美・・・頂ける様に私、頑張ります・・・
頑張って・・・彼を私に夢中にさせて・・・そして・・・
あの・・・はい、分かりました。それなら安心しました。
いえ、私の心はもう・・・あなたの・・・あなた様だけのものですから・・・」
隣の菜々子の部屋から話声が聞こえて来た。
多分、電話だろうと思う。
しっかりとは聞こえないが一体何を話しているんだろう?
仕事の話かと思ったが、少し悲しそうに聞こえて来た。
友達と電話でもしているんだろう・・・
そう思い俺は床へ就いた。
「鷹矢・・・ごめんね。鷹矢を早く堕とさなきゃいけないの。
だから、いっぱいエッチな悪戯をして早く私の方へ振り向く様にしちゃうから・・・」
私は、毎晩鷹矢の部屋へ侵入する。
鍵は何かあるといけないから互いに閉める事をせず、出入りが自由だ。
「私・・・こんな事ばかりして鷹矢に絶対嫌われてるよね?
鷹矢は私が鷹矢を捨てたって思ってるから絶対に嫌っている・・・
はぁ~・・・今日もしなきゃダメか。
出来るならこんな事しないで、鷹矢の気持ちを再び私に振り向かせたいけれど・・・」
こんな事になるなら、付き合い始めた時に思い切って鷹矢と身体でも結ばれたかった・・・
「今日も鷹矢は・・・私が触ると勃起しちゃうんだね。
この手が私じゃなくて莉子ちゃんの手だったらどうなるのかな?
こうして、私のお口じゃなくて莉子ちゃんのお口だったら・・・」
こんな事は、本来ならば結ばれた熱々のカップル同士がする事なのだろう。
けれど、今の私達は熱々のカップルでは無く、薄情な元カノが再び元カレの家に帰って来て精を貪る・・・
「まるでサキュバスってやつか・・・」
私は、彼の精を搾り取るとティッシュで口元を拭うと優しい彼の寝顔を見つめてから、月の方を向いた。
「お願い鷹矢・・・早く・・・堕ちて?」
私は一粒の涙を零した。
その涙に月の光が照らし、鷹矢の口元へ侵入する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おぃ、起きろ!」
「ん・・・後5分だけ・・・」
「遅刻するだろ!早く起きろ」
今日も菜々子は俺の寝床へ侵入していた・・・
「お前な・・・極端過ぎんだろ?俺を襲ってたり隣で俺より遅くまで寝てたり・・・」
「昨日は色々と大変だったんだよ・・・鷹矢ってば中々発射してくれなくて・・・」
「おっ!おぃっ、お前また俺の!?」
「毎日飲んでるよ・・・だからもう鷹矢の味は分かっちゃった♡」
また、妙な下ネタに走るよな・・・
一体、菜々子の本性は何を想って、何を考えているのやら・・・
「俺達はまだ高校生なんだ!それに、俺には付き合っている彼女がいるって言っているだろ!?いい加減に俺の部屋へ来て下らない事するのはもう止めろっ!!」
少し言い方が強かったのだろうか。
菜々子は黙って俯いたまま詫びを入れて来た。
その長い髪の毛で隠れた顔の頬だけが露わになっていて、涙を伝うのがはっきりと分かった。
「ごめん・・・なさい・・・もう・・・しないから・・・許して・・・」
俺が本気で怒った事が伝わったのだろうか?
菜々子はゆっくりとベッドから起き上がると自室へと戻って行った。
「な、何だよ!?あれだけ抵抗しても積極的にやって来ていた癖に・・・」
その日の日中、菜々子は学校でも俺には関わって来なかった。
黙って大人しく席に座っているかと思えば、俺以外の相手にはいつもの様に接していた。
きっと、気まずくなってしまったのだろう。
「鷹矢君?ちょっといいかい?」
放課後に入った瞬間、梨美夜さんが教室に来て声を掛けて来た。
莉子には先に帰ってもらう様にした。
菜々子も帰った事を確認すると、俺達は屋上へ向かった。
「菜々子が!?・・・それは、事実なんですか?」
彼女が菜々子の事について調べていたらしく、その中でひとつの真相が浮き上がって来たという。
「キミはあの日、当時彼女が通っていた学校付近まで出向き、菜々子君とある男がイチャイチャしている所を目撃した・・・そして周囲にいた生徒に詳細を聞いたと言っていたね?」
梨美夜さんは、俺が当時菜々子の学校近くで起きた事について触れて来た。
「えぇ、そうですが、あれが何か!?」
「どうも、そこで菜々子君に声を掛けた男は、雇われた人物だったみたいなんだ」
雇われた?・・・って一体どう言う意味だ?
「あの・・・どうしてそれがフェイクだと分かったんですか?」
「実は、菜々子君が通っていた学校には私の旧友が在籍していてね、
ちょっとした縁なのだろうか。折角だからあっちであった事を教えて欲しいとお願いしているんだ」
「そ、そうですか・・・ですが、すみませんがもう止めて頂けないでしょうか?」
俺は断った。
折角真相が見えて来る切っ掛けに繋がっている。
だが、こう言う事を他人がどうこうするのはおかしい気がしている。
「キミは、これでいいのかい?大好きだった彼女が何処の馬の骨とも知れん腐った人間なんかに奪われてしまった挙句、苦しんでいる菜々子君を助けもせず、ただ自分は捨てられたと悔いてお終い・・・」
「あ、貴女に俺の何が分かるって言うんだ!俺がどれだけ苦しんで来たのか貴女に分かるって言うのか!?」
分かっている。梨美夜さんは俺の為に真実を明かそうとしてくれている。
だが、この問題は本人同士の問題だ!
「こう見えて、私にも数年前に頼れる彼氏がいたんだよ」
梨美夜さんは窓を見上げると透き通った瞳を閉じゆっくりと語り出す。
「今の私は、この様な感じだけれど元々もう少し雰囲気が弱い感じだった。
その頃、ある男子生徒に告白されて私も彼には淡い恋心を抱いていた。
順風満帆に楽しく過ごしていたある日デートをしていた私達は、公園でクレープを食べていたんだ。
すると、突然彼のスマホに通知が入って彼は確認すると血相を変えてその場を後にした・・・」
「何も言わずにですか?」
「悪いけど、デートはお終いだ。家族が倒れたから帰るよ・・・そう言って彼は立ち去った」
「・・・・・・・」
「私は馬鹿正直に彼の言っている事をずっと信じていたよ。
そしてそれっきり彼とは学校で会う以外では連絡を取らなくなってしまい、
私も学校で家族の状態や状況を聞いてみたけれど、一向に回復しないらしく、
これは仕方が無いとまたデート出来る日を楽しみに待ちわびたよ。
だが・・・ある日私が雨の日に買い物をしていると、向かい側から相合傘で彼が誰とも知れぬ女子と楽しそうに歩いている所に遭遇した。
勿論、私は彼を問い詰めた。
すると・・・もう、私に飽きたと言って悪びれる素振りも見せず立ち去って行った・・・」
「梨美夜・・・さん・・・」
「確かにキミは菜々子に捨てられた・・・そう言われたんだよね?
けれど・・・それが少しでも偽りの真実である可能性があったとすれば・・・
菜々子ちゃんがキミの事をひと言たりとも「嫌い」だと言っていなかったとすれば・・・
何かそう言う流れにならざるを得ない本当の真実が隠れていたとすれば・・・
キミはそれでも今のまま流されているつもりなのかい?
だとすれば・・・私が心惹かれた男子は・・・愚かであり、私の目は狂ってしまっていたと言う事になる」
「梨美夜さん・・・俺・・・」
「私は、彼からはっきりと口に出された。もう飽きた、君の事は好きでも何でも無い・・・と・・・七条鷹矢、キミは七条菜々子から嫌いだ・・・とか飽きた・・・
とかひと言でも否定する様な言葉を言われた事はあるのかい?
もし、言われたとすればその時にキミの目の前で誰もいない所で、その様に言われたのかい?もし、電話越しやメールなら、何か裏があっても不思議では無いだろうか?
その様な疑問や不審点に気付かなかったのかい?」
「俺・・・間違っていました。梨美夜さん、お願いです。菜々子に何があったのか真実を・・・追及しては頂けませんか?
俺、何でもします!俺も自分で動きますから・・・」
「勿論だよ。私達の手で真相を究明しよう!
もしも、本当に菜々子君が助けを求めていたとすれば一刻も早く助け出さなければいけない!」
俺は、菜々子の真実を暴く為に動き出す事にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「鷹矢?今週末、私の家に来ない?」
週末間近の放課後、莉子と帰っていると自宅付近に差し掛かると同時にこの様な話を持ち掛けられた。
「えっ!?あ、あぁ、そうだな。莉子のご両親や莉子さえ良ければ・・・」
俺は照れながらそう返すと・・・
「あの・・・さ、今週末私の家、両親が不在・・・なの」
莉子も照れながらそう呟く。
「そ、そうか・・・うん、いいぞ!じゃぁ、週末な」
そうこうしているとあっと言う間に週末に差し掛かる。
「鷹矢、ここ数日ルンルン気分みたいだけど・・・何かいいコトあった?」
菜々子が夕食を準備しながら尋ねて来る。
「あ、あぁちょっとな!そうだ、明日俺、友達と泊まりだから!」
「えっ!?どうして急に!?折角明日は休みだからいっぱいすっごいコトしようと思ってたのにぃ~!!」
「いっぱいすっごいコト」って何だよ?
「いや、まぁ、お前も色々と仕事とか学業とかで疲れてんだろ?だから丁度いいタイミングじゃないのか?」
妙に話をすり替えようとしているのは分かっている。
だが、莉子の家にお泊りするとか菜々子に言ったらどうなる事やら!
「その友達って勿論男子だよね?まさか、莉子ちゃんとか言わないでしょう?」
「あ、あぁ、そうだ!男子生徒だ!ムッキムキの男子生徒だ!」
「ムッキムキ?・・・はっ!まさか鷹矢ってそっち系の趣味が!?」
「ねぇよっ!ムッキムキで想像するなっ!」
莉子、すまん・・・ムッキムキとかどっちかと言うと・・・
「ムッチムチの方だったりしてぇ~?ニヒヒ~♪」
「だっ!誰がだよっ!?」
「どうせ莉子ちゃんのトコに行くんでしょ?大丈夫だって私は邪魔しないから♪」
そうは言っても何処となく寂しそうな瞳をしている様な気が・・・
「分かっているなら最初から誰の所に行くとかいう話を振るな!」
「誰とは言ってないけど?男子生徒か女子生徒か気になっただけ♪」
梨美夜さんの話が頭の中に浮かんで来た。
こうやって俺を嘲笑うのか、本気なのか分からない今の菜々子の俺に対する行動が、
もしも梨美夜さんの言っていた通りだったとすれば、きっと今も菜々子は悲しんでいるんじゃないのかと・・・
「興奮し過ぎて莉子ちゃん襲っちゃわないでよ~?莉子ちゃんの初めては私が頂いちゃうんだから♪」
「はぁ?お前何訳の分からな事言って!!大体女子が女子の初めてなんて奪えるもんじゃないだろ!?」
「まぁ、あるモノを使えば可能っちゃ可能なんだケドね?」
ま、まさか!?それってあの大人の・・・玩具的な?
「なぁに?興味深々なの?別に教えてあげてもいいケド・・・
ちょっと鷹矢なお子様にはまだ早いかな~?」
卑しい笑みを浮かべながら菜々子は俺の顔の近くへ自分の顔を近付けて言ってみせる。
「だ、誰がお子様だよ!それくらいの弁え俺にだってあるわっ!」
「でも・・・本当にそう言う雰囲気になったのなら・・・止めておいた方がいいと思うよ」
また、突然真剣な表情に切り替わる。
「それって一体どう言う意味なんだ?頼むから教えてくれ!
お前はいつも俺が莉子とどうかなる時そう言う顔をするよな?」
俺と莉子が体の方でも結ばれようとした話があがった時に菜々子はいつも真剣・・・と言うよりは不安そうな表情を浮かべる。
「だって莉子ちゃんみたいな出来た美少女が、私の様な寝取られた美少女の手や口や足で直ぐに欲情してお漏らししちゃうマゾの劣等遺伝子を注がれちゃったら莉子ちゃん穢れちゃうでしょ?だったらこのまま寝取られクズ女の私で満足した方がいいかなって・・・」
「お前・・・そんな下衆な内容真顔で言うのは止めてくれ。
俺、本気で壊れそうだから・・・それに、地味に足でって付け加えているが俺がいつお前の足で果てた?」
「知らないと思うけど、寝ている時に足技で果てさせた事もあるの!」
「何、得意げに言ってんだよ?」
「てへ(´▽`)」
「褒めてねぇよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
週末、莉子宅
「お邪魔します」
「私以外誰もいないから気にしないで」
緊張感はあるが俺は莉子の家へ入った。
「久しぶりに入ったけど、やっぱ女の子の部屋って感じするよな」
莉子の家には幼少期の頃に入ったっきりだ。
付き合い始めてからもあまり来なかった。
今日、ようやく・・・結ばれるのだろうか?
「時間あるからいっぱい色んな事が出来るね♪さぁ、お茶とお茶菓子」
「ありがとう。頂くよ」
こうしてカップルでしかも彼女の部屋でまったり過ごす休日・・・
「うぅ~!!!」
「不味かった?大丈夫?」
「いや、何て言うか凄く美味い!そして、凄く感動している!」
「そう?なら良かった♪ねぇ?これ見て?小さい頃の写真」
莉子は俺達が出逢った頃の写真を見せてくれた。
「あぁ、あの時の・・・覚えてる覚えてる!菜々子がうちに来て少し経ってから近所に越して来たんだったよな」
そうだ。菜々子が俺の家へ来てから少しして近くに越して来た子が俺と同じ年だった。莉子とも長い付き合いになる。
「ほら、これ滑り台で滑っている所だよ」
「あぁ、上が少し高かったから菜々子が怖がって中々滑られない時のやつだな」
「それでこれが・・・」
「ブランコだな。そう言えば菜々子は怖がりだったからブランコすらこげなかったっけ。それに比べて莉子は今とは違って割と逞しかったよな♪」
「逞しいって女の子に言う言い方じゃないよね?」
「いや、褒め言葉だって。こうして菜々子を誘導したり当時から人を動かす才能がある様な気がしていたぞ!」
「もう~・・・それ既に誉め言葉じゃないって・・・」
こうして昔を回顧するのも楽しい。
やっぱ、大好きな子と一緒にふたりきりで一緒にいる事自体が幸せなんだろうな。
「ねぇ?私、きょう・・・いいから」
意味深な言葉が突然飛んで来た。
これってアレだよな?
「あ、あぁ・・・そうだな・・・」
「私達、付き合い始めてもう2年でしょう?この前はあんなコトがあったし、
きょうこそはって思ってたんだ・・・」
そう言うと莉子はゆっくりと立ち上がると着ていた私服を脱ぎ始めた。
やっぱり、間違いない!
「ほら、きょうは私・・・勝負下着なんだよ?どう?恥ずかしいけれど、これ水着とかじゃないよ?ちゃんとした私の誰にも見せていない下着だから・・・」
そうだ!今の莉子はグラビアアイドルであり、これはその時に見せる水着や衣装とかじゃなく、本物の莉子自身の下着・・・
「嬉しい♡私で興奮してくれているんだよね?」
遂に・・・この時が来た!
俺も莉子に恥をかかせる訳にはいかない。
ちゃんと莉子の想いに応えなければ!
「綺麗だ・・・莉子」
俺も上半身を露わにさせると唇を重ね合わせた。
「ねぇ?触って?」
そして莉子が俺の手を取り、自分の胸元へ当てがわせると・・・
♪プルルルル・・・プルルルル
突然電話が鳴り始めた。
「ご、ごめんね?下の電話みたいだからちょっと出て来るね?」
こうしてまたしても邪魔が入ってしまった。
俺達はいつ結ばれるのだろうか?
数分後・・・
「ごめんね。出ようとしたら切れちゃった」
「仕方ないよ。電話だもんな」
「ちょっと気持ちが落ち着いちゃったからまた・・・夜とかでも・・・」
夜にチャンスが!?
だとすれば、まだ諦めなくてもいい・・・
そうだった!きょうは泊まりだった!
次こそは邪魔も入らないだろう。
そう思い、夕飯を済ませ風呂に入り、いよいよこれから・・・
と言うムードになった俺達。
「昼間はごめんね?私も凄くもどかしくて・・・」
「お、俺もさ・・・色々と頭の中がいっぱいで・・・」
見つめ合い、お互い口付けを交わす。
そして、いよいよ・・・
「莉子は、やっぱり綺麗だよ」
「嬉しい・・・でもやっぱり恥ずかしい」
ベッドに仰向けで寝転ぶ莉子に俺はもう一度唇を重ねた。
「いいよ。私はいつでも・・・」
「あぁ、痛かったら言ってくれたらいいから」
遂に莉子と繋がれる・・・俺が莉子の大切な場所へ近付けたその時だった!
♪プルルルルル~プルルルルル~
今度は莉子のスマホが鳴った。
「嘘でしょう!?こんな時に誰?」
慌てて莉子は電話を見ると、莉子は険しい顔を浮かべて電源を落とした。
「いいのか?出なくて?」
「う、うん。知り合いからだった。こんな時間に非常識だよね?」
「確かにそうだよな?でもこんな時間に掛かって来るって事は重要な用事じゃないのか?」
「いいよ。それより・・・ね?」
「あ、あぁ・・・そうだな」
そして再び莉子は俺に覆いかぶさる。
♪ピンポーン
「・・・・・・・・・・・・・」
「何だ!?こんな時間に来客か?」
「ちょっと確認してみるね。待っててくれるかな?」
少しイライラ感を抱きつつ莉子は下へ降りて行った。
そして、戻って来て俺に服を着て座って待っている様に告げられる。
「ってコトでお邪魔してごめんね~?」
来客は菜々子だった!?
「おまっ!?何しに来た!?」
「ちょっと、気になっちゃって・・・」
「だから、俺達は付き合っていてどうなろうがお前には関係ないって言ってんだろ!?」
「莉子ちゃんが」
「へ?・・・莉子が?」
「莉子ちゃんが襲われちゃったら大変でしょう!?
だから心配で心配でここに来ちゃったってコト!」
はぁ~・・・本当にこいつの考えている事が読めない。
どうしてこういつもいつもいい所で邪魔する様に出て来るんだよ!
”莉子ちゃんだけはダメ”
こいつ、まさか莉子の事を!?
何か、時折莉子と俺が繋がりそうになる時に莉子だけはダメだって言う時があるが・・・
「莉子ちゃん、きょうは勝負をしようと思って・・・」
「菜々子ちゃん、もういい加減にして!私達はきょうカップルとして泊まっているの!」
「だったら私を追い返せば良かったでしょう?どうしてここへ通してくれたの?」
「それは・・・流石に鷹矢の家族だし邪険に扱う訳にもいかなかったから・・・それで・・・」
「それだけ?後まだ私に言うべき事があるでしょう?」
「そ、それは・・・その・・・感謝しているよ・・・グラビアのお仕事に、事務所にスカウトしてくれて・・・」
「そうだよね?だったら私との勝負、受けてくれるよね?」
「え、えぇ・・・分かったわ・・・」
二人の間では上下関係が出来ているのだろうか?
だが、菜々子のこの食いつきぶりは半端無いな・・・
「一体何の勝負なんだよ?俺達はいい感じだったんだよ!そこにお前が邪魔しに入って来た。それでいて勝負ってどんだけ身勝手なんだよ!?」
梨美夜さんの言っている事が分からなくなって来た。
だが、梨美夜さんがあんなに俺の事を考えてくれていたのは自分も俺と同じ様な経緯があったからだろう。
ここまで菜々子の事を考えてくれていたのにはただ自分の過去の一件があったからだけだとは思えない。
あの人はどんな状況下でも冷静な判断が出来て物事を様々な角度から見る事が出来る人だ。
そんな梨美夜さんが言っていた事だからきっと何かあるのだろうとは思うが、菜々子のこの様な行動は理解しようとしても出来ない・・・
「勝負は、新作のボイスドラマの様に左右の耳から色々と囁くから鷹矢がどちらで堕ちるかの勝負!」
「菜々子・・・お前一体何を考えて・・・」
「美亜よ。私は一之瀬美亜!そして、RIKOちゃん・・・今はそう言う勝負だから」
「はぁ~・・・兎に角これで勝負が決まればお前は帰ってくれるんだろうな?」
「うん!帰るわよ。どっちが鷹矢を堕とせるか勝負よ!RIKOちゃん!」
「分かったわ。じゃぁ、鷹矢は悪いけれど仰向けで私達に挟まれる形で寝てね?」
何だかとんでもない展開になった様な気がするぞ?
「ふぅ~♡ほら、リラックスリラックス~鷹矢はいつも私が色々とシテあげてるからもう私無しじゃ生きていけないよね~?」
右耳からは菜々子・・・基、美亜が・・・
「ふぅ~♡鷹矢は渡さないわよ?この2年、ううん、ずっと昔から私は鷹矢の事が大好きだったから絶対に、一度でも捨てた菜々子ちゃんになんか渡さないんだから」
俺・・・もしかして本当の意味での板挟み状態?
「ココもおっきしちゃたね~?いつも通り私の声で感じてくれてるのかな?」
「違うよね?さっきまでいい雰囲気だったから体が学習しちゃったんだよね?」
「うっ・・・」
「ほらほら~♡耳舐めてあげる♡ペロッ」
「私も舐めてあげるね♡ペロッ」
耳舐めとかあり得んだろ!?なんちゅ~展開だよ!
「ほら、思い出して?いつも寝ている時に気持ち良くなっているのは誰のおかげ?」
「思い出して?さっきまでしていた事の続きがどう言う感じになっちゃうんだろうね?」
いやいやいやいやいや!思い出したくても思い出しちゃいけない一線だろう・・・
今俺の両側には美少女が2人いる!
そんな浮気的な状況でどっちの言い分を思い出したとしても完全アウトだろう・・・
「さぁ、欲望の赴くままに私たちを堪能して?」
「この身体はもう鷹矢だけのモノだよ?ほら、さっきの続き・・・シヨ?」
ダメだ・・・完全に理性の限界・・・
♪ガチャッ
「あなた?深夜だから起こしちゃ悪いから静かにね?」
「あぁ、分かってるさ、それにしても想定以上に早く終わったから連絡入れておけば良かったな」
「終電に間に合うか間に合わないかの間際だったし仕方が無いわよ」
「嘘っ!?お父さんとお母さん帰って来ちゃった!ゴメンね。二人とも直ぐに着替えて!」
まさかの深夜にありきたりな展開で俺達のいい所のお話は幕を閉じた。
「ってコトで、残念だったね~♪折角二人に堕とされる最高の時間だったのにね?」
「お前が来なければもっと最高の時間を迎えられた可能性が高かったがな!」
莉子のご両親に見付からない様に俺と菜々子はそっと自宅へと帰って行く・・・
あぁ、一体いつになれば俺と莉子は結ばれるんだ?
その後、例の二人が出演したASMRボイスドラマは瞬く間に売り上げを増やし大ヒット作に繋がったらしい・・・
END
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