♡N→T←R♠・・・4 いつもの日常に潜む不自然な日常

「お前達ってもう付き合い始めて2年だろ?だったらもうヤッたのか?」


「鉄平、君はもう少し品格を覚えるべきだ」


昼食時、唐突にその品格の無い質問を投げ掛けて来たのはクラスメイトの宇治 鉄平(うじ てっぺい)だ。


そして、そんな鉄平にツッコミを入れたのは京極 雪人(きょうごく ゆきと)


「雪人の言う通りだ。お前はくだらない事を口にし過ぎなんだよ!

それだからモテないんだぞ?もっとこうだな・・・」


俺はあれやこれやとジェスチャーを交え鉄平に説教をしてみせた。


「おぉっと、それはそうとだな・・・この雑誌、買ったか?」


教室の後ろの方で3つ繋げ、談義しながら弁当を食べていた机の上に鉄平が差し出した1冊の雑誌・・・


「これって、二人が一緒に出ているグラビア雑誌!?」


(そう言えば、この間一緒に撮影に行っていた時のやつか・・・)


「お前~・・・彼女がグラドルになった訳だし、もっと堂々としろよ~!」


鉄平は立ち上がり、俺の方をバシバシと叩きながら嬉しそうに言った。


「う、五月蠅いっ!俺はお前とは違って無神経じゃないんだよ!」


「だが、ずっと思ってた事がある!」


笑いながら俺の方を叩いていた鉄平が突然真剣な表情になり俺の顔の間近で言った。


「何故、あのMiaこと一之瀬美亜ちゃんともお近づきなんだよ!?」


そう言えれても、一之瀬美亜が俺の義理の妹で、元カノで莉子はその元カノに捨てられた時に慰めてくれて付き合っているから・・・


とは言えない。

確かに、同じクラスから2人もグラビアアイドルが誕生してしまうなんて信じ難い真実でもある。


「た、偶々だ!偶然隣の席にあいつ・・・一之瀬が来たってだけだろ?」


そうだ、外ではあいつは七条菜々子では無く、一之瀬美亜と言うグラビアアイドルだ。

莉子も芸能界へ入った訳だからもう俺と今までの様にとは行かないだろう。


「鷹矢?グラビアアイドルと言うものはアイドルと同じく、付き合ったりするとスキャンダルにはならないのか?」


雪人が俺にまともな質問を投げ掛けて来る。


「そうだな。本来ならば大問題にもなり兼ねないはずだ。

だが、何故か事務所はそこまで強く言ってはいないらしい・・・」


「珍しいな。そこまで緩いと色々と揉め事にも繋がったりしそうな気がするんだけど・・・」


確かに言う通りだ。だが、莉子にその事について触れてみたが、学校内くらいならいいんじゃないかと言われたらしい・・・


「あぁ~あ、非モテな俺のトコにもお前みてぇな超絶美少女が「あっ、私鉄平君の隣の席がいいで~す♡」って言って積極的に来てくれる子いねぇかな~?」


「妄想は家でやれ」


「鷹矢ぁぁぁ~っ!?・・・お前ちょっと最近冷てぇんじゃねぇの?」


このやり取りももう数年・・・いい加減建前など無用の長物だろう。


「鉄平?今の君では先ず誰も堕ちてはくれない。

もう少し君は男を磨くべきだろう」


隣で目を閉じながら黙々と弁当を食べる雪人。

流石、モテモテ男子は余裕だなと言わんばかりに鉄平が雪人の方を睨み付ける。


「あぁ~あ!俺にも早く春が来ねぇかなぁぁぁ~!」


自棄を起こすと鉄平は自分の弁当を一気に胃の中へと流し込んだ。


「まぁ、このグラビアを見ても分かる通り、俺はMiaちゃん推しだ!お前らは・・・

鷹矢は莉子(RIKO)ちゃんだよな?ここでMiaちゃんだって言ったら莉子ちゃんにこの事バラすからな!」


「おっ、俺は・・・」


一瞬口がごもった瞬間、雪人が止めに入ってくれた。


「そこまでだ鉄平。鷹矢も最近色々とあって疲れているんだ。

これ以上はご法度だ・・・」


「チッ、分かったよ。まぁ、雑誌は朝コンビニで買って来たから鷹矢も帰りにでもチェックすればいいさ」


鉄平は、悪い奴じゃないが女の子ネタとなると非モテのせいなのか、エスカレートしやすい性格なのだ。


「すまん、雪人・・・」


俺はこっそりと雪人に詫びを入れる。


「気にする事はないさ。俺は俺で色々とあって君の気持ちは何故かよく分かる気がする」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後、俺は莉子と一緒に帰るつもりで一緒に廊下を歩いていた。


「あぁっ!生徒会長よ。ほらあそこ」


「わぁぁ~、ホントだ~、珍しいわね。王子様がこんな所に一体どんな御用件かしら?」


周囲にいた女子生徒達は一気にキャッキャと甲高い声で溢れかえった。


「生徒会長がここに来るなんて珍しいよね?」


俺の方を見てそっと呟く莉子。


「そうだな。まぁ、俺達には関係の無い事だろう」


そう思い俺は普通に廊下から1階の玄関へ向かおうとしていたのだが・・・


「おぉっと、良かった。まだ帰っていなかったみたいだね」


目が合うと立ち止まり俺達の方へ声を掛けて来た。


「あ、どうもっす・・・」


頭を下げる莉子と、そっけない挨拶を告げる俺に会長は言った。


「帰宅前にすまないね。少し、そちらの七条鷹矢君に生徒会室に来てもらいたいのだけれど・・・」


「私は先に帰るね」


莉子は気を遣い俺にその様に囁くと会長に一礼済ませるとそのまま帰って行った。


「校内1位を誇る男女共に大人気生徒会長様が校内底辺生徒の俺なんかに一体どの様なご用件でしょうか?」


勿論、これは本心で言っている訳ではない。

学校一大人気である生徒会長がわざわざ俺の所に来て話掛けて来るなんざ

ろくでもない事に決まっている。


「はぁ~・・・どうもキミは私に対して敵対心を抱いているけれど、

私とて、キミに嫌われたくてこの様に接して来たつもりでは無いんだ」


生徒会室へ入り、椅子へ座ると会長は俺にお茶を淹れて出して来た。


「何十回、何百回と言って来ましたが、俺は入りませんから」


どうせ、いつもの「生徒会へ入ってはくれないだろうか?」

言わば、何度断りを入れてもしつこく押し売りをして来る悪徳セールスとも取れる生徒会への勧誘である。


今日も今日とて俺は、莉子と帰るはずだったのだが邪魔をして来たと言う訳だ・・・


「あぁ、それは分かっている。もう、私も3年だ。後継者をそろそろ輩出させなければいけない。だが、きょうはそうじゃない」


語尾が意外だった。

「きょうはそうじゃない」


会長はそう言ったのだ。

だったら何故俺をここへ呼んだのだろうか?

生徒会メンバーはきょうはここにはいない。

いるのは、会長と俺だけだ。


「何か、深い話ですか?」


俺は察した様に会長に告げた。


「あぁ、少し気になっている事があってだね・・・」


京極 梨美夜(きょうごく りみや)


昼間、昼食を共にした京極 雪人の姉である。

姉弟揃って美形で凛々しい・・・

そして、頭の回転の速さ、運動能力も学力も全てに於いて無敵である。

どちらも生徒達から大人気の存在だ。


「帰らせて頂きます」


俺は立ち上がり生徒会室を後にしようとした。


「さっき一緒にいた白川莉子についてだが、それも聞きたくは無いと?」


扉の前で俺はそっと振り返り再び椅子へ座る。


「キミは正直で助かるよ」


苦笑しながら会長は言った。


「莉子がどうかしたんですか?

グラビアアイドルの件なら学校側も承諾していますし、一之瀬美亜も転入して来ているはずです」


「ははは♪本当にキミは素直だね。そんなのだと色々と大変になってしまうよ」


俺はこの京極 梨美夜と言う女性が苦手だ。


「一之瀬美亜・・・つまりキミの妹さんは七条菜々子さんだったかい?」


「流石は生徒会長様ですね。それで、その一之瀬美亜である俺の義妹の七条菜々子がどうかしたのですか?」


「話は京極雪人君から少し聞いた」


よくも自分の弟を赤の他人の様に言えるな?


「どうやら、色々と困っているのだとか・・・?」


この物言い、回りくどい言い方が俺は嫌いだ!


「何も無いなら俺は帰ります」


再び立ち上がると今度は真剣に俺を止めに入る。

俺が本気でここから立ち去る事を見越してだ。


「すまない。少し言い方が悪かったみたいだ。

だが、私が今から話をする事は確証がまだ持てない。


それに、直接関与のあるキミが拒めば私は何も出来ない。

だから、ここから先は生徒会長である京極梨美夜としてではなく、


キミに助けてもらったひとりの女の子である京極梨美夜として、

キミに協力出来る事は全身全霊を以て尽力したいと考えている」


どうやら、本気で言っているみたいだ。

会長は冗談も交えながら話を迅速且つスムーズに持って行く事が得意である。


そんな会長がちょっとしたブレを見せる時は大抵、深刻な事態を考えている事と捉えられる。


周囲に信頼され、愛されている彼女だからこそ、いざという時の対応も秀逸されている。


だが、彼女もひとりの普通の女子高生である。

これまでに無い経験からどの様に対応して行くのかを常に彼女は考え、進めて来た。


それでも、たじろいでしまう事もある。


「話を・・・聞きます」


いつもにも無い程の不安な面持ちで会長は俺を見る。


「これはあくまで私個人の憶測だ・・・」


その様に語り始めた会長。

菜々子が一之瀬美亜と言う芸名でグラビアアイドルをやっていたが、

俺達の学校へ転入して来た経緯や、俺の彼女である莉子の事など、

間に俺が抱いていた違和感の正体の様な事も・・・


「と言う事なんだ。ここから先は、この学校の生徒会長を務めている京極梨美夜では無く、キミに助けてもらった経緯があるひとりの少女である京極梨美夜としての提案となるのだが・・・ここでキミが拒めば私は今後一切この件については介入しない。けれど、もしもキミが私に頼ってくれるのであれば・・・」


提案はこの上無い程ありがたい。

だが、俺は迷っている。

ここで、会長の提案に乗ってしまえば・・・


片方の真実を受け入れていない事に繋がる。

だが、もう片方の真実を解明出来る事にも繋がる。


一番最低な展開は・・・


「どちらも真実だった場合・・・キミは何れの真実に対しても裏切りを見せる事になる・・・そう思っているのだろう?」


やっぱり、この人はそうだ。


「少し、考えさせて下さい。

この案件については非常にありがたいと思っています。

ですが、反面、これは俺自身の問題でもあるんです。


それを、無関係である貴女に迷惑を掛けてしまう訳にはいきません。

確かに、俺は中学時代に貴女を助けたかもしれません。


ですが、それはあの時にも言いましたが、貴女が気に病む必要は無いと・・・

あの一件の出来事は全て相手が悪かったのだと・・・

俺は、その真実を暴いただけですから。

だから、会長は俺に何も気負いする必要なんか無いんです」


俺は笑顔で会長に告げた。


「鷹矢・・・君。キミの瞳は・・・やっぱり美し過ぎる。私は、キミに様々な事を教えてもらえた。だからこそこんにちの私がここにいる。

キミには感謝してもし切れないよ」


美しい・・・か。

それは貴女の方ですよと俺は思ったが心に留めておいた。


「それで、もう一つキミには話があるのだが・・・」


「生徒会には入りません!これにて失礼します」


俺は黙って扉の方を向くとそのまま黙って生徒会室を後にした。


「七条 鷹矢・・・キミは私が最も憧れている人間性をいっぱい持っている。

必ずキミをこの席に・・・そして、キミが幸せになれる手助けをさせて欲しいんだ・・・

だが、これが私の取り越し苦労であってくれれば良いのだけれど・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お帰り~♪どうしたの?元気無いみたいだけど?」


「当たり前みたいに出迎えないでくれ!俺は疲れてるんだよ!」


釈然としない。

だが、菜々子のこの豹変ぶりはどうも気になる。


「あっ、その雑誌私達が載ってる最新号じゃん♪やっぱ鷹矢って・・・」


「莉子が写ってるから買ったんだよ!彼女が雑誌に載りゃあ誰でも買うわな?」


「ブ~ブ~!そこは可愛い妹がエッチな姿で写っている雑誌を買うのは当たり前だろっ!って言うトコじゃないの~?」


「ブ~ブ~!いくら可愛くても一方的に振って捨てた女の雑誌なんか買う気もしないが、彼女が写っているから泣く泣く買ったんだ!」


菜々子は変わってしまってから帰って来るまでずっとこんな感じなのか?

一連の事は菜都・・・菜都美には軽く伝えていたが、親友である雪人にもある程度話をしていた。


「可愛いから犯したいけど今カノの存在があるから仕方なく・・・か♡

嬉しい事を言ってくれるんだね。いいよ私はいつでも♡」


目を閉じると顔をしっかりと俺の方へと寄せて来る菜々子・・・


「帰って来て早々これはうざい!早く部屋へ戻ってくれ!」


「ねぇ?今日のオカズはどっち?私、Gcupなんだよね~♪莉子ちゃん、美乳だけどFcupだからそこんトコヨロ~♪」


「オカズって何だ!?そんなのに使う訳ねぇよっ!!」


持っていた雑誌には、際どい赤と黒のマイクロビキニ姿の2人が楽しそうに常夏の島で水を掛け合ったり、抱きしめ合ったりと色々と刺激の強い作りになっていた。


「莉子ちゃんとはもう・・・寝たの?」


「五月蠅い部屋へ戻れ!そして二度と出て来んな」


「妹に対して言う言葉じゃないよ?お義兄ちゃん♡」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日、登校した俺は机でひとり溜息を零していた。


「はぁ~・・・」


「どうしたどうした?可愛い彼女に心配でもして欲しいって顔してるぞ?」


「溜息を吐くと幸せが逃げると言うからね。何かあったら相談に乗るぞ?」


「あぁ、二人共・・・雪人はサンキューな。いつも感謝しているよ」


「俺はどうなんだよ!?俺にも感謝しやがれぇぇぇ~!」


鉄平は俺の首に腕を回しグリグリと頭を拳で刺激して来る。


「痛ぇ~!鉄平は加減が無いからな。ったくお前にも感謝はしているよ。

俺よりバカな奴もいるんだなって分からせてくれるもんな?」


「んだとぉぉぉ~!俺がテメェよりもバカだって言うのかよ!?」


「残念だが鉄平。鷹矢は進学校でも余裕で通過出来る程の実力者だ。

君は諦めた方がいい」


「そうだった!?ここに通ってるからてっきり俺と同じレベルだと思ってた・・・

ってそれを言ったら京極姉弟もそうじゃないのか?」


「まぁ、俺は堅苦しいのが嫌だったからここへ来たんだけどね」


いつもの何気ないやり取りで俺も少し気持ちが楽になれた気がする。


「二人共、いつも・・・ありがとな・・・」


中学からの付き合いである二人・・・

俺があんな状態になった時にも態度も変えずに俺を励ましてくれた時もあった。


本当に親友(こいつ)らには感謝している。


「莉子?何か困っている事とか無いか?グラビアの撮影とかで学校離れている事もあるだろ?」


雪人と鉄平との話が落ち着くと、俺は隣の席に座っている莉子に話掛けてみた。


「うん、ありがとう。今の所大丈夫だよ。それより・・・」


突然耳打ちをして来た莉子・・・


「雑誌・・・今回も買ってくれたんだよね?どっちで・・・出してくれた?」


「?」


何を言っているのか理解出来なかった。


「ふ~っ♡どっちでヌイてくれた?」


何だかおかしい?

俺の耳、どうなってしまったんだ?


「ご、ごめん。よく聞き取れなかったからもう一度言ってくれないかな?」


再び耳を莉子へ向けると・・・


「Miaちゃんと私、どっちで射〇したのかなって思って・・・」


「っっ!?・・・り、莉子っ!?お前・・・何て事言って!?」


声が抑えきれず漏れてしまった。


「な~んてね♪・・・ちょっと今回は刺激的過ぎちゃったかな?

気合い入っていたみたいで、私達も頑張ってみたんだよ♪」


莉子がらしからぬ言動を!?


「さてはお前、菜々子だろ?」


これはきっと変装した菜々子だと・・・

それか、これは悪い夢なんだと・・・

だが・・・


「残念でした~。貴方が見ている私は正真正銘グラドルのRIKOですよ~♪」


誰も見ていない隙を見て莉子は手で輪を作り卑猥な動きを見せて来た。


「ちょっ!?お前までどうして!?」


俺は真剣に焦った。


「ごめんね。少し意地悪が過ぎたかも・・・でも雑誌は買ってくれたんだよね?」


「あぁ、買ったよ。ちゃんと見た」


「どうだった?」


「その・・・言っていた通りで刺激的ではあったな・・・」


学校で何故聞く!?

それなら昨日の夜にでも電話してくれればいいじゃないか!?


「えぇっと私の方がいいって言ってくれたよ♪そうだよね?七条君?」


「言ってない言ってない!絶対に莉子の方がいいって!」


どうしていつもいつも俺と莉子の間に無理矢理入って来るんだよ!こいつは・・・


「そうなの?鷹矢?」


「あぁ、俺は嘘は吐かないからな!」


「む~っ!!ねぇ?鉄平君はどっちの方が良かったかな?勿論私だよね~?」


「へ!?・・・あ、あぁ、そうだな俺はMiaちゃん推しだからね♪勿論Miaちゃんの方だよ!」


「くっ!・・・」


莉子が鉄平を睨み付ける。


「鉄平?そう言う時は、Miaさんのスタイルの良くて際どい水着、とても素敵だけれど、RIKOさんの整ったスタイルと妖しい感じの表情も素敵だよね・・・そう言うどちらも褒めるのが鉄則だ」


流石は雪人だ・・・

俺でも出て来ない考えである。


「何をしているのかな?皆で揃って楽しそうだけど?」


菜都、いや、菜都美も参戦して来てしまった。

一応、菜都美が女の子である事は発覚したのだが、

依然として学校では男子生徒として溯上を明るみにはしていない。


「おぉっ!?イケメン来たか。これ見てみろよ?美亜ちゃんと莉子ちゃんが載ってるグラビア雑誌だ。どうだ~?お前はどっちがいい?」


「う~ん。かなり刺激的なものにチャレンジしたみたいだね・・・

僕はどっちも素敵だなって思うよ。

だって、こんなに綺麗な胸の形をしていて、それを活かしている水着でしょう。

美亜ちゃんもスタイルがいいからこのアングルは凄くいいと思う!


莉子さんだって引けを取らないポーズと全身バランス取れてるから色々な角度からの写真もはっきりと特徴が出ていて素敵だよね」


うん、君は女の子だから褒め方も実に素晴らしいよ。


「っくぅぅぅぅぅ~!やっぱイケメンが褒めると女の子メロメロになりそうな事言うよな~!この色男っ!」


腕を首に回し、自分の仲間だとアピールしようとする鉄平。

流石に密着し過ぎじゃないか?止めた方がいいだろうか?


そう思っていると、ウィンクと指を鼻と口のライン上に当てがった。

どうやら、止めなくてもいいらしい。


「鉄平。ジャンケンするぞ?」


「何だよ鷹矢~?よしっ、やってやるよ!」


「ジャ~ンケ~ン・・・ホイッ!」


「あっ・・・負けた」


「はい、じゃぁ鉄平の奢りでここにいるメンバー全員に1本ずつジュースを買って来てくれ。お前は記憶力だけはピカイチだから皆の欲しい飲み物が分かるだろ?」


俺は手持ちの所持金をメンバー分渡して鉄平にジュースを買いに行かせた。


「何か癪だけど、まぁいいか。お前が出してくれるんんだしじゃぁ、行って来るわ」


トラブルメーカーが去ってくれた。


「あ、あの・・・ありがとう鷹矢。何かちょっと今日の宇治君興奮し過ぎているみたいだったから・・・」


やっぱり嫌だったのだな・・・菜都美よ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

深夜


「zzz・・・zzz」


俺は眠っていた。

夢を見ている様な気がする。

だが夢の中で、これは夢であると明確に分かる人はどれくらいいるだろうか?


俺は、この夢を夢とは思わずに遠くの方から聴こえて来る声に耳を傾けていた。

辺りはお花畑と言わんばかりに大量の花が生えていた。

いい香りがして来て何だか落ち着く・・・


”ある男の子は、ずっと好きだった女の子に告白をしました”


うむ、よくある話だな。


”女の子は少し恥ずかしそうになって、私も好きだったからお付き合いしましょうと男の子の告白を受け入れました”


うんうん、良い展開じゃないか!こうして一組のカップルが誕生した訳だな。


”ある日、そのカップルは中学校を卒業して、同じ学校へは進学しませんでした”


人生の大きな選択の一つだな。確かに同じ学校へ進学するカップルだっている。

だが、必ずしもそうなるとは限らない。でも強い絆は簡単には壊れたりしない。


”女の子は一人の男の子に奪われてしまいました”


え!?嘘だろ!?どう言う展開の・・・ってこの話何処かで・・・


”男の子はある日、元カノが通う学校近くまで様子を見に来ました”


いやいやいや、待てよ?これって明らかに俺の事だろっ!?

何で・・・これ、もしかして夢か?


”女の子はある男子生徒にお尻を執拗以上に揉み解されてしまい、その男の子に今夜一緒に過ごす事を確かめました”


待て!?それって俺が見た光景そのものじゃないか!?


すると、俺の見えていた光景はあの日の光景に早変わりした・・・


”その女の子と男の子はその後、繁華街近くにあるラブホテルへと姿をくらませました”


何だこの話!?俺が見ていなかった所まで話が進んでいる?


“ある一室に入ると、早速女の子はシャワーを浴びて、次に男の子もシャワーを浴びると、ベッドの上で待っていた女の子は上向きに寝転び、男の子を誘い始めました”


止めろ!?止めてくれ!?それ以上俺に見せるなっ!?

夢なら早く・・・早く覚めてくれっ!


”女の子は手慣れた様に男の子を誘惑しました。

手を股の方へ這わせながら、男の子のそれを受け入れようと・・・”


聞きたく無い!止めてくれ!!それ以上はダメだ・・・


”男の子のそれは立派に実ると遂に女の子の大切な部分へとゆっくりと・・・

入って行ったのです・・・”


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!!!!!!!!!!!」


「あっ、目が覚めた?おはよう♪」


ベッドから慌てて起き上がるとそこには優しい笑顔・・・じゃなく菜々子の顔があった。


「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~!!!」


「私の膝枕、どうだった?」


「私の膝枕、どうだった?・・・じゃねぇぇぇぇぇ~っ!!!お前、俺に何吹き込んでやがった!?」


菜々子は不思議そうな表情を浮かべていた。


「何も言ってないよ?寝ているのに話したら起きちゃうでしょう?

突然血相変えて飛び上がったから私も何があったんだろうって焦ったよ!」


何だ?本当にただの夢だったのか・・・


「なぁ、菜々子?本当の事を教えてくれ!

お前は・・・今もその・・・しょっ・・・しょ・・・」


「しょ?・・・なぁに?」


「しょ・・・処女・・・なのか?」


すると菜々子は驚いた表情でこう答えた。


「鷹矢がヴァージンだと思っていれば私はヴァージンだよ」


意味深な答え方をされた。


「だからな、本当の事を教えてくれと言っている!」


俺は菜々子がバカにしているのかと思い強い苛立ちを覚え言い返したのだが・・・


「どうだろう?・・・私も、実はよく分からないの。

自分がヴァージンなのかそうで無いのか・・・でも少なからず、鷹矢が抱いている私は、あの日に消えてしまった・・・」


外はまだ月の光が灯っていた。

ベッドから立ち上がりカーテンを開けて椅子へ座った菜々子はその月をじっと見つめながらゆっくりとした呼吸で言葉を紡いだ。


「私がここへ帰って来たのは・・・命令・・・あの人からの命令・・・

私は、あの人にはもう逆らう事が出来ない。


最初は凄く抵抗した。けれど、あの人は諦める事はなく、毎日私を・・・

次第に私の感覚も麻痺して来てしまった。


毎日、会えない恋人の顔を想像していた。

それだけが私の理性を保たせてくれたから・・・


でも、その顔も次第に消えてしまいそうになって来た頃にはもう、私は堕ちる所まで堕ちてしまったのだろうと自覚すら出来た」


俺は、見えないはずの菜々子の表情が容易に想像出来た。


「菜々子?お前、一体何があったんだ?俺で良ければ言ってくれないか?

いや、俺だからこそ言って欲しい!」


会長が言っていた話・・・

俺が感じていた違和感・・・

菜々子の豹変した性格・・・


どれを取っても不自然極まりない話である。


「・・・・・ん?・・・そっか・・・そうだよね・・・やっぱり、私には・・・」


ひとりで何かを呟いた後、菜々子は俺のベッドに入って来た。


「さぁて、明日も学校だから早く寝なきゃだよ?ほらほら、大好きだった元カノのおっぱいでちゅよ~?いっぱい吸って早くおっきしようね~?」


俺の取り越し苦労なのか?

菜々子は突然、いつもの変な菜々子に戻ってしまった。


「いいから早く自分の部屋へ戻れっ!」


「まぁまぁ、そんな水臭い事言わないで家族なんだからさぁ~♪」


「まぁまぁ、臭くは無いが、むしろいい匂い過ぎて俺も理性が保てないから早くここから出て行ってくれ?」


「いい匂い?・・・そっか・・・いい匂いなんだ・・・仕方ないなぁ~、そんなに褒められちゃったら言う事聞くしかないよねぇ~・・・分かったわ出て行く♪」


最近知ったのだが菜々子の奴、褒めると諦める傾向にある様な気が・・・

これは使えるぞ!


・・・と思い次の日の朝・・・


「ん~・・・何だか力抜けるくらい気持ちいい気が・・・って何してんだ!またお前、俺のを・・・!?」


「ん~♡とっても濃厚でこれはきっと3日モノくらいかしら~♪デリシャ~ス♡」


「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~!!!!!!」


「おはようございます♪ご主人様♡今日も朝の一番搾りご馳走様でした♡」


メイド服姿の菜々子がそこにはいた・・・


「おまっ!?まさか!?」


「うん、菜都美ちゃんから色々と教えてもらっちゃった♪鷹矢を堕とすにはメイドだって♪」


あいつ・・・自分の正体こいつにまで晒したのかよっ!?


「菜都美ちゃんって、やっぱお前、あいつに正体も教えてもらったって事なのか?」


「うん。そうだよ。色々と気が合っちゃってね~♪後、何か菜々子ちゃんなら信用出来るとか言って教えてくれたんだけどね・・・」


あいつが気を許すなんて俺以外いないと思っていたのだが・・・


「莉子は菜都美が女の子だって事は?」


「う~ん・・・多分知らないと思うよ?知っているのは鷹矢様と私だけだって言って教えてくれたから」


「鷹矢様って・・・はぁぁぁ~」


溜息を漏らして俺は着替えの仕度をした。


「とりあえず、事情は分かった。着替えたいから出て行ってくれ」


「それはメイドの役割です!ご主人様♡」


「とか言いながら、お前また俺にちょっかい出すつもりだろ?

いいから早く出て行ってくれ!」


「チェ・・・仕方ないな~・・・じゃぁ、帰って来たらお風呂一緒に入ろうよ!」


「入る訳ねぇだろ!いいからお前はさっさと制服着て準備しろっ!」


夕べの菜々子、やっぱり何かが変だ。

何か、俺にも言えない事情ってやつがあるのだろうか?


現状に色々な疑問を抱きながらいつもの様に学校へと通学した。






END

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